大地震で家が倒壊する危険性のある住宅の特徴とは
近年になり各地で大きな地震が続く中、改めて自宅の安全性を考えた人も多いと思います。今回は「地震に弱い戸建て住宅」の共通事項をピックアップしますので、戸建て住宅にお住まいの方はぜひ一度チェックしてみてください。ブロック塀の安全性が問われた大阪府北部地震
2018年6月18日7時58分に大阪府北部を震源に発生した最大震度6弱の地震では、震源に近い大阪府高槻市、茨木市を中心に住宅が被害を受け、その数は全壊9棟、半壊87棟、一部損壊約2万7千棟となっています(内閣府発表 災害情報 2018年7月5日現在)。新聞報道によると、被害にあった住宅は築年数の古い木造家屋が多く、屋根瓦の落下や土壁のヒビなどが報告されているそうです。
今回の地震では、戸建て住宅の外構でもよく使われる「ブロック塀」が崩落し、巻き込まれて2名の尊い命が失われました。このことから公共施設などではブロック塀の安全確認が進められています。戸建て住宅においても、持ち主が安全性の確認をしておきましょう。
阪神淡路大震災で被害にあった建物に共通すること
1995年の阪神・淡路大震災では高速道路や新幹線などとともに多くのオフィスビルやマンション、戸建て住宅が倒壊しました。この地震により全壊した建物棟数は約10万5千棟、半壊が約14万4千棟にのぼり、大きな被害が生じました。被害にあった建物は特に1981年以前に建てられた在来木造住宅に多かったと報告されています。原因は建物の老朽化と耐震性不足と考えられます。
キーワード1:1981年(昭和56年)以前に建てられた住宅
今現在建てられている建物の耐震基準は「新耐震基準」と呼ばれ、基本的に「きわめてまれに起こる大地震でも倒壊・崩壊しない」高い耐震性を持っています。この「新耐震基準」は昭和56年6月1日以降に建築確認申請を受けた建物から適用されています。その耐震性はどのくらいかというと、震度5強程度の地震に対してはほとんど損害を生じず、震度6強~震度7程度の極めて稀有な地震に対しても、人命に危害を及ぼすような倒壊などが起こらないこと、となっています。
1995年の阪神・淡路大震災で倒壊、大破などの大きな被害を受けた住宅のほとんどがこの新耐震基準の適用以前に建てられた建物(旧耐震)であったことから、この「1981年(昭和56年)」が耐震性を見極めるひとつの分岐点になると考えて良いでしょう。
キーワード2:屋根が重く、壁に筋交いが少ない
昭和50年代までに建てられた住宅の屋根は葺き土(ふきつち)のある瓦葺き(かわらぶき)が多く、かつ柱と柱の間に斜めにいれる筋交い(すじかい)という部材が入っていないケースが多く見られます。このように、「屋根が重い」「筋交いが少ない」「築年数が古い」建物の多くが地震の被害にあっています。キーワードは「屋根は何で造られていますか?筋交いは入っていますか?」です。
キーワード3:土台の蟻害、腐食
建物の土台部分が蟻の被害にあっていたり、雨水の浸入や換気不足で腐食していた場合、地震時に土台や梁の横架材と柱や筋交いの緊結部分がはずれ、倒壊するケースが多く見られました。また、新しい建物でも、施工不良や手抜き工事でそれらがしっかり緊結されていない場合も同じく危険です。
繰り返しになりますが、土台と柱、土台と基礎など、大切な構造体が専用の金物を使い「しっかり緊結されていること」は、家の倒壊を防ぐ上でとても重要なことです。ここでのキーワードは「土台と柱の接合はしっかりしていますか?」です。
キーワード4:基礎の強度不足
「建物を支える基礎の部分が何でできているか」は耐震性に大きく影響します。現在では、建物の基礎は鉄筋コンクリートでできた布基礎やべた基礎が主流ですが、コンクリートに鉄筋が入っていなかったり、古い建物に多く見られる石積み基礎、玉石基礎の場合は強度不足の可能性があり、要注意です。そのような建物では上部構造の筋交いが入っていないものも多く見られます。
基礎は建物全体の重さを支える大切な部分であり、地震に耐えるためには「鉄筋コンクリート」で出来ていることが基本です。もし無筋コンクリートの基礎であったとしても、すでにある基礎に沿わすように鉄筋コンクリートの布基礎を打設して一体化させるなどの補強方法もあります。
キーワードは「基礎部分は鉄筋コンクリートの布基礎かべた基礎でできていますか?」です。
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建物の基礎
キーワード5:壁の配置バランスが悪い
比較的新しい建物でも、最近のミニ開発による都市型住宅のように以下のような特徴を持つ住戸は要注意です。- 間口が狭く、その間口いっぱいに駐車場があり壁がないタイプの住宅
- 店舗兼住宅で道路側がほとんど開口部になっている住宅
耐震性という観点では、建物の外周にバランスよく壁が配置されていることが大切ですが、上記のように一部に極端に壁が少ないと全体のバランスが悪くなり、地震時の揺れに踏ん張りがききません。
また、住宅の角(四隅)には柱があること、そこにL字型に壁があると地震時の揺れに強い住宅になります。例えば住宅の角にコーナーサッシ(窓)を設け、柱を抜いているようなケースでは、壁の配置バランス的には不利です。ここでのキーワードは「壁の配置バランス」です。
今回は地震に弱い住宅の傾向をを5つの観点からまとめました。心当たりがあって不安な方は、一度耐震診断を受けることをお勧めします。その前に、ご自身で簡単に耐震診断できるサイトを利用してみてもいいでしょう(下記リンク先参照)。
簡易診断、相談窓口、支援制度など お役立ちリンク集
インターネットで自分でできる耐震診断はこちら■「誰でもできるわが家の耐震診断」(日本建築防災協会)
耐震診断、改修の相談窓口一覧表はこちら
■耐震診断・改修の相談窓口一覧(日本建築防災協会)
住宅の耐震診断、改修に対する支援制度を整備している自治体についてはこちら
■耐震診断・耐震改修支援事業一覧(日本建築防災協会)
マンションの耐震性などについての国土交通省のQ&Aはこちら
■マンションの耐震性などについてのQ&A(国土交通省)
【関連サイト】
一般財団法人 日本建築防災協会
安全なブロック塀とは(社団法人全国建築コンクリートブロック工業会)
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