小選挙区比例代表「並立制」とは

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衆議院


参議院と同じく、衆議院の総選挙でも小選挙区制と比例代表制の2つの制度が同時に採用されています。ちなみに、小選挙区制で当選するのは300名。比例代表制で当選するのは180名となっています。しかし、参議院通常選挙と違い、衆議院総選挙では「小選挙区制と比例代表制がシンクロしている」という点に注意したいところです。これが「並立制」という言葉がつくゆえんです。

つまり、1つは「小選挙区制と比例代表制、どちらにも立候補できる(重複立候補)であり、もう1つは、「小選挙区の結果が比例代表での当選者決定にも影響を与える(惜敗率ルール)」というものです。そのため、比例代表での当選者が最後まで決まるのはかなり遅くなります。接戦になればなるほど。あきらめて寝て、いきなり当選だとたたき起こされた、という話も聞いたことがあります。

では、その内容を詳しく説明していきましょう。……と、その前に、まずは小選挙区とは、比例代表とはいったい何か?という基本的なお話からしていくことにしますね。
 

そもそも「小選挙区」とは何か?

小選挙区制は「多数代表制」。1票でも多数の支持を得られた人が当選するしくみです。要は、ナンバーワン、1人だけが当選するしくみです。アメリカ両院、イギリスやカナダの下院は純粋にこの小選挙区制です。しかし、アメリカのような二大政党制ならいざしらず、日本のように小政党もある場合、たくさんの候補がしのぎを削り、「40%弱の得票率で当選」ということもあるのですね。それはいかがなものか、という議論もあります。

ちなみに、下院で小選挙区を採用しているフランスは過半数の得票率を獲得した候補がいない場合、1週間後、12.5%の得票をしたもののみで決選投票をするようにしています(2回投票制)。
 

なぜ日本は衆議院議員の大部分を「小選挙区」で決めるのか?

小選挙区のメリット、いろいろいわれています。選挙区が小さいから選挙資金がかからない、有権者と候補者の密接度が高い……など。しかし、もっとも大きなメリットは、「ナンバー1だけが当選→決着がつきやすい→政権交代がスムーズ」というところにあります。

1人しか当選しないわけですから、そのとき、ちょっとでも国民の支持を得られている政党が議席を伸ばし、単独で過半数の議席を持つことが可能になる。こうして、そのときの「より多数」の意見を反映して、政権がすみやかに交代する。これが、小選挙区のメリットといわれています。

事実、1994年で小選挙区制が導入されて以来、与野党の二極化が進み、今では自民党と民主党で全体議席の85%以上という、イギリスなみの二大政党制が進み、政権交代の下地は整いつつあります。
 

「小選挙区」のデメリットは?

これもいろいろいわれています。当然、小政党は不利ですし、選挙区が小さいので(道路挟んで区が違うとか)、政府が自分たちの都合のいいように「選挙区操作」をすることができやすい(これを「ゲリマンダリング」といいます)、などなど。

しかし、もっとも大きなデメリットは、やはり「死票」が多くなる、ということでしょう。死票とは落選者に投じられた票です。当然、これも国民の意思です。しかし、1人しか当選しないとなると、当然のように、死票も多くなっていきます。特に、先に言ったように、たとえば得票率37%で当選、となると、のこり63%の「国民の意思」が、無駄になるわけです。
 

多数代表制に少数代表制を盛り込む=「並立制」

国によっては、そんなことがあっても、ちょっとでも多数を獲得した政党に国を任せるのが安定していいのだ、ということが了解されているところもあります(こういうことを、「政治文化」というわけですね)。

しかし、日本の国民は、それを納得はしきれていない。少数派にも国政参加の権利を。ということで、衆議院総選挙においては、残り180議席を、少数派の意見も反映する=少数代表制の一種である、比例代表制(政党の得票率=政党の議席数)で決めることにしたのです。

比例代表制は、厳密に言うと少数代表制とはいえません。政党を組めない勢力は参加できないわけですから。しかし、今の民主政治はイコール議会制なので、「政党も組めないような人たちに参加してもらっても困る」ということは、いちおう正当といえるわけです。

こうして、厳密ではないけれども、少数派でもある一定数があれば議席を持つことができる比例代表制が、世界で見られるようになってきたのです。たとえばオランダ、スウェーデンなどでは選挙制度は比例代表制のみです(もっとも、スウェーデンの場合、349議席のうち39議席を、後で複雑な仕組みで議席を確定する「調整議席」にしています)。

