インテリアのイメージや心地よさを左右する床材
新築やリフォームの際に、多くの方がこだわり、悩むアイテムのひとつが床材ではないでしょうか。空間の中でも広い面積を占める床材は、インテリアのイメージを左右する大切な素材であるとともに、素足で歩いたり、直接座ったりと肌が触れることも多く、心地よさにも大きく影響するものです。ちなみに「床材」の読み方に迷われる方も多いようですが、建築用語ではシンプルに「ゆかざい」と読みます。また、素材の選び方によっては、日々のお手入れやメンテナンスのしやすさなども異なります。もちろん、素材や商品によって価格は大きく変わるので、床材に求めるインテリア性や機能性など、優先順位を明確にして選ぶことが大切でしょう。
無垢材を厚さ2mmに挽いた「挽き板」を表面材に使用。目地を面取りし丸みをつけることで、無垢らしい厚みと立体感を得られる。[真銘木フローリング145mm幅 施工例] パナソニック エコソリューションズ
取り入れる空間の使い方、暮らし方などに配慮して選ぶ
床材選びの基本は、空間の使い方や暮らし方に合わせて検討すること。たとえば、リビングであればインテリア性や快適さを、キッチンや洗面室なら耐水性やメンテナンス性を、子供室の場合は耐汚性など、取り入れる空間に必要な性能の優先順位を明確にして選択することが大切です。また、床暖房を設置したり、室内で犬や猫を飼うのであれば、それぞれ適した素材を選ぶ必要もあるでしょう。住宅に用いられる床材は多種多様。主な素材の種類は?
一般的な住宅の居室に使われる床材は、木質フローリングやコルク、カーペット、クッションフロア、タイルなど多種多様。各メーカーからは、豊富な商品バリエーションが揃っているので、予算や好みに合わせて自由に選ぶことができるでしょう。表面材に国産材厚単板を採用。傷や汚れにも強く、無垢が持つ風合いを再現。[日本の樹 至高〈杉(木肌)〉] DAIKEN
木質フローリングは大きく無垢材と複合フローリングに
住宅の床材の主流は木質フローリング。木質フローリングは、大きく無垢材(単層フローリング)と複合(複層)フローリングに分けられますが、一般的な住宅では、複合(複層)フローリングをプランニングするケースが多くみられます。
・無垢材(単層フローリング)
無垢材とは、切り出した天然木の一枚板を加工したもののこと。樹種によって異なりますが、一般的に、空気を多く含んでいるので保温性や断熱性が高いことが特徴。また、湿気の多い季節は余分な湿気を吸収し、乾燥しがちな季節は排出する調湿作用もあるので、夏は素足で歩いてもべとつかず、冬は静電気を抑えるのも魅力です。柔らかい樹種であれば弾力性もあるので、足腰への負担は少ないでしょう。
ただし、湿度の変化によって、膨張と収縮を繰り返すので、場合によっては、反りや割れなどが生じることも。最近では、耐久性や寸法安定性を高めるため、特殊な加熱処理を施した商品もみられますし、床暖房に適したタイプも揃っています。
樹種によって異なる木材表面の質感を、エンボス加工シートで表現した、樹脂シート仕上げの床材。[ラシッサDフロアチークF] LIXIL
複合(複層)フローリングは、合板などの基材の表面に化粧材を張り合わせたもの。用いる化粧材によって、突板タイプと化粧シートタイプに分類することができます。
突板タイプは、薄く削った天然木の単板(突板)を用いたもの。張り合わせる天然木は、ナラやサクラ、カバ、ブナなどさまざまですが、単板の厚い方が、溝も深く木目が鮮やかです。商品によってはむく材のフローリングと区別のつかないものも。突板よりも厚みのある挽き板(ひきいた)を取り入れた商品もみられます。
化粧シートタイプは、樹脂やオレフィン、紙などのシートに、木目や石目、抽象的な柄などを印刷したもの(プリントシート、樹脂化粧シート、特殊加工化粧シートなど)を基材に張り合わせたもの。品質や仕上がりが均一で、施工性に優れていることなどが特徴です。メーカー独自の技術開発によって、突き板のタイプと見分けがつかないような商品も揃っています。
コルクは弾力性や吸音性などが高く、ナチュラルな風合いが特徴
あたたかくソフトな天然コルク素材は、あたたかで柔らかな歩行感が特徴。高齢者や小さなお子さんの部屋に。[コルクフロアー12] DAIKEN
無塗装のもの、ワックスやウレタン塗装仕上げなどもあり、性能はさまざま。ナチュラル色からダークな色合いまでカラーバリエーションも豊富です。表面仕上げによっては、水にも強いタイプもあり、キッチンや洗面室などにも使用することも。床暖房対応商品や防音性能を高めたタイプなどもみられます。
