わがままを言い続けて失ったもの
失ったものは、取り戻せません |
ところが、その後です。このBさんのことをやや忘れかけた頃……、「Bさんのお部屋がやっと埋まったそうだよ」、ひょんなところから、私の耳に噂が届いたのです。
「ああ、良かったな」。ホッとし、どんな方が入居されたんですか? と、聞いてみると、「一流企業勤めの方ではないそうだ。家賃も1万円下げたそうだよ」。ついに、Bさんは入居条件を緩め、しかも同時に賃料まで下げたらしいのです。誰かのアドバイスを聞き入れたのか、自ら考え方を変えたのかは定かではありません。
さて、ここでちょっと考えてみましょう。
Bさんのお部屋、さかのぼって数えると、空室だった期間はなんと、2年間=24ヶ月に及んでいました。当初の募集賃料は11万円でした。しかし、申し込みは入らず、前出の不動産会社さんがリフォームと入居条件の緩和、および賃料の値下げを助言したのは、空室となって8ヶ月目です。同じ頃、申し込みが1件入ったのですが、例の「一流企業勤めでなければ」等の条件によって、契約は成立しませんでした。
もしもこの時、Bさんが賃料と入居条件で「英断」を下していたならば、
(家賃0円×8ヶ月)+(家賃10万×16ヶ月)=現時点で160万円の収入
となっていたわけです。
しかし結果はどうでしょう。賃料維持と厳しい入居条件に徹底してこだわり続けた結果、当初に値下げしていれば入ったはずの、10万円×24ヶ月=240万円もの収入が、この間、全くのゼロ、となってしまったのです。
更に、Bさんが聡明な人ならば、8ヶ月目の時点で、リフォームを決断したかもしれませんね。これに60万円がかかったとしましょう。しかし、リフォームによって物件の価値が高まり、賃料を下げる必要が無くなった可能性がありますから、そのように仮定して計算してみると……、
(家賃0円×8ヶ月)+(家賃11万×16ヶ月)=176万円
176万円-リフォーム代60万円=116万円の収入
このような計算も成り立つことになります。116万円の収入が手元に残り、なおかつ、部屋はリフォームによって資産価値を増したのです。しかし、目先のお金を出し渋り続けたBさんの元に残った答えは、
- 過去2年間の(この部屋からの)収入=ゼロ
- ますます老朽化し、価値の下がった建物
次は「丸投げ大家さん」の悲惨なお部屋をご紹介します。