長期優良住宅/長く暮らせる家

年収800万なら長期優良でいくらトクする?

今年6月にスタートした長期優良住宅。様々なメリットがあるにもかかわらず、まだ消費者には行き届いていない模様。「一体いくらトクになるの?」という疑問にズバリ、「数字」で試算例を一挙ご紹介!

河名 紀子

執筆者:河名 紀子

家づくりトレンド情報ガイド

8月末までの長期優良住宅は戸建て1万戸超

冊子
住宅生産団体連合会が発行・販売している長期優良住宅の冊子
このほど国土交通省から発表された速報によると、8月末までに認定された戸数は、一戸建11,359戸、共同住宅等221戸と圧倒的に一戸建に軍配。これは、複数家族の合意を得なければならないマンションなど集合住宅よりも、一戸建のほうが劣化対策や維持管理計画など単体家族で決められることも背景にあると思われます。2002年にスタートした住宅性能表示制度の利用状況よりも格段に立ちあがりが早い模様で、それだけ住宅会社のPRとともに、用意されている特典の大きさがうかがい知れる数字でもあります。

ただ、ガイドも長期優良住宅についての講演や執筆を各方面で行っていますが、ユーザーの様子を見ると、長期優良住宅の特典どころか、その法律さえもほとんど認知されていないような気がします。そして講演でも法律の経緯や認定基準の背景・内容の話よりも、断然関心を持って聞いてくれるのが「いくらトクになるか」というマネーの話。

講演風景
ガイドが講演した長期優良住宅セミナーでも、ユーザーの法律の認知度はきわめて低い
特に経済厳しい折。当前と言えば当然ですが、「住宅ローン減税の最大控除額が500万円のところ、長期優良住宅なら600万円にアップ」ということはマスコミの報道で知っていても、この100万円の違いが自分のケースでどのくらい違ってくるのかはあまり実感が湧かないよう。そこで、長期優良住宅の普及を進めている(社)住宅生産団体連合会の資料をもとに、いくつか試算例をご紹介したいと思います。

200年のトータルコストで日本人の負担は2/3に削減

個々の試算例に入る前に、まずは社会全体で長期優良住宅が増えることでどのくらいのメリットがあるか、こちらも数字でご紹介しましょう。住宅が建てられて壊されるまでの年数を「築後年数」と言いますが、アメリカの55年、イギリス77年に比べ、日本の家は30年で壊されています。そして住宅市場における既存住宅流通シェアは、アメリカ77.6%、イギリス88.8%に比べ日本は13.1%という数字もご存じの方は多いと思います。

パリ
ヨーロッパでは親から受け継いだ住宅があるため、ローンに追われることなく長期バカンスやライフリッチな生活が送れる
この20~30年で建て壊されている家が200年サイクルになれば、長くもたせるための当初のコストは多少増えても、建て替えや維持管理コストも軽減され、200年間の住宅建設・取得・維持管理費用は従来の2/3に軽減されるという試算が。私たちの世代が頑張って長期優良住宅を建ててあげれば、子供や孫の世代は私たちのようなコストがいらないので、欧米のような豊かなライフリッチな生活が送れるということなんですね。

ヨーロッパや北欧の人々はバカンスで3カ月くらい働かなくても豊かに暮らせていますが、それが可能になるのは、親や祖父母から譲り受けた家に住んでいるからで、住宅ローンや家賃が全くいらないから。世界で一番住居費のお荷物を背負って日々キリギリスのように働いているのが私たち日本人なのです。

廃材イメージ
日本の住宅が200年解体されなければ、年間1300万トンの建設廃棄物を削減できる
またエコの面でも、家が200年サイクルになれば、計算上は6~7戸建て壊されていた住宅が1戸で済むことになります。住宅関連廃棄物は全産業廃棄物の4.1%を占めていますが、30年サイクルの建て替えが60年・90年・120年に伸びることで当然ながら廃棄物の総量も1/2・1/3・1/4に減り、国の推計では、すべての住宅が200年解体されなければ、年間約1300万トンの廃棄物を削減できると試算しています。

では次ページから個々の試算例に移っていきましょう。
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