カーペットにはバリエーション豊かなデザイン、高い機能性を持つタイプも
複雑な糸使いと織設計にこだわり、空間の印象を高める多彩なデザインが揃う。[タイルカーペット アートバンク サキソニー] 川島織物セルコン
また、正方形につくられたタイルカーペットであれば、汚れた部分だけ取り換えることができるので、子供部屋やペットの居場所の床材としても取り入れやすいでしょう。
タイル材はキッチンやダイニングだけでなく、リビングなどに取り入れても
耐傷性、清掃性に優れたタイルを傷や汚れ、日光による色あせが気になる床に部分張りができる、リフォーム向けタイル。[アクセントタイルシート 床用] LIXIL
ビニル系床材は水まわりに適する素材。リフォームやDIYでも
ビニル系の床材にもいくつかの種類があります。リフォームなどで取り入れるケースが多いのがクッションフロアでしょう。・クッションフロア
CF(シート)と呼ばれることもある、塩化ビニルを用いた長尺(ロールシート状)の床材。耐水性に優れ、汚れも付きにくく落しやすい素材なので、水まわりに多く用いられています。
クッション材が裏打ちされているので適度な弾力性もあり、足腰が疲れにくいのが特徴。価格も手ごろで、施工が比較的簡単なので、リフォーム時はもちろんDIYで張り替えることも可能です。フローリングや大理石、タイルを模したものなどや防カビ加工を施したもの、抗菌や消臭機能を持つタイプもみられます。ただ、熱には弱く、足触りなどは好みが分かれるところでしょう。
洗練された意匠と多彩なサイズが特徴。フィルムならではの安定した色柄が揃う。[ビニル床タイル ベスタフロア ホワイトパイン] 川島織物セルコン
ビニル床タイルは、塩化ビニル樹脂などを用いて、タイル状に加工した床材。比較的堅く、耐久性や耐磨耗性、耐薬品性に優れているので洗面室やトイレなどにも適しています。色や柄のバリエーションも豊富なので、個性的な空間づくりが可能でしょう。
畳は畳縁のないタイプや手軽に取り入れることができる置畳なども
畳は、昔からある馴染みのある床材ですが、畳床が天然素材の稲わらを用いた本畳のほかに、畳床に天然木質繊維やポリスチレンフォーム板を用いたものなどもあります。最近では、畳表に和紙、麻や草木を用いた商品なども。カラーバリエーションも揃っているので、さまざまな使い方ができるでしょうまた、畳縁のないタイプや正方形のタイプ、移動が可能な置畳や箱畳のような商品もみられ、モダンな空間にもコーディネートすることが可能です。
和紙をつむいだ畳。置き敷きタイプと簡単に施工できる敷き込みタイプが揃う。 [ZIPANG ここち和座 置き敷きタイプ 清流(せいりゅう)〈01銀白色〉] DAIKEN
環境に優しい天然素材 竹・籐・サイザル麻・ココヤシ
竹、籐、サイザル麻やココヤシなど天然素材を用いた床材もあります。竹の繊維を組み合わせ、圧縮成形した床材が竹フローリング。強度があり、傷がつきにくく、収縮膨張も少ないことも特徴です。成長が早い竹を用いることで、環境にもやさしい素材と言えるでしょう。籐は、ロール状のタイプだけでなく、30~40センチ程度のタイル状になったタイプも。温泉などの脱衣室に用いられているケースもありますが、住宅でも洗面室やモダンな和空間などで用いる例がみられます。
サイザル麻やココヤシなどの天然繊維を織りあげたものは、ざっくりとした独特の風合いが魅力です。サイザル麻は、耐久性や断熱性、調湿性などに優れ、汚れや水に強い素材。ココヤシの繊維は、丈夫で水に強く、腐りにくく、カビも生えにくのが特徴です。湿気の多いサニタリーなど、水まわりに向いているでしょう。商品としては、タイル状となっており、色味や繊維の織り方によって、さまざまなタイプがあります。
ショールームで実物の確認を。色や素材感をチェックして
いずれの床材を選ぶ場合でも、実物をショールームで確認することは重要なポイント。広い面積に取り入れる素材なので、できる限り大きなサンプルで、色や柄、素材感や風合いなどの確認するようにしましょう。できれば、サンプルは床に置いてチェックすること。用いた時と同じ状態とすることで、光の具合による色味の違いや風合いなどを理解することができるでしょう。無垢と複合フローリングの素材感の違いなどは、サンプルをいくつか並べて比較を。実際に手を触れたり、実際に歩くなどして、検討すること。空間コーディネートに配慮して、壁材や天井材と一緒に検討することも大切なポイントです。
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