自分が愛着をもっている家を売却しなければならなくなったとき、予想していたより売却額が低かったら、がっかりしますよね。自分の希望や好みを反映させた家には愛着が増すものですが、あまりにも自分の好みを優先させてしまったがゆえに、資産価値をさげてしまうことがあるのです。今回は、私的価値と資産価値のバランスについて考えてみようと思います。
自慢のお風呂がマイナス要素に
Sさんは大のお風呂好きで、家を新築したとき、温泉宿のような大きな浴室をつくりました。浴室だけで4畳半ほどもある広さで、浴槽はヒノキでつくった大型のものです。浴槽があまりに大きいので、お湯をためるのに水栓金具を2カ所につけたほどです。Sさんは毎日自宅で温泉気分を味わうことができ、とても満足していました。
しかし、ある事情から、自宅を売却することになりました。自慢のお風呂がある自宅を手放すのは惜しかったのですが、逆にすばらしいお風呂のあるわが家はとても高く売れるに違いないと思ったのです。ところが、売却額は予想より低めだったようです。間に入った不動産業者に理由を聞いてみると、自慢のお風呂がかえってマイナス要素になったというのです。あまりにお風呂が大きすぎて、水道代がかかりそうだとか、ヒノキのお風呂を維持していくのは大変だからと、敬遠する人が多かったそうなのです。
みなさんは、この話を聞いて、どう思われますか?
ゆったりと入浴できるバスルームはあこがれですが・・・ |
一般的な要望と自分の要望の距離
わが家にずっと愛着をもって住み続けられる理由のひとつとして、自分の希望や好みが反映されていることをあげる人も多いでしょう。しかし、前述のSさんの例のように、自宅を一般的な要望とあまりにかけ離れたカタチにしてしまうと、売却しなければならなくなったり、人に貸すことになった場合、敬遠されてしまう可能性があるのです。
自分にとって価値の高い家でも、他人とっては価値の低い家にならないように、バランスを考えてプランニングしていく冷静さが必要だと思うのですが、このバランスについては次ページで。