小さいけれど豊かさを感じる家がおすすめ
長く暮らすなら、小さい家がおすすめ。ただ、小さくコンパクトであっても、豊かさを感じる家であることがポイントです
<目次>
小さい家は建築費用・税金・ローンの面でメリット!
小さな家には、どんなメリットがあるのでしょうか。まず、建築費が抑えられます。毎年かかる固定資産税も少なくてすみます。
建築費が少なくてすめば、住宅ローンの負担も軽くすることができるので、生活のレベルを落とす必要もなく、日々の生活にゆとりが生まれるでしょう。将来のメンテナンス費用を計画的に用意することもできるはずです。
住宅設備や内装にこだわって特別にお金をかけない限り、一般的に、大きな家より小さい家のほうが建築費は抑えられます
小さい家は建築後のメンテナンスのしやすさもメリット!
小さい家は、建てた後のメンテナンスがしやすいというメリットもあります。例えば、外壁の再塗装。家が小さければ外壁の面積も小さくなるので費用は抑えられ、工事期間も短くてすむでしょう。また、大きな家に比べて目が行き届きやすくなるので、補修箇所や不具合の早期発見にもつながると思います。
維持費やメンテナンスのしやすい家の話は『いい家の条件!維持費が安くメンテナンスが簡単な家とは?』で解説していますので、併せてご覧ください。
小さい家は大きい家に比べて目が行き届きやすく、外壁や屋根の面積も小さくなるので、再塗装の費用なども抑えることができます
小さい家は毎日の掃除がラクというメリットも!
家が小さいと毎日の掃除もラクですね。高齢になると、掃除をはじめ、家全体に目配りするのはなかなか大変です。家族構成や来客の多さにもよりますが、日常生活にはそれほど広い空間を必要としません。普段使う場所だけきれいにすればすむ小さい家は、広すぎる家より快適ではないでしょうか。
敷地に対して小さい家なら、隣家との距離ができるため、風通しや日当たりがよくなる可能性があります
また、敷地に対して家が小さければ、隣家と一定の距離が保てるので、敷地いっぱいに家を建てるより、通風や採光が改善される可能性があります。
小さい家の注意点や建てる際に工夫するポイントは?
小さい家はメリットが多く、いいことばかりですが、注意点やマイナス面はないのでしょうか。小さい家だからといって、すべての部屋や空間を必要以上に狭くしてしまったら、使い勝手が悪くなってしまいます。水まわりのように毎日使う場所は、極端に面積を削ってしまわないようにしましょう。
洗面室やトイレなど、もともと面積の小さな場所は、居心地を高め、狭さを感じさせない工夫も必要です。具体例をあげると、洗面室と浴室との間仕切りにガラスを利用して広く見えるようにしたり、トイレの内装に明るめの色を使ったり、ドアより引き戸を多用したり。外部からの視線を防げる位置に窓をとって、光の入る明るい空間にするなども、よい方法でしょう。
面積の小さい場所は、視線が先まで伸びるように、間仕切りをガラスにするなど、広く感じさせる工夫も必要です
また、家のどこかに広い空間をつくるといいと思います。例えば、間取りを考えるときにメリハリをつけるとよいでしょう。玄関や個室などはそれほど広くないけれど、リビング・ダイニングは大きな空間にするといった具合です。
小さい家に住む場合、収納が重要?
小さい家では、すっきりと暮らせるようにすることが大切です。そのためには、ものがあるべき場所にきちんと収まっていないといけないので、収納が重要になります。いろいろなところにものが散乱していては、よけいに狭く感じます。収納の基本は適材適所といわれるように、必要な場所に十分な収納を確保すること。納戸や押入れのような大きな収納をつくっても、使うたびに取りに行くのでは面倒です。さらに、しまうものによっては奥行きの浅い収納のほうが取り出しやすいこともあります。収納スペースは、各所に、そして、しまいやすさ・取り出しやすさを重視してつくりましょう。
外まわりのことでいえば、家が小さくなれば、庭がとれる可能性がありますね。季節ごとに咲く花や野菜を育てるなど、ガーデニングや家庭菜園にチャレンジするなど、自然を楽しむのもいいかもしれません。
敷地に対して家が小さければ、庭が取れる可能性も。ガーデニングや家庭菜園にチャレンジするのもいいですね
家の大きさは20年後、30年後のことを考えて決めよう
家を建てる人の年齢を見ると、だいたいどの調査でも30代前半から40代半ばの人が中心です。仮に、30代で家を建てたら、30年後には60代。ひょっとしたら、「最近疲れやすくて」とか、「階段の上り下りが億劫になってきた」なんてことを言い始めているかもしれません。そんな年代になったときのことも想像して、家を建てたいものです。最近では、子どもが独立して夫婦だけの暮らしになった場合に、増築ならぬ「減築」をする家庭が見られるようになってきました。家族構成が変わったことで生活スペースが小さくてすむため、子ども部屋を主寝室にしたり、客間をなくすなどして、間取りを変えたり、不要部分を削減し、家をコンパクトにするリフォームです。家が小さくなった分、毎日の掃除がラクになり、以後のメンテナンス費用の削減も期待できます。
こうした事例のように、子どもの独立後にリフォームをして家を小さくするのも一つの方法ですが、最初から必要最小限のスペースで心地よく豊かに暮らせる設計を心掛けるのも賢い選択です。子どもたちが家を出た後、活用されない空間をできるだけ小さくするために、子ども部屋などは、あらかじめ最小限にとどめておくのもいいと思います。
ある住宅では、子ども部屋には壁やドアもなく、収納で廊下と仕切られているだけでした。ベッドと収納で、一人になれる小さな空間は確保されていましたが、勉強は2階のホールに造り付けられた家族共有の大きな机でするのだそうです。4人家族の家としてはコンパクトですが、大きな吹抜けがあり、明るくのびのびとした空間が印象に残っています。限られた空間でも、大胆な発想やメリハリのある設計により、心地よい豊かな空間はつくれるものなのです。
吹抜けを設けるなど、広い場所と狭い場所にメリハリをつけた設計をすれば、小さい家でも豊かさを感じられるのではないでしょうか
私がすすめるのは小さいけれど、豊かさを感じる家です。
同じ面積でも広く感じる家のポイントについては、『狭い部屋を実際の面積より広く見せる7つの工夫!』で解説しています。
小さい家には意外にメリットが多いということを理解していただけたでしょうか。小さくても豊かな家で、長く快適に暮らしてほしいと思います。
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