長期優良住宅/長く暮らせる家

災害に負けずに暮らせる家の標準装備(2ページ目)

阪神・淡路大震災が発生してから今年で14年。そこで今回は、地震をはじめとした災害に強い家には、どんな装備が必要なのかを考えてみました。被災後も安心して暮らせる家とはどんな家なのでしょうか?

大塚 有美

執筆者:大塚 有美

長く暮らせる家づくりガイド

水とエネルギーの確保から設備を考える

最近の住宅では標準装備されるようになった吊り戸棚の耐震ラッチ。災害に備えるには細かな配慮が肝心です
災害にあった後の暮らしを考えると、ライフラインの確保は重要です。前ページに登場したNさんも「飲み水と食べるものを用意しておくことが大事。ライフラインの復旧には、早くても2日。場所や状況によっては1カ月以上かかることもあるので、その間の生活を考えておくことがポイント」とおっしゃっています。つまり、生活用の水とエネルギーを確保することが大切なのです。

住宅のライフラインといった場合、ガス、水道、電気を指しますが、Nさんの経験では、復旧が一番早かったのは電気、ついで水道、一番遅かったのがガスだったそうです。これは阪神・淡路大震災時、西宮市のNさんのお宅での順位なので、すべての地域でこうなるとはいえませんが、他の震災被害の時でもおおむねこのような順位のようです。このことから「災害に強い家」の設備を考えると、復旧の早い電気をメインに据えて設備を考えると良さそうです。

例えば、エコキュートを採用したオール電化住宅なら、電気が復旧したと同時にIHクッキングヒーターをはじめとした調理器具が利用できます。また、エコキュートの貯湯タンクは非常用水としても使えます。370リットルタンクの場合、家族4人の3日分の生活用水の備えになるという試算もされているようです。ただ機種によっては貯湯タンクに非常用取水栓がついていないものやオプション対応のものもあるようなので、注意が必要です。

さらに、太陽光発電装置が採用されている住宅なら申し分ありません。停電になっても太陽光が当たっていればある程度の電力が利用できる太陽光発電装置は、災害時に必須の設備といえるかもしれません。ただ夜間に発電できない点や発電電力が天候に左右されることから、家庭で使用する家電全てを平常時のように使うことは難しいでしょう。また発電装置自体が災害により破壊されてしまう可能性もないわけではありません。それでも被災時にある程度の電力が使用できることは、大きなメリットのはずです。

エネルギーと並んで重要なのが生活用水。飲料水は日頃から確保しておくとしても、その他に、洗濯やトイレなどには水が必要です。この場合有効なのは、前述のエコキュートや電気温水器のタンクに貯めてある水や、風呂の浴槽の水など。災害時を考えると、できるだけ容量の大きなタンクや浴槽を選びたいものです。トイレもタンク付きがよいかもしれません。たった一回分でも、水が蓄えてあるからです。ただ、設備選びは、災害時のことだけを考えて選ぶわけにはいかないものですが…。

最近では、災害時のことを考えられた設備も多様になってきたようです。キッチンの吊り戸棚の耐震ラッチは当たり前になり、引き出しにロックの付いたキッチンもあります。そのほかにも、耐震性をうたったシステムバスも登場。水に強い素材を使い、床上浸水などで水没しても水洗いすることができるキッチンや洗面化粧台などもみられます。設備選びの際は、これらのものを検討することも良いことでしょう。

もちろん、災害に備えるには住宅性能や設備だけでは不十分です。食料や水の確保、家具の転倒防止、ガラスの飛散防止など、自力でできることはしっかり対策しておきましょう。
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