「怒り」とうまく付き合う方法とは?
怒りの種は日常にあふれています。あなたはどう対処していますか?
ぐうたらな部下、理不尽な上司、能天気な同僚、無理解な恋人に、口うるさい両親……。ふと気が付けば、あなたの周りには怒りを誘う要因に溢れています。
頭に来た。許せない。ムカツク。ふざけるな。いいかげんにしろ。目の前から消えろ! 思わずカッとなって、怒りを爆発させると、大切な人や物、あなたに対する貴重な意見、尊敬や愛情、友情や信頼など、あなたは色んなものを失ってしまうのです。少し気持ちが落ち着いて、ふと冷静になったとき、あなたはきっと自分の事を責めて深く傷つくでしょう。そんなことが度々あると、いつしかあなたは自分の事が嫌いになってしまうのです。もうすでに「僕はしょうがないヤツだ」「どうして私はいつもこうなんだろう」と自分を愛せなくなってしまった人もいるかもしれませんね。
どうして、人には「怒り」という感情があるのでしょうか。「怒り」に何かメリットはあるのでしょうか。うまく付き合う方法はあるのでしょうか。今回は、怒りについてじっくり考えていきたいと思います。
怒ることは悪いことか
あなた自身が怒ってなくても、怒りまくっている上司の側にいるだけで、あなたは、とてもいや~な気持ちになったりしませんか?やはり「怒り」にはロクなことがない……。そう思うでしょう。それでは、以下について考えてみましょう。- アイディアをバカにされた時。
- 約束を破られた時。
- 話し方をからかわれた時。
- いわれの無い誹謗・中傷を受けた時。
- 意見をちゃんと聞いてもらえなかった時。
- 失礼ないい方をされた時。
- ぞんざいに扱われた時。
- 暴力を振るわれた時。
- 気持ちを無視された時。
- 大切にしていた物を壊されたり、失くされたりした時。
こんな時、もしあなたが怒らなかったら? トラブルに巻き込まれたり、嫌な思いをさせられたりして、あなたの心も体も傷つくこととなるでしょう。怒りがこみ上げてくるということは、あなたを守るための防御本能であり、それはとても自然なことなのです。自分自身を大切にしたいという気持ちはとても重要です。なぜなら、自分を大切にできない人は、他人を大切にできるはずがないからです。まずは、自分から。その気持ちが悪いものであるはずがありません。
しかし、怒りはとても強力なパワーでもあるので、思わぬギフトをもたらす事があります。マハトマ・ガンンジーはインド人であることを理由に列車からつまみ出された差別体験から強烈な怒りを覚え、弁護士の職を捨てます。そして、その決断はインドをイギリスからの独立に導く大きな原動力となりました。当時大流行していた天然痘に猛烈な怒りを覚えたエドワード・ジェンナーは、独自に開発したワクチンを8歳の子供に接種するという人体実験を行います。しかし、このチャレンジがあまりにもショッキングであったため、イギリス議会より賞金が贈られても医学界はこの名誉をなかなか認めませんでしたが、彼の功績により天然痘は地球上から消え、根絶された唯一の感染症となるのです。そのほかにも劣悪で貧しい境遇に対する怒りを抱え、それを「お金を稼ぎ出す」行動力に転換し一代で財を成した大富豪も多いのです。
分別のある立派な大人でありたいと誰もが願っています。そのために「怒ることはいけないことだ」と怒りを押し殺しているうちに、怒っている気持ちが、心の奥底で、コンクリートのように硬く冷たく固まってしまうことがあります。それが知らないうちにあなたの人生や感性をねじ曲げてしまうこともあるのです。そんな怒りは、臨界点を超えてしまった時に「攻撃」となって爆発してしまいます。その攻撃が他人に向かえば取り返しの付かないトラブルとなり、自分自身に向かえば精神的に追い詰められ、心が崩壊してしまうことすらあるのです。
むしろ、怒るということはあなたの心が健康で、正常に機能しているという事でもあるのです。怒りを暴走させさえしなければ、怒ることは悪いことではありません。