ただ、比例代表制の場合、政党が乱立し(小党分立)、政情が不安定になりやすいと、しばしば指摘されています。あくまで、可能性の話ですが。
 

「全国11ブロック」ごとの比例代表制

衆議院総選挙では、比例代表は参議院と違い、全国11ブロックごとに集計され、ブロックごとに議席を確定します。つまり、北海道(定数8)、東北(定数14)、北関東(埼玉含む、定数20)、東京都(定数17)、南関東(山梨・神奈川・千葉、定数22)、北陸信越(定数11)、東海(定数21)、近畿(定数29)、中国(定数11)、四国(定数6)、九州(定数21)です。

政党は、ブロックごとに候補者名簿を提出し、そこには順位をつけなければなりません。そして、たとえばその政党が3議席獲得、となったら上位3人が当選することになります。このように、名簿の順位に当選者が拘束される仕組みを「拘束名簿式」といいます。一方、参議院はそうではないので、「非拘束名簿式」とよびます。
 

「ドント方式」による決定方式

さて、「比例」とはいえ、得票数をそのまま純粋に比例させることは不可能です。たとえば北海道の場合、定数8に対して、たとえばある政党は得票率23.65432222222……こういうのが普通でしょうから。

まさか、議席を半分づつ割るわけにも行かず、そこで出てくるのが「ドント方式」です。つまり、まず政党の獲得票を1で割る。続いて2で割る。3で割る。……このように整数で割っていって、その割った値のうち上から大きなものを持っている政党が、その値の分だけ、議席を獲得する、というしくみです。
 
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ドント方式


この仕組みは、参議院通常選挙でも利用されています。ただし、この仕組みは大政党に有利、といわれていて、実際シミュレーションしてみるとわかります。なので、批判もあります。スウェーデンは、かなり複雑で、まず3から奇数だけで割り始めます。しかし、その前に1.4で割った値があって、議席が決まらない政党は、この値から割られていくことはありません。えらい複雑ですが、これは少数政党に配慮した形になっています。
 

「重複立候補」と「比例同一順位」

さて、日本の衆議院総選挙に戻ります。衆議院総選挙では、「重複立候補」ができます。これは、「小選挙区で立候補した人も比例代表名簿に載ることができる」というものです。つまり、小選挙区で落選しても、場合によっては比例代表で復活当選、ということがあるのですね(もっとも、有効投票の10%しか得票できなかった人は、比例代表の名簿から自動的に外され、当選できなくなります)。

そして、小選挙区にも立候補している人が名簿に載る場合、政党は彼らを同一順位にしてもいいのです。2位5名、それでもいいのです。順位をつけづらいのであれば。では、2位3名までしか当選しない場合(1位とあわせて計4名)、どうやって当選人が決まるのでしょう。ここで、「小選挙区の結果がシンクロ」するのです。
 

「惜敗率」

さて、さっきの例の場合。1位は当然に当選。2位5名中、3名までしか当選しない。ここでは、5名全員、小選挙区では落選、と仮定します。どうやって当選人を決めるのでしょう。それは、彼らの小選挙区でのがんばりにかかっています。つまり、「惜しい!あなたはよくがんばった!」という人から当選していくことになっているのです。

それは数値としては、小選挙区での当選者の票に対して、どれだけの比率の得票をしたか、というものであらわされます。これが「惜敗率」です。当選者に95%まで迫っていた人が、92%まで迫っていた人より優先して、当選することになるのですね。なので、比例代表の結果がわかるのは、深夜遅く。午前2時とかになることもめずらしくありません。入りたての地方公務員たちが(若いので体力あると言うことで)、へとへとになりながら作業することになります。
 

「事前運動の禁止」の「怪」

選挙運動は、選挙期間中、つまり、立候補が受け付けられてから、投票日の前日までしか行うことができません。つまり、事前運動の禁止です。しかし、もうすでに、いやいつも、選挙に出るらしい人のポスターが、街のあちこちに貼られていますね。あれは、事前運動ではないのでしょうか。

街で見かけたら、よーく、よーく見てください。下のほう、小さい字で、「講演会のお知らせ」が書いてあります。そう、あのポスターは、「講演会のお知らせ」で、「事前運動」のためのものではない、というわけです。もちろん、批判もありますよ。なぜこれがダメか。つまり、事前運動を許してしまうと、それが可能となる豊富な資金を持っている勢力に有利に働く、ということです。そのため、選挙運動期間を制限しているのです。
 

