間違いだらけのキッチン選び!
Vol.1 システムキッチンって何?
もうひとつ、気になる出来事がありました。
先日、国産有名家具メーカーの会長とお話をする機会がありましたが、その時にケルンで毎冬開催される「国際家具見本市」の中で、imm cuisinaleと呼ぶキッチン家具の展示会が隔年開催され、世界のキッチントレンドのリード役を担ってきたのですが、この10年ばかりの間にその役割をミラノサローネで隔年開催されるeuro cucinaにお株を奪われてしまった。
その理由として、”ケルンの国際家具見本市に家電屋が出展するようになって、キッチン家具見本市の優位性が無くなってしまった。キッチン家具は家電屋と一緒に出しちゃダメなんだ”と仰ったことでした。
この言葉には多いに驚かされました。 そもそも、「システムキッチン」というドイツを生まれ故郷とするシステムは、「キッチン家具」と「キッチン機器」とが同じ寸法ルール(モデュールと呼びます)に基づいて作られています。
例えば60センチ巾の引出し付きキャビネットと電気レンジやガスレンジ、食器洗い機や冷蔵庫、洗濯機などは、すべて同じ寸法ルールで作られています。 その結果、キッチンのプランニング段階で好きな場所に好きな機能を持ったキャビネットを組合わせることも、機器を組込むことも自由にできるシステムで作られている訳です。
この考え方で作られているためにキッチン設計に自由度を与え、ユーザーニーズに合わせたキッチンを作り上げることができる訳です。もちろんキッチン機器同士も同じルールで作られているので、経年変化を過ぎて違うメーカーの電気レンジとガスレンジを入れ替えることも可能となります。 原則として「キッチン機器」はこのように「オープン部材」として専業メーカーで作られています。
ミラノで開かれるSALONE(国際家具見本市)で隔年開催されるEuroCucinaでも主役はキッチン家具メーカーですが、併催されるFTK(Technology For the Kitchen)会場には著名なキッチンビルトイン機器メーカーが勢揃いするのです。
現在日本に輸入されているビルトインキッチン機器の「Miele」「AEG」「Gaggenau」「ASKO」「Viking」などの製品はすべてオープン部材です。 皆さんがご存知の、「Poggenpohl」「SieMatic」「ALNO」「Zeyko」などは、すべてキッチン家具のメーカーであってキッチン機器を作っている訳ではありません。
この点が日本のキッチンと大きく違っている点で、日本のキッチン専業メーカーである「クリナップ」「サンウェーブ」「タカラ」「パナソニック電工」などの簡易型とも呼ばれるシステムキッチンと、「キッチンハウス」や「モーリショップ」の部材型システムキッチンとは大きく違っています。
ブロックキッチンと呼ぶ方が理解しやすいキッチン専業メーカーの簡易型システムキッチンは、組込まれる機器もすべて「クローズド部材」として提供していますから、オープン部材の組込みや、違うシステムキッチンへの機器の互換性は原則としてありません。
この20年くらいの間に、日本のシステムキッチンメーカーが、クローズドシステムにこだわり、閉鎖的になってきていることはとても気になることです。
1973年:NISSOオーダーメード・アイランドキッチン
その一方、この10年位の間に、日本市場で「オーダーキッチン」が人気を博するようになってきました。
オーダーキッチンメーカーは、首都圏だけでなく日本各地にも数多くあります。リンク集の中から自分好みのメーカーを見つけて、キッチンづくりに役立ててください。
オーダーキッチンに人気の集まる大きな理由は国産で自分の思い通りのキッチンを作りたいというニーズが高まってきたからです。本来なら「部材型システムキッチン」でデザインできるキッチンが、できるだけ大きなキャビネットやカウンターの塊で作ることによってコストダウンが可能となるため、人気がある点も見逃せないことです。
このように見てくると、システムキッチンという言葉の意味にこだわって細かく解き明かすことの意味が薄れてしまいますし、一方では現在市場に存在するすべてのキッチンシステムを「システムキッチン」と呼んでも構わないということもできます。
本来のキッチンの役割である調理作業も大きく変化してきました。また調理と食事という密接な関連空間のあり方にも変化が出てきました。そこには子供達の成長にあわせて新しい家族像を模索するコミニュケーションのあり方にも大きな変化を与え続けています。
これからのキッチンのあるべき姿は?
これからも、新しい時代の食生活と、家族のコミュニケーションというふたつの課題にどのように取り組んでいくべきか、キッチンデザインや設計、施工を担当する方ばかりでなく様々な段階でキッチンに関わる皆様と、どんなキッチンを作り上げるのが最適なのか悩んでおられる皆様にとっても役立つお話を続けたいと思います。