2ページ目 【ロシアの原油生産と国民の反米感情が王制を揺さぶる?】
3ページ目 【アメリカの中東政策のまずさが今の緊張を生んでいる?】
【ロシアの原油生産と国民の反米感情が王制を揺さぶる?】
サウジアラビア、方向転換も近い?
サウジは王室を中心に親米的な国です。主要産業である原油の最大輸出先はアメリカであり、そして日本などアメリカの同盟国らにも多く輸出しているからなのです。いいお客さんなのですね。
しかし、湾岸戦争後、さらには同時多発テロなど中東情勢の不安定化によって、先進国はエネルギー政策を見直しはじめています。つまり、中東への依存度を減らそうとしているのです。
アメリカとロシアが近ごろみょうに親密なのも、そのせいでしょう。ロシア国内にはまだ整備されていない油田がたくさんあり、アメリカはロシアの石油増産と、アメリカへの輸入の拡大をもくろんでいるのです。実際、じょじょにではありますが、ロシアからの輸入はすこしずつ増えはじめています。
こんな感じで先進国の中東離れが進んでいくと、サウジの発言力・政治力にもかげりが出てきかねません。
もう1つ、サウジの国内的な不安定さが増してきていることも見逃せません。湾岸戦争以降、アメリカ軍がサウジに駐留していますが、このようなことや、アメリカの中東政策などは、国民レベルで反アメリカ感情を引き起こしています。
サウジはお金持ちの国、というイメージがありますが、失業率じつに30%、貧富の格差が大きい国でもあるのです。そんななか、一般の国民感情として、異教徒アメリカに基地を提供し、かつぜいたくなバカンスを楽しむ王室に対する批判が、水面下で徐々に広がりつつあるようなのです。
ビンラディンをはじめアルカイダのメンバーの多くにサウジ人がいたのも、こうした背景があるようです。
そのため、アブドラ皇太子は親米路線から中東地域優先という政治の方針転換をしようとしているといわれます。国民の反米感情の高まりを抑えないと、王室の地位が危うくなる、という判断から来ているのでしょう。
ファハド国王は高齢で、アブドラ皇太子が実権をにぎりつつあるサウジ。先進国が求める石油の増産にも応じない姿勢を見せるなど、その方針転換は、じょじょに始まっているように見えます。今後、アメリカの外交方針にも大きな影響を与えることになるかもしれません。
次のページでは、アメリカの中東外交について、検証していきましょう。