政府の法制審議会(法相の諮問機関)では、日本の成人年齢をこれまで長年続けられてきた20歳から18歳に引き下げる是非が議論されています。成人年齢とは国によって違うものですが、世界各国の事情はどうでしょうか?
世界の主流は「18歳成人」
まずは上の主要国の成人年齢をご覧下さい。このように、世界の多くの国では成人年齢が18歳と定められています。またアメリカのように、州によって規定が違う国もあります。また一部ではありますが、成人年齢が18歳未満の国があります。これらはいわゆる発展途上国と言われる国に多く、理由の1つとして、それらの国では高等教育が先進国ほど普及していないことが挙げられています。
大学進学が一般的になると、大学を卒業してから仕事に就く若者が多くなります。ということは、大学卒業の歳までは「大人」と見ることは難しいことになるのです。
ヨーロッパの主要国であるイギリス、ドイツなどは、1960年代~70年代にかけて成人年齢を3歳引き下げ、18歳としました。それまでは21歳だったのになぜ、成人年齢を引き下げたのでしょうか?その経緯を探ることで、日本が成人年齢を18歳に引き下げる議論の参考になるでしょう。
ヨーロッパ諸国が成人年齢を引き下げた経緯:ドイツ
まずはドイツについてお話します。ドイツは統一前は東西に分断されていたので、今回は旧西ドイツの経緯を見てみます。旧西ドイツも、第2次大戦後はしばらく成人年齢は21歳でした。1960年代になり、ヨーロッパで学生運動が盛んになります。政府や大人たちは、学生運動をどう鎮めるかに頭を悩ませていました。そこで学生運動鎮静の1つの手段として、学生に選挙権を与えることを検討していました。
投票年齢引き下げの支持根拠の1つとして、旧西ドイツには兵役制度があり、兵役の義務は18歳からでした。そのために、選挙権も18歳から与えるのが妥当であるという主張が出てきたのです。
最初は国(連邦)ではなく、州レベルから投票年齢の引き下げが始まりました。1つ、また1つと各州の議会は、投票年齢を18歳にする法案を可決していきます。そして1969年末までには、ほとんどの州で投票年齢が18歳に引き下げられました。ついに翌年の1970年6月に、連邦議会も投票年齢を18歳に引き下げる法案を可決します。
これらの流れを受けて、1974年には成人年齢そのものを18歳に下げる法案が、連邦議会で可決されました。旧西ドイツも現在の日本のように、「まずは投票権から」という過程になっています。
ヨーロッパ諸国が成人年齢を引き下げた経緯:イギリス
今度はイギリスの経緯です。イギリスでも1960年代には学生運動が盛んになり、政治家が選挙運動を行うときも、その対策を発表しなくてはいけない状況でした。そのため労働党は、1966年の選挙綱領で投票年齢の18歳への引き下げを公約します。
そして、イギリス国内の成人年齢を議論するための「レイテイ委員会」が発足します。「レイテイ委員会」は数年間検討を続け、1969年に成人年齢を18歳に引き下げることにしました。また「レイテイ委員会」の結論を参考にして、投票年齢も同時に18歳になりました。
これらの国を見ると、きっかけの1つとして学生運動が盛んになっていた点が共通項としてあります。言ってしまえば、若者たちが自分の主張によって成人年齢を引き下げることに成功したのです。
それに対して、現在の日本ではそのような運動は全く見られません。実際に18歳に下げられたとしても、あくまで政府が一方的に決めるだけの成人年齢引き下げになります。本当にそれでいいのでしょうか? そういった点も含めて、これから成人年齢引き下げについて考えていくのがよいでしょう。
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