家を建てるとき、「現在の生活スタイルや家族構成だけでなく、将来のことも予測して、プランニングしましょう」と、よく言われます。その通りなのですが、将来とはいつのことを指しているのか、また、なぜ、将来のことを考えないといけないのでしょうか。今回は、この「予測すべき将来」にスポットをあててみます。
未来のことを予測するのは難しい
未来のことなんて、だれにもわからない。確かにそうなのですが、家を建てるときには、自分たちの将来を予測し、できればそのときにも対応できる家にしておきたいものです。なぜなら、家は40年、50年と長く住み続けるものだからです。
とはいうものの、ちょっと先の10年後のことを想像するのも難しいのに、ずっと先の自分たち家族が、どんな暮らしをしているのか予測するのは、確かに簡単ではありません。今回は、東京都に住むAさん一家の事例をもとに、考えてみましょう。30代で新築すると、そのとき子供は学齢期
未来のことを予測すると思うと難しいですが、長く暮らす家だからこそ、将来のことも考えないと……(写真はイメージです) |
東京都のAさん一家は、子供2人の4人家族でした。子供の成長とともに、それまで住んでいた建て売り住宅が狭くなり、土地を買って家を建てたのは、Aさん夫妻が30代のとき。子供たちは、小学生と中学生でした。
新しい家に引っ越すことで、子供たちには個室が与えられました。それまで共有で使っていたので、子供たちは大喜びです。ところが、子供室は北側にあったため、あまり快適な部屋ではありませんでした。そのため、2人の子供たちは、何かにつけて居心地のよいリビングにやってきて、宿題をしたり、音楽を聴いたりしていたそうです。
Aさんによれば、快適とはいえない子供室のおかげで小学生から高校生までの難しい時期に、子供たちとコミュニケーションがとりやすかったのは非常によかったといいます。
その後、子供たちは高校、大学と進学していき、社会人に。子供たちが高校生までは毎日同じようなリズムだった食事や入浴、就寝の時間が変わり、家族4人の生活時間もバラバラになりました。仕事の関係で、帰宅時間の遅い長女と、朝の早い次女は同じ家に暮らしながらほとんどすれ違い、それまで一緒にとることの多かった夕食も、全員がそろうことはなくなりました。このとき、家は築10年、Aさん夫妻は50代目前となっていました。
小学生だった子供も10年後には、成人に。とはいえ、子供が小さいときはコミュニケーションがとりやすい間取りになっているかどうかは、重要ですね |
将来は子供の年齢から予測する
このAさんの話を聞いていて思うのは、成長していく子供の年齢を基準にすれば、将来の生活は想像しやすいのではないかということです。学齢期の子供のいる家庭では、子供たちと母親、父親のコミュニケーションがとりやすいように、リビング内に階段を設けたり、子供室を将来分割できるようにしたプランが人気を集めています。10歳だった子供も、10年後には20歳、もう大人です。ということは、案外、子供として接する時間は短いということになります。だからこそ、家を建てるときは、10年後、20年後の子供たちの年齢を考え、そのときに対応できるようにしておくことが大切なのです。
築15年前後で家族構成が変化する!
Aさんの家のように、家を建ててから築10年になるまでの間に、家族構成はそのままでも、生活スタイルは大きく変化します。Aさんの家は、家の中央にあるリビングやキッチンなどを通って、子供室や主寝室へつながるという間取りだったために、子供たちが成人してからは、家族それぞれが必要に応じてリビングに集まったり、個室に入ったりという生活をしていたようです。
そして、築15年を迎えたころ、相次いで2人の子供は独立していきました。4人だった家族が2人になったのです。しばらくは、そのまま暮らしていたAさん夫妻ですが、その後、この家のプランが大きな障害となることに。次のページでは、Aさんがどんなところに不便を感じているのかについて、触れていきましょう。