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新水着に揺れる世界の水泳界(2ページ目)

現在水泳の世界は、北京五輪を前にして水着の問題で大きく揺れています。今年になって発表された新しい水着「レーザー・レーサー」を着た水泳選手が、次から次へと世界記録を更新しているからです。

執筆者:鳥羽 賢

どうなる?!日本選手の「レーザー・レーサー」使用

海
選手は五輪で勝つために厳しいトレーニングを続けてきた。
これだけのセンセーションを巻き起こしている水着なら、日本人選手も黙ってみているはずはありません。これまで「レーザー・レーサー」を実際に使用した選手からも、「新感覚でした。とくにスタートのバサロキックが全然違いました」(伊藤華英選手)(サンケイスポーツ)、「水着の効果が大きいと思う」(中村礼子選手の平井コーチ)(産経新聞)など、好反応が出てきています。

このために、多くの日本人選手が、「レーザー・レーサー」の使用を望むか、あるいは検討するようになってきています。

ところが、それが許されない事情があります。というのも、日本の水泳界ではミズノ、デサント、アシックス3社が、オフィシャル・サプライヤー契約を日本水泳連盟と締結しているからです。

オフィシャル・サプライヤー契約というのは、水泳だけではなくどのスポーツでも存在する契約です。これはあるメーカーが、五輪などのビッグイベントにおいて選手達が使用する用具やユニフォームを全て提供するという契約です。メーカーはその費用を負担しますが、その分五輪で露出されることで、大きな宣伝効果が得られます。

待たれる日本水泳連盟の決断

3社のオフィシャル・サプライヤー契約は2017年3月まで有効となっていて、違反して五輪で他社の水着を着用すると、日本水連が莫大な違約金を払うことになります。そのために、現時点では簡単に「レーザー・レーサー」を着用するわけにはいきません。

だからといって、それでみんなが納得するわけにはいかないのが、今回の問題です。というのも、五輪では何よりも「勝つこと」が大切です。選手は長年厳しいトレーニングを重ねてきた成果を金メダルという形で出したいですし、ファンも日本がメダルを取ることを願っています。それなのに、ビジネス契約のために勝てる要因となる水着を着られないのは、間違っているのではないかと考える人もいるでしょう。

日本水泳連盟は今回の事態を打開するために、スポンサー3社に「レーザー・レーサー」と同等かそれ以上の性能を持つ新水着の開発を依頼しました。3社はそれに応えて、5月30日にそれぞれ新水着の開発を発表しました。しかし北京五輪まで時間がありません。開発に成功するか難しいところですし、たとえ成功しても、選手全員にまわる数が揃えられるとも限りません。

日本水泳連盟は新水着の開発を依頼しただけではなく、「レーザー・レーサー」を選手が北京五輪で着用できる許可を出すか検討しています。その答えは、6月10日の常務理事会で出されると言われています。どういう答えにしても、選手やファンが納得できるような五輪であって欲しいものです。


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