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物価に負けない運用、オルタナティブとは?(3ページ目)

金や原油などの資源価格が高騰し、株式投資に代わって注目を集めているオルタナティブ投資。しかし一方で、「ヘッジファンドのようだ」と怪しまれる面も。オルタナティブとは、いったい何なのでしょうか?

執筆者:石原 敬子

オルタナティブ投資の本当のメリット

線路
長期投資でこそ生かされる、オルタナティブ投資
最近のオルタナティブ投資への関心は、単に資源価格の上昇にうまく乗って儲けよう、というだけではありません。オルタナティブ投資の持ち味とは、じつは積極的な利益の追求ではなく、むしろ分散投資によるリスクの軽減なのです。オルタナティブ投資の本当のメリットは、「リスクを極力抑える」「分散投資ができる」という点なのです。その効果を狙って、オルタナティブ投資を組み入れた投資信託が販売されるようになってきました。

常に利益を出す、絶対リターンを求める、などというと、短期売買によるトレーディングを想像するかもしれません。しかし、前述の通り、オルタナティブの投資対象は広範囲にわたります。いくつもの投資対象を組み合わせることによって、分散投資の効果が働きます。

例えば、株式市場が低迷している時期に金やプラチナなどの価格が値上がりすることもありますし、その期間中に全く上がりも下がりもしなかった投資対象もあるでしょう。これらを集めて運用することで、1点集中投資では得られない、平均化することによる相乗効果が得られます。何かが下落しても、他の何かのおかげでトータルの資産価値が減少せずにすんだ、というものが、分散投資の効果です。

分散投資では、あるひとつの投資対象の時価が急騰する場面で大儲けができないではないか、という意見があるかもしれません。しかし、どんな投資でも常に利益を出し続けることは不可能です。常に利益を出している状態を保つためには、1点集中型の投資では難しく、徹底的な分散投資をする必要があるのです。

もし、短期売買での儲けを期待するのなら、オルタナティブ投資は不向きと言えるでしょう。資源価格の高騰は、人々の関心をオルタナティブ投資へ向けた大きなきっかけだったかもしれません。しかし、この急騰する資源に短期で投資し、利ざやを稼いですぐに手を引くのは、株式や債券などの伝統的な投資以上に難しいものです。

オルタナティブに向いているのは、こんな投資家

オルタナティブ投資は、規制緩和によって小口化されたり、投資信託などの投資対象になるなど、個人投資家でも投資しやすくなりました。オルタナティブ投資を通して、個人投資家でもヘッジファンドやプライベートエクイティファンドに投資をすることができるようになってきたのです。

例えば、最近では、ヘッジファンドとプライベートエクイティファンドを組み合わせたファンド・オブ・ファンズやデリバティブを運用対象にしたヘッジファンド複製商品、ヘッジファンドインデックスに連動する投資信託などが登場しています。

オルタナティブ投資を組み入れた投資信託の注意点は、長期的に運用する資金で購入するという点です。換金のタイミングも、一般的な投資信託に比べて制限されているものが多いのが特徴です。さまざまな手法を用いて運用をするためには、ある程度運用資産の流動性を抑えておく必要があるからです。

例えばベンチャーキャピタルなどが運用対象に含まれていると、投資をしてから成長して資金を回収するまでには年月がかかるのが通常です。バラエティに富んだ投資対象に分散しているために、投資家に短期で換金されてしまうと、ファンドマネージャーが意図したような運用が出来ない可能性もあるのです。

オルタナティブファンドは、「今、急に値上がりしている資源価格の恩恵を受けたい」というような発想ではなく、「この先長い人生とともに、自分の資産がインフレに負けないような運用をしたい」というようなタイプの投資家、またはそういった性格の資金に向いているといえます。

ヘッジファンドやデリバティブを投資対象にしている、となると投機的な印象を受けるかもしれませんが、そもそもオルタナティブは分散投資を目的にしていることと、長期投資のために用いる運用だということを理解しておきましょう。資金の性格と運用商品との相性をよく考えて運用することが、資産運用の一番のポイントです。

【関連サイト】

「村上ファンドとフツーのファンドは何が違う」

「オルターナテイブで考える ヘッジファンドって何?」(All About“資産運用のノウハウ”ガイドサイト)
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