住まいの印象を左右する玄関扉
住まいの印象を決める玄関まわり。スペースのプランニングはもとより、アイテムや素材の選び方によって、外観のイメージも大きく変わるものです。そのポイントのひとつとなるのが玄関扉でしょう。玄関扉を選ぶ際には、敷地条件や周辺環境、門扉や前面道路からのアプローチや間取りプラン、使い勝手やデザイン性などさまざまな面から検討することが大切です。もちろん、断熱性や防犯性などにも充分に配慮する必要があるでしょう。
荷物の出し入れも余裕の有効開口サイズ、カードやリモコンでカギを開閉できるキーシステムを標準装備、ドアの閉まる速度を調節できるドアクローザーなども。 [高断熱玄関ドア イノベスト D50 親子 106 BE:マキアートパイン Newポケットkey] YKK AP
開閉スタイルには、開き戸(ドア)と引き戸。いずれも豊富な商品が揃う
玄関扉は開閉のスタイルによって、開き戸(ドア)と引き戸に分類することができます。開き戸は洋風、引き戸は和風、というイメージを持つ方も多いかもしれませんが、最近では、日本人にとっては身近な引き戸のスタイルも見直され、商品バリエーションも豊富になってきています。スライディングドアやスライドドアなどと呼ばれるケースもあり、洋風和風を問わず用いることができるデザインが多くみられるようになりました。いずれのタイプも、外観デザインやプランニング、予算などに合わせて、多くの商品の中から自由に選ぶことができるでしょう。
開き戸(ドア) 多く用いられている片開き戸
開き戸(ドア)タイプの中にもいくつかの種類がありますが、新築やリフォームで多く取り入れられているのは片開き戸でしょう。シンプルな外観デザインにポイントとしてコーディネートしても。住まいの省エネルギ―性能に合わせて2つの断熱仕様が揃う。[ジエスタ2 S14型 シャンパンレッド] LIXIL
一般に多くみることのできる、オーソドックスな1枚のドアスタイル。採光を確保するためスリットや小窓を設けたデザイン、通風が可能なタイプなどもみられます。
■袖付き開き戸
片開き戸に袖が組み合わされたもの。袖が片側にあるタイプだけでなく、両サイドにあるタイプもあります。袖にガラスを用いたデザインであれば、玄関内部に光りを取り入れることができ開放的に。袖部分にポストを設けることができるタイプもあります。
■親子ドア
片開き戸(親扉)と必要に応じて開閉できる袖部分(子扉)が組み合わされたタイプ。親扉と子扉の両方が開くので、広い開口部が確保でき、引越時など大きな荷物のある場合は便利でしょう。
■両開き戸(ドア)
2枚の片開き戸が開閉するタイプ。グレード感のある玄関になりますが、開閉には面積が必要なため、広い玄関スペースが必要です。
引き戸 狭くても広い開口部を確保
引き戸は、扉を横にスライドさせるため、限られたスペースでも、広い開口部を得られること、開け放しておいても扉が邪魔にならないこと、などが大きな特徴。前後に扉を開閉させるスペースが必要ないので、狭小敷地であったり、玄関前がすぐに門扉や道路という場合でも取り入れやすいスタイルです。スペースの限られる狭小の防火地域に適する玄関引戸。引戸用「スマートコントロールキー」も標準搭載。[玄関引戸 防火ドアGシリーズ コンコード YF キャラメルチーク] YKK AP
2枚の引き戸を左右にどちらでも、移動させ開閉することができる扉スタイルです。
■片引き扉
1枚の戸を左右どちらかを滑らせて開閉する扉。玄関内に引き込む「内引き込みタイプ」と外壁側へ引き込む「外引き込みタイプ」、片袖部分にガラスなどを組み合わせた「袖付タイプ」もあります。
■2枚(3枚)片引き扉
複数枚の戸が連動して開閉することで、広めの開口部を確保できるスタイル。ベビーカーや車椅子でも利用しやすいでしょう。
■両引込み扉
左右の壁側に引き込んでしまうタイプ。広い開口部を得ることできるスタイルです。
素材は金属製が主流。風合いが魅力の木製も
玄関扉の構成は、扉本体と枠(外枠)、取っ手(把手)やクローザー、蝶番(ちょうつがい)、鍵(キーシステム)など。オリジナルで製作する場合はそれぞれ部材等を選ぶ必要がありますが、メーカー商品の場合、基本的にはこれらが組み合わされ、扉デザイン、取っ手や鍵など、好みや予算に合わせて選んでいくことになるでしょう。扉本体の主な素材は、金属製(鋼板、アルミ形材、ステンレスなど)や木製(米松、ナラ、チークなど)。コア材に断熱材などをはさんだ多層構造になっているものが多くみられます。金属製は、耐久性・耐候性に優れ、デザインも豊富。木製のような風合いを持つタイプなども揃っています。メンテナンスが楽なのも特徴でしょう。木製はその素材感、インテリアとの調和のしやすさなどが魅力。メンテナンスの手間がかかることは否めませんが、根強い人気があります。国産だけでなく 輸入品にも多くみられるタイプです。
取っ手(把手)は、開閉動作が楽に行えるレバーハンドルやバーハンドルが主流。シンプルな直線的なデザインはもちろん、曲線を用いたエレガントな雰囲気のものなどさまざまなタイプが揃っています。ハンドル部分にキーシステムを組み込んだデザインも多くみられます。
