バリアフリー仕様といったとき、最初にどんなことを思い浮べますか? 手すりの設置や段差をイメージする人が多いとは思いますが、本当に必要なことはそれだけではありません。今回は、後から困らないためにも建築当初から考えておきたいバリアフリーのポイントについて説明していきます。
高齢者にとって意外に危ない家の中
高齢者でなくても、階段には手すりがあるといいですね。また、フラットな踊り場のある階段のほうが転倒しても途中で身体がひっかり、安心感があります |
意外に多いのはリビングなどで転倒するケース! 家の事故 普通の部屋が危ない!でも触れたように、本来安全であるはずの家の中は、高齢者にとってはケガをする危険の多い場所でもあります。ケガを未然に防ぐためにも、バリアフリー仕様は必要です。しかし、家を建てる人の多くが20代、30代と若く、建築時点では、手すりの必要性も、段差がある不便さも、あまり強く実感していない世代といえます。ということは、将来、必要になったときの対応を考えておけばいいということです。
使いやすい手すりとは?
手すりを設置する場合に気をつけたいのは、手すりの形状と、設置場所の2点です。
廊下や階段の手すりは、一般的に体を支えることができるように直径32~36mmがよいとされています。とはいっても、手や指がうまく使えない場合は、ひじをのせて使うケースも考えられます。一方、トイレや浴室などは、廊下より小さめの直径の手すりにして、握りやすいタイプを選ぶとよいでしょう。素材も、握ったときに冷たくない材質のものがおすすめです。
廊下に設置する手すりは、床から75cmが標準的な高さとされています。ただ、主に利用する人がはっきりしているのであれば、その人の身体の状態や体格に合わせて、適切な位置に取り付けます。また、寝室からトイレまでなど、よく利用する動線上は手すりが途切れることのないように設置するのが原則です。
階段や浴室などは、高齢者でなくても、いざというときにつかまることで転倒を防ぐことができるので、設置してあれば安心でしょう。
玄関には手すりを設置しなくても、収納の上に手を置けるようにしておくだけで、当分の間は十分ではないでしょうか |
段差はあらかじめなくす方向で
日本の住宅の中には、段差がとても多いので、段差解消もバリアフリーを考えるうえでは、はずせない要素です。段差の解消方法は、それぞれの場所で違ってきます。
道路から玄関までや、屋外と掃き出し窓との段差は、できるだけスロープなどで解消するのが基本です。室内では、和室と洋室との段差があげられます。大抵は畳の分だけ数cm高くなっていますが、最近では、施工前に和室の床レベルを下げて、廊下や洋室との段差をほとんどなくした家も多くなっています。
また、引き戸の多い日本の住宅では、敷居も段差のひとつになります。既存の敷居には、すりつけと呼ばれる部材を取り付けて、段差を解消する方法がありますが、最近の住宅では、吊り戸を利用したり、レール部分を床に埋め込むなどの方法で解消していることが多いようです。
次のページでは、家の建築時から考えておかないと後で対応するのが難しいポイントについて説明しましょう。