戸別訪問の禁止

公職選挙法は、選挙運動としての戸別訪問を禁止しています。各家庭に赴いて直接お願いすることは選挙違反となります。しかし、イギリスなどでは普通に戸別訪問を行っています。まあ、嫌な人もいるでしょうが、ちょっと考え方を変えると、たとえば選挙カーをしつらえるのがむずかしい資金力しかない候補者には、戸別訪問が認められることは有効でしょう。

だいたい、それがないから選挙カーといううるさいものがある、という批判もあります。もちろん、戸別訪問を認めれば候補者がやってきて「投票を迫る」懸念もあるわけですが。やや難しいところです。最高裁は戸別訪問の禁止は合憲としていますが、下級審では違憲判決も少なくありません。議論の多い規定です。
 

法定外文書配布の規制

候補者は、公職選挙法で定められた文書しか配布することができません。衆議院小選挙区の場合、通常はがき35,000枚、ビラ7万枚(ただし、掲示のみで配布はダメ)となっています。ただ、昨今の「マニフェスト選挙」に対応するため、2002年の改正により、政党は制限つきながら、マニフェストを記したパンフレット類を配布することができるようになりました。

というわけで、たとえば特に候補者と関係なくても、選挙期間中、「この人に入れて」と書いてコピーして配布すると選挙違反になります。法定外文書だからです。しかし、これには批判もあります。口頭でお願いする分には問題ないわけですが(もっとも公務員はダメもしくは強い制限)、たとえば聴覚障害者はどうなのか。

手話や点字じゃわかってもらえない人たち訴えるには、ワープロ打つしかない。しかし、これも違反。これは障害者への「差別」ではないか、というものです。しかし、改善される動きはありません。
 

選挙運動ができる時間

選挙運動は、期間中、午前8時~午後8時までしか行うことができません。うるさいからです。なので、一番うるさくなるのが最後の土曜日の午後7時です。候補者や運動員はもう倒れる勢いでがんばります。まあしかし、「うるせーな入れてやらねーぞ」という人も増えてきたわけで、小選挙区の導入もあって(都会ではかなり選挙区の範囲が狭い)、自転車作戦など、ちょっとはスマートになってはきているように思います。
 

選挙運動ができないのは公務員だけではない

公務員の選挙運動は、強く制限されています。警察官、税務署の職員はなどは一切禁止です。一般公務員は直接禁止されていませんが、「地位を利用した」運動は禁止されます。また、特殊法人の職員も、一般公務員と同じ規定が準用されます。さらに、学校教育法上の「教育者」つまり先生たちも、地位を利用した運動は禁止されます。よって、私立大学であっても、選挙期間中、教授は口を慎まなければならないでしょう。
 

現金をもらうだけが「買収」ではない

いまさら書く必要はないでしょうが、「買収」は重大な違反行為ですからね。気をつけましょう。候補者が有権者に提供することのできるものは、「湯茶と若干の菓子」くらいなものです。いろいろなものをもらわないようにしましょう。暑いので集会のときにうちわなどが配布されることもありますが、これも回収されます。ケチでやっているのではなく、回収しないと選挙違反だからですね。
 

報道機関のアナウンス効果

新聞紙と雑誌の、選挙期間中の報道の自由は一応保障されています。ただし、「選挙の公正を害してはならない」ため、選挙期間中は候補者が演説しているときの顔は掲載されなくなったりします。放送事業者も、同様です。ですから、選挙期間中のニュースは、音声なし、マイクでしゃべっている候補者の顔しかでないわけですね。もっとも女性進出著しい昨今、候補者で女性が1人、とかいう場合はいろいろ工夫をしなければなりません。

さて、昨今いわれているのが「アナウンス効果」です。つまり、報道の内容が有権者に微妙な影響を与えるというものです。これはしばしば、予想外の結果をもたらします。事前、ダントツ1位といわれていた人がころっと落選、みたいなことです。つまり、その報道によって相手は危機感を強め、また有権者は「ダントツか、じゃ棄権して遊びに行こ」とかいうことで、こんなことがおこります。

なので最近のメディアも、慎重になっています。また、候補者たちも、実は結構余裕なのに、最後まで「危ないところです!お願いします!」などと連呼するようになりました。
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