「怒り」を、あなたの支配者としてではなく、良き友人として付き合いっていくにはコツがあります。それは次のページでご紹介するとしましょう。
「うまく怒る」という概念
まっすぐ顔を上げて、あなたの気持ちを伝えましょう。あなたの怒りは正当なもので、あなたを守るためにも必要不可欠なものです
怒りが暴走し始めると、その感情はあなたの手に負えるものではなくなってしまいます。カッとなった勢いで、何年もの前の事を持ち出してしまったり、絶対に言ってはいけない言葉を言ってしまったり、ついには暴力を振るってしまったりすることもあり、取り返しの付かない事態へと発展してしまう危険性があるのです。この時、あなたは感情に支配されて、必要以上に相手を攻撃したり、非難したりして心身ともに傷付けてしまうこともあります。
「愛しているのに、聞くに堪えない暴言を吐く」「人の顔色を伺っていると思ったら、傍若無人な態度を取る」「ふだんはとても親切なのに、急に陰険ないじわるをする」。きっとそんな人は、自分でも、どうしてこうなってしまうのかわからないことでしょう。元々は、自分を守ろうとしただけの小さな想いだったのに、いつしか相手を完膚なきまでに叩き潰すという攻撃にすりかわってしまったのです。
大喧嘩のきっかけも、元を正せば「どうしてこんな事になったんだっけ?」と思い出せないくらい本当に些細な事がほとんどです。怒った後は、いつも後悔してしまうという人も多いのです。もしあなたが「だから怒りたくないんです」と思っているのなら、もう一度考えてみてください。あなたはなぜ怒った後に後悔するのでしょうか。それは、怒ってしまったからではなくて、怒りをコントロールしようと思ったのにできなかったから……つまり、うまく怒れなかったからではないでしょうか。
怒ることを止めようとするのではなく、もっとうまく怒れるようになりましょう。「怒り」にコントロールされるのではなく、有効な道具として使いこなす立場を崩さないこと。それには、「大切な自分を守る」という当初の目的であるを忘れないことです。
うまく怒るために アンガーコントロール
当初の目的を忘れない、というのは一見簡単に見えてとても難しいことです。まず最初に必要になるのは、客観的に自分を見つめることです。口に出して「私は怒っている」と言ってみるのも一つの方法です。感情を押さえ込むのではなく、自分の状態を一度認める。それだけで、心が少し軽くなります。
怒鳴ったり大声を出してしまう前に、10秒だけ待つというのもいい方法です。大声は、威嚇であり攻撃です。あなたが「怒っている」と伝えるには、大きな声でなくても伝えられます。10秒待つことで、気持ちが落ち着き、我にかえる、いいきっかけとなります。怒った時に、どういった態度を取るのかはとても大事なことなのです。
そして、少し落ち着いた時に、あなたの本当の気持ちとアクセスすることができます。怒りという感情は瞬間的に現れる表面的なもの、つまり「第一次感情」とも言われています。本当の気持ちは表面に出ない、氷山に例えると海面に深く潜っている「第2次感情」にこそあるのです。
もし不愉快な気持ちになったり、イライラを感じたら自分に聞いてみましょう。
「何が気に障るの?」
「疲れているの?」
「気持ちを無視されて悲しいの?」
「粗末に扱われた気がしてつらいの?」
「またあの時のように嫌な気持ちにさせられそうで、怖いの?」
自分の気持ちがわかっていれば、怒りが爆発する前に問題を解決する事ができます。何があなたを怒らせるのかがわかったら、やさしく、慎重に、そして、キッパリ毅然として怒りましょう。
どんよりと暗い顔をして不平不満を垂れ流していても何も解決しません。ぶつぶつ文句を言い続ける人に、明るい未来がやってくるようにも思えません。とても魅力のある人は、たいてい上手に怒れる人です。
あなたの怒りは、あなたを守るためにある。これは、忘れないでいただきたい事実です。どうか上手に怒りを使いこなしてくださいね。
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