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【京都会議から発効までこれだけ時間がかかった原因とは】
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京都会議から発効まで
気候変動枠組条約と違い、京都議定書の発効は長くかかりました。その理由はあとで述べますが、その間にCOPはCOP4からCOP10(ちなみにこの2つはどちらもブエノスアイレスで開催)まで進みました。COP6(ハーグ)はいったん決裂し、京都議定書メカニズムの策定が危うくなりましたが、なんとか再開にこぎつけます。
つづくCOP7(マラケシュ)では議定書遵守の具体的な規定などが決まりました。遵守できない国は最終的にメカニズムから追放というペナルティしかないのですが。もっとも、遵守しているかどうかのこまかな判断方法はかなり詳細に決められました。
そしてロシアの議定書批准により発効が決まりましたので、今年からCOP/MOPがスタートすることになります。MOPとは京都議定書メカニズム最高機関というような意味です。
今年から、いよいよCOP/MOPを頂点とした、京都議定書メカニズムによるCO2など温室効果ガス削減体制がスタートするわけです。
しかし、さきほども言いましたが、なんでこんなに発効まで時間がかかってしまったのでしょう。
そもそも多国間条約の「発効」とは
基本的な知識をおさらいしておきましょう。条約は、まず各国の代表が話し合って、調印なり採択なりをして成立します。これが「締結」です。でも、「うちの代表がアホやったから調印して帰ってきたけど、うちの国は条約守る意思ないでえ」といわれたら困るわけですね。そこで、お互いに、「条約を確かに結びました」という文書をとり交わします。これが批准書です。
これは大事なことで、幕末に日米修好通商条約を結んだとき、幕府の役人が命がけで大平洋をわたって批准書を持っていきました。ちなみにそのとき一緒についていったのが勝海舟とか、福沢諭吉とかです。
なので、条約を結んだ最終確認の意思表示をすることを、「批准」というのですね。ちなみに現代の民主国家は、この批准の承認を議会が行うことが普通です(日本の場合、国会両院で承認→天皇が認証)。
で、ふつうの条約は、締結国全部が批准すれば国際法的な効力を持つ、すなわち「発効」となるわけですが、京都議定書のように百数十カ国が参加している場合、これを待っているとすごく時間がかかります(永久に発効しないかも)。
このような多国間条約は、批准していない国があっても、一定の要件を満たせば発効するように締結時に取り決めることが現代では普通です。
京都議定書の場合、発効条件は2つあって、
(1)気候変動枠組条約の締結国が55ヵ国以上批准し、かつ、
(2)批准した国の1990年におけるCO2排出量の合計が55%であること
となっています。
京都議定書発効に時間がかかった原因
それにしても、京都議定書の発効までには時間がかかりました。これにはいくつかの要員があります。1つめは、京都議定書の具体的運用ルール、たとえばCDMで先進国が得られる排出権の認証方法とか、そういうことが2001年のCOP7でようやく決まった、ということです。これでようやくやれやれと、各国の批准の動きが加速しました(日本も2002年に批准)。
2つめは、リーダーシップをとるはずのアメリカの動きです。条約締結時のクリントン政権は、ゴア副大統領が環境団体をまとめ、民主党のおおきな支持基盤に育ててきてましたから、ここは一番にでも批准したい。
しかし、アメリカで条約承認を行う上院は、共和党優勢だったのです。共和党は京都議定書に懐疑的でした。そこで、クリントンは上院に承認案を出して潰されることを恐れ、「とにかく上院が民主党優位になるまで待つ」ことにしました。
けれど、そんなことはとうとう今まで訪れません。2001年に共和党のブッシュ政権になり、ブッシュ大統領は議定書離脱を表明しました。アメリカが批准することは、当分ないでしょう。
3つめは、ロシアの動向でした。アメリカが離脱してもロシアが批准すれば発効要件は満たします。世界はロシアに注目します。
しかし、ロシアは温暖化問題に無関心。むしろ温暖化したら暖かくなっていいなあくらいに、プーチン大統領も考えていたくらいです。
そこで、各国が「ロシアは排出権がたくさん余ってるから、それで一儲けできるよ」と説得。ああそうか、ということになって、昨年ようやくロシアが批准し、2005年の発効にこぎ着けたわけです。
さて、これから世界、そして日本は現実にCO2削減義務が課せられたわけです。どうやって削減していくのでしょう。パート3で、考えていきたいと思います。
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