キッチン/キッチン選びの基礎知識

間違いだらけのキッチン選び

キッチンに関する間違いを解き明かし、キッチンを選ぶのに役立つお話を連載します。その1回目は「システムキッチンって何?」

執筆者:黒田 秀雄

間違いだらけのキッチン選び!
Vol.1 システムキッチンって何?

この2月でAllAboutがスタートして丁度10年目に入りました。
スタート当初からキッチンガイドを担当させていただき、これまでに420本!もの記事を書き続けてくることができたことに、改めて厚く御礼申し上げます。


AllAboutスタート時2001年2月15日にアップした最初のキッチン記事3本は次のタイトルでした。
◆「キッチンから出る生ゴミを考える
◆「成功するリフォームのコツ
◆「キッチンづくりの基礎知識-1 新時代のキッチン・ダイニング考


この10年間、キッチンに関わる情報提供をこまめに続けてきたつもりでしたが、最近になって気になるふたつのことがありました。
正確で分かりやすい記事とするために、もう一度原点に立ち返って「キッチンとは何なのか?」から始まる役立つお話を毎月1~2本程度執筆予定しています。
ご期待ください!


最近気になったふたつの出来事のひとつ目は、高名な女性エッセイストの方が昨年末出版された著作の中でこう述べておられることでした。
「昭和39年、東京オリンピックの年。引っ越した新築の家の台所には、ぴかぴかのシステムキッチンが燦然と輝いていたっけ・・・」というくだりです。

確かにそのころまで日本の台所は、ほとんどがテラゾーと呼ぶコンクリートを固めた「研出し流し台」か、ブリキ板を折り曲げて作った「板金流し台」が主流で、プレス加工をしたステンレスのキッチンセットは普及をはじめたばかりの頃でしたから、ぴかぴかに輝いていたのは良く理解できますが、残念ながらシステムキッチンという呼び方は当時ありませんでした。 昭和40年代から今までに黒田が手がけてきたキッチンデザインの事例を取りあげながらキッチンの変化をご案内していきます。 


1967年:日立化成キッチンセットP型(トップユニットとベースユニットの組合わせでキッチンを構成する)

システムキッチンという言葉が当たり前のように使われるようになったことはとても嬉しいことですが、この著者が使われているように本当の意味が理解されないまま一人歩きをしてしまったことへの反省と、分かりやすい説明ができていないことから、もう一度システムキッチンとはどういうものなのかお話ししたいと思います。  


 1969年:松下電器K型キッチンセット(様々なビルトイン機器の開発を同時におこなったシステム)



システムキッチンという言葉が日本で最初に登場したのは昭和48年のことです。
当時、飯田橋にクリナップのショールームがあり、そこに試作展示されたドイツ風キッチンにつけられた名前が「システムキッチン」と言う名称でした。


1973年:クリナップからの依頼で設計施工した日本で最初のシステムキッチン現場

実際に日本のキッチン市場にシステムキッチンと言う言葉が普及しはじめたのは、昭和50年代に入ってからのことです。
昭和40年代後半から50年代前半にかけて、ドイツのEINBAU KUCHE(ビルトインキッチン)が数多く日本市場に参入しはじめました。
Tielsa(鴎外交易)、SieMatic(喜久屋)、Poggenpohl(大沢商会)、ALNO(キッチンハウス)、LEICHT(モンテ)などのドイツメーカーが代表的でした。(括弧内は当時の輸入販売会社)
国内メーカーでこの市場に名乗りを上げたのは、フランスベッド、伊奈製陶、岡村製作所、モーリショップ、ヤマハなど、それまでキッチンとは縁のなかった業界からの参入でした。

それまで日本のキッチン専業メーカーが製造販売してきた「キッチンセット」と呼ばれる製品は、工場で完成品が作られ現場では開梱して設置するだけで工事が完了するという、建築現場では「雑工事」に区分される商品でした。
ところが、システムキッチンと呼ばれる商品は、キッチン空間全体をユーザーニーズに合わせて設計プランニングを終えてから部材発注をし、現場で部材を組み合わせて取付施工をおこなって初めてキッチンが仕上がります。

キッチンメーカーが作るのはキッチンを構成する部材群であって、現場ごとに最適なキッチンプランを提案し、最高の施工技術を駆使して現場で組み立てて完成する訳です。 未だにキッチン工事を「雑工事」に区分する建築図面や現場が多いのですが、実質的にはキッチン工事は「内装工事」の主要な部分となっています。
このようにして、システムキッチンが普及した背景には、「流し台」や「キッチンセット」と言う単一商品でなく、暮らし方を具現するキッチン空間全体をとらえる考え方に、ユーザーの賛同を得ることができたからに他ありません。 このような「部材型システムキッチン」と比べると、国産システムキッチンメーカーに見られるように、ある一定の間口寸法に決められた組合わせの塊をさしてシステムキッチンと呼ぶのは「ブロックキッチン」と呼ぶほうが、正確に意味が伝えられると思います。


キッチンガイド記事で2001年6月13日には「システムキッチンって何なの」と題した記事をアップしました。


(C)Feb.2010 Copyright HIDEWO KURODA KITCHEN SYSTEM LABO.INC.
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