(2005.03.15)

京都議定書基礎知識、パート1では地球サミットの開催から締約国会議=COPの開催まで、パート2では京都会議の交渉課程と京都議定書の中身を見てきました。最後に、どうやったらCO2などの温室効果ガスの排出削減ができるのか、そこを考えていきたいと思います。

1ページ目 【直接的な排出規制や、補助金による排出抑制促進には限界がある】
2ページ目 【環境税も、リサイクルも、必ずしも万能のしくみではない】
3ページ目 【やはり最終的には一人一人のささいなことの積み重ねがすごく大事に】

>>パート1はこちら

【直接的な排出規制や、補助金による排出抑制促進には限界がある】

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CO2削減の方法

さて、CO2削減にはなにが有効なのでしょう。考えられる方法をとりあえずあげておきましょう。

(1)直接規制(排出量や方法などを法令などで直接規制する)
(2)補助金制度の活用(CO2排出削減を補助金で助成、促進する)
(3)環境税・課徴金の創設(CO2の排出量に応じた税金などを課して間接規制)
(4)デポジット制度の創設(リサイクルシステムを構築する上で不可欠)
(5)排出権取引(詳しくは「きれいな空気、お値段いくら?」をご参照あれ)
(6)CDMによる森林植生(CO2吸収源の増加)
(7)新エネルギーの開発(風力・太陽熱など)
(8)企業・個人の自主的取り組み

では、1つ1つ検討していきましょう。

直接CO2排出を規制するのは簡単なようだけど

まず直接規制です。わかりやすいですね。排出量を規制する。または方法も規制する。違反事業者には罰則。

しかし、問題もあります。ちょっと考えればわかるのですが、

排出規制をクリアした企業は、それ以上のCO2規制を進めないだろう

ということです。

排出規制をかけられると、生産量に影響が出る。当然、売上にも響く。なんとか響かないようにしようと技術を変えようとすると、やはりコストに響く。だから、企業は規制値をクリアすれば、それ以上のことはなるべくやりたくないわけです。

さらに日本の場合は、前からいってますがCO2排出削減コストが極めて高い。なんでかというと、1970年代末、オイルショック不況に悩んだ日本は、省エネ政策を強力に押し進めたからです。

これで日本は他の先進国に先がけて不況を脱したのですが、だから今になってさらに一段CO2削減というのはコストがかなりかかってしまうのです。

工場よりオフィスの多い日本の事情

それに、日本の産業空洞化の影響もあります。

CO2の削減は製造業だとやりやすい。CO2など温室効果ガスの発生を抑制しやすい機械に替えればいいわけですから。

しかし、今は日本の工場がアメリカや中国など生産コストの安いところにいってしまい、国内事業所のうち製造事業所の占める割合が低下してしまった。かわりに、ホワイトカラーが増えて、オフィスが増えた。

オフィスでCO2削減というのはなかなか難儀なことです。一段と暑い夏になれば、労働環境上、冷房をがんがんに利かさなければならない。ビルの高層化が進むと、エレベーターがフル稼動して電力をがんがん消費する。などなど。

で、ますますCO2削減コストが上昇してしまうわけです。

なので、(他にも問題は多いのですが、)直接規制だけで、日本が京都議定書目標の削減数値に持っていくのは限界があることがわかります。

補助金によるCO2削減誘導はできるか

ならば補助金制度を利用して、がんばってCO2を削減しようという企業などに、助成するようにしてはどうか、という議論がおこってきます。

この制度も、使い方によっては有効です。がんばってCO2削減するという動機づけ=インセンティブが企業、やり方によっては個人にも、与えられるわけです。

問題は、次の3点です。

・今の日本財政に、そんな余裕があるのか。

国債依存度45%というわが国の予算から、どうやって補助金をひねり出すのか。これは難しい。地方自治体だと、さらに苦しい。これは問題です。

「だったら環境税を作ってそれを財源にしたら」という意見が出ます。それも一理あります。しかしその手法もある程度限界があることは、あとで述べます。

PPP(汚染者負担の原則)に反している。

日本など先進国が組織するOECD(経済協力開発機構)は、1972年にPPPルールを確立しました。公害加害者が、その除去費用を負担すべきということです。

補助金を与えることは、公害加害者=CO2排出者に、逆に除去費用を助成しているわけですから、このルールに明らかに違反しています。

このルールは、単に企業の責任を明確化しただけでなく、先進国間の国際競争力の公正さという面からも作られたものなので(企業が補助金もらえる国は競争力が「不公正」な形で高まってしまう)、これを全面にだすと日本はバッシングされるでしょう。

・新たな利権の温床になる。

補助金は、今までも、「政・官・財」の癒着で不公正に配分されてきました。環境補助金を大幅に増やすことは、あらたな癒着をつくりかねません。あらたに「環境族議員」なるものが現れ、環境省や業界と癒着する様が浮かんできます。

それが結局、補助金の無意味な拡大→財政の悪化という、今までのパターンの繰り返しになってしまっては、元も子もありません。

ということで、補助金も有効なのですが、デメリットもある。あくまで補助的な使い方をしよう、ということになりますね。