「利回り上昇(債券価格は下落)」の意味
利回りが上がると債券価格が下がるってどういうこと? |
簡単な例で説明しましょう。前提として、先ほどの金利の話「お金を欲しいと思う人が多ければ、金利が上がる」を念頭においてください。
年利率1.5%の国債が、額面100万円分、債券市場に売りに出されている。満期まであと3年。
この場合、世間の金利が「3年・年利5%」という環境(つまり、1.5%の頃よりもお金を必要とする世の中)だったとすると、もしあなただったら、「年間1.5%の利息をあと3年間もらい続けられる」という債券を、欲しいと思いますか?
債券市場には、その国債を欲しいと思う人がやってきません。このときの環境は、「お金を貸して」「貸して」と言っている人が多い時ですから、そちらに高い金利で貸すか、世の中に出回っている「3年・年利5%」の金融商品に預けるでしょう。
1.5%の国債を持っている人も、そのまま持っていては有利な運用とはならないので、できるだけお金に換えようと努力します。そのためには、額面100万円ですが、例えば91万円にして「買ってくれませんか?」と値下げします。
もし、ここで「そのぐらい安くしてくれるならいいよ」という人が出てきて、今、91万円支払ってその国債を買うとします。その人は、3年後には額面の100万円で満期金を国から受け取ることになります。その訳は、オークション会場でどんなに安い値がついていたとしても、借りた金額を満期の時にその国債を持っている人に国が返すのは、額面どおりだからです。
これを残り3年の時点で買った場合の、投資利回りは次の通りです。
【受け取る利息(税込み)】
100万円×1.5%×3年=4.5万円
【満期までの差益】
100万円-91万円=9万円
【トータルの利益】
4.5万円+9万円=13.5万円
【投資額に対する利回り】
13.5万円÷91万円×100=約14.835%
【年利に換算すると】
14.835%÷3年=約4.945%
つまり、もともと年利1.5%の利率で100万円の額面の国債が、世の中のお金のニーズが高まって金利が上がり、5%の金利が当たり前、という状況になると、みんながその国債をいらないというので値下がりします。このように世の中の金利が上がっていくと、年利5%の国債を、満期までの期間、他の金利商品で運用をしたのと同じ計算に落ち着くような価格まで、オークションで値下げされていきます。
ここでは、満期までの3年間、他の金融商品と同じように運用できる国債の価格は91万円へと債券市場で決まっていきました。つまり、金利が上がることによって、満期まで残り3年という時に債券市場でついた価格は、額面100円のものが、91円に値下がりしたということになります。
金利が上昇すると、債券価格が下落するのは、こういう原理です。世の中の金利が上がっていくと、低い固定金利の債券は魅力が薄れてしまうということです。
国債のうち、特に10年の普通国債(個人向け国債でない)は、発行する量が多い分、債券市場に出回る量も多く、資金の運用に利用されています。世間で設備投資などに資金が必要でお金を求める人が多くなると、国債で運用するよりも高い金利で誰かに貸そうとします。その結果、国債が売られて価格が下がります。
世間でお金を必要としない時期には、国債で利息稼ぎをしようかと国債を買う人が集まる、という資金運用の選択肢の一つとなります。
10年の普通国債は、流通量が多く投資参加者も多いのが特徴のため、金利の指標とされているというわけなのです。対象の国債が10年の国債ですから、運用期間が長い、生命保険や年金の運用、長期の住宅ローンの指標とされています。この指標は「新発10年国債利回り」としてニュースで報道されていますので、長い期間の金利が気になる方はぜひチェックしてみてください。
【関連サイト】
・「借金の申込み、○○円までなら貸す!?」
・「プライマリーバランスと国債の関係」
・「ゼロ金利政策ってナニ?」
【関連リンク】
・「預貯金金利、ローン金利、市場金利動向」
・「日銀・金融再編・ペイオフ・金融不安」