断熱性能を高めたタイプも充実
優れた断熱性能を発揮する70mm厚の断熱パネルを使用し、熱の出入口になりやすい採光部は高断熱のトリプルガラス。[高断熱玄関ドア イノベスト D50] YKK AP
断熱扉は、扉本体内部にウレタンなどの断熱材を充填したり、枠に断熱樹脂や気密材を用いるなどして、冷気や暖気の侵入や流出を抑える工夫を施したもの。一般的な扉よりも厚みがあり、扉に小窓などを設けたデザインの場合は、複層ガラスや高断熱複層ガラスなどを用いて断熱・気密効果を高め、熱の伝わりを抑えています。それぞれの扉の構造によって断熱性能は異なるので、地域条件に応じた断熱仕様の扉を選ぶことが基本です。また、断熱・気密性能とともに、遮音・防音性能が優れているのも特徴のひとつでしょう。
防火戸の商品バリエーションも豊富に
建築基準法では都市部や密集地など、防火・準防火地域を指定し、延焼の恐れのある開口部には防火戸の使用を義務付けています。メーカー商品にも適するタイプのラインナップが揃ってきており、開き戸だけでなく引き戸タイプもみられます。家を建てる敷地条件を確認した上で、基準にあった商品から選ぶことが基本なのは言うまでもありません。シンプルでナチュラルなデザインが主流。光や風を取り込むことも
最近のメーカー商品の傾向は、すっきりとした、シンプルなデザイン。素材感や風合いに工夫を施した木目調など、ナチュラルな雰囲気を感じるタイプも増えてきています。特に最近では、リアルな木目を再現した商品も多くみられるようになりました。外観デザインに馴染むような色合い、アイアンのオーナメントやタイルなどを組み込んだ優しいデザイン、スリットや小窓などを配して採光が可能なタイプなども。また、スリット部分などに窓を内蔵し、玄関扉を閉じたままでも通風・換気が可能なタイプもみられます。キーシステムも多様に。リモコンやカードでも施解錠できるタイプも
リモコンやカードでラクにカギを開閉できるエントリーシステム。子どもにもお年寄りにも使いやすい。 [ジエスタ2 カードキー クリエモカ] LIXIL
住宅の玄関ドアで用いられる「鍵」は、シリンダーキーと呼ばれるものが多くみられ、ピッキング(鍵穴に針金のような特殊な工具などを差し込んで不正解錠すること)を防ぐためツーロックが一般的でしょう。
また、最近では、手動のシリンダー錠だけでなく、電動で施解錠するシステムが搭載されている商品も増えてきており、オプションだけでなく、標準仕様の設定もみられるようになりました。電動で施解錠できるシステムには、電池錠と電気錠(配線式・100V式)があり、電池錠は電気の配線工事が必要なく設置でき、電気錠は、電気配線を行い通電させて作動するものです。
電池錠には、ボタンを押してICカードなどをかざすだけで施解錠できるもの、ICチップが埋め込まれたシール、携帯電話や電子マネー対応カードで操作できるタイプも。また、リモコンキーを身につけ、ドアのボタンを押すと解錠することができるものなどがあります。電気錠は、カードやリモコンキー、ボタンなどだけでなく、リモコンキーを身につけ近づくだけで施解錠が可能なタイプも。ドアホンと接続して操作ができるものや室内のコントローラーやリモコンで施解錠するタイプもあります。
商品によっては、電池錠や電気錠の設定のないケースもありますし、取り入れる場合にプラスされる費用はシステムによって異なります。選ぶ際には、わが家にとって、必要な機能の優先順位を明確にすることが大切です。
一日で新しい扉に交換可能なリフォーム商品も
既存の枠の上に新しいドアを枠ごと取り付けるため1日で完成し、壁や床などを傷める心配もない。 [リシェント玄関ドア3] LIXIL
商品によっては、1日の工事で取り換えができる商品も。既存の壁を壊すことなく、既存の扉枠の上に、新しい枠と扉を取り付けることで、工期も短くて済むものです。工事中に気を使うこともなく、防犯面の不安ないのがメリットでしょう。
開き戸だけでなく引き戸タイプも揃っていますし、スペースなどの条件にもよりますが、開き戸を引き戸に変更することも可能な商品もみられます。
性能、機能、デザイン性などを考慮して選ぶ。ショールームで確認を
性能が高まり、色やデザインのバリエーションも豊富になってきた玄関扉。選ぶ際には、玄関のプランニングはもちろん、外観デザインや門扉・フェンスなどとのコーディネートを考慮することが大切です。カタログだけでなく、ショールームで実際に色味や素材感を確認すること。シミュレーションなどでイメージを確認することができるケースもあるので、積極的に利用するといいでしょう。また、玄関扉は意外に重さのあるもの。幼いお子さんや高齢の方がいらっしゃる場合は、開閉が楽に行えるか、買い物の荷物を持ったまま開閉できるかなど、日々の動きを思い出しながら、実際にショールームでは動かして確認を。幼いお子さんがいる場合には、手や指を挟みにくいような工夫がされているかどうかなども気をつけたいポイントでしょう。キーシステムなども実際に操作してみることをお勧めします。
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