マンション物件選びのポイント/マンションの性能・耐久性

短命マンションと長持ちマンションの違いはココにあり

これからはメンテナンス&リフォームで手を入れながら、同じ住まいに「長く住む」時代です。そこで今回は、長持ちするマンションとはどういったものかを主に構造面から探ります(改訂2017年3月、初出2007年8月)。

井上 恵子

執筆者:井上 恵子

住まいの性能・安全ガイド

価値ある長持ちマンションを購入しよう

子や孫に引き継ぐことができるマンションを選ぼう

子や孫に引き継ぐことができるマンションを選ぼう

マイホームの購入は大変高額な買い物です。ローンを組んで長い年月をかけて返済していくことを考えると、それ以上に長く住めることはもちろん、できたら子どもや孫に引き継ぐことができるような、価値のある家を手に入れたいものです。

例えば90年くらい家が長持ちするのなら、子どもや孫は家を購入する必要はなくなり、その分豊かな生活をすることができます。では長持ちするマンションは、そうでないマンションと比べてどこが違うのでしょうか。

マンションが長持ちするためには、柱、壁、天井、梁などの構造躯体に使用するコンクリートに強度があること、コンクリートの中にある鉄筋がしっかり保護されていることなどがポイントとなってきます。これから長持ちするマンションの条件について、主に構造面から探ってみましょう。

 

鉄筋コンクリートはなぜ強い?

鉄筋コンクリート造は、鉄筋+コンクリートの強力な組み合わせで成り立っている構造です

鉄筋コンクリート造は、鉄筋+コンクリートの強力な組み合わせで成り立っています

まずはじめに、鉄筋コンクリートはなぜ強いか簡単に説明します。鉄筋コンクリートとは、鉄筋とコンクリートが一体となった構造で、マンションで多く採用されています。

鉄筋の周りを覆うコンクリートは圧縮力に強く、引張り力に弱いという性質を持っており、反対に鉄筋は圧縮に弱く引張りには強いという性質を持っています。このように正反対の性質のものを組み合わせて一体化することで、圧縮にも引張りにも強い構造となるのです。コンクリートが回りを囲うことで、鉄筋がさびることを防ぐという役割も担います。

 

長持ちの区分:おおむね2世代、3世代長持ちする場合

長持ちするための目安を、おおむね2世代(50~60年程度)とおおむね3世代(75~90年)とに分けて考えます。おおむね3世代の長持ちマンションにするためには、その分厳しい条件をクリアしなければなりません。それではそれだけの耐用期間を得るための具体的な条件をみていきましょう。

 

水の割合の多いコンクリートは弱い

水の割合が多いと施工しやすいが、強度は落ちる

水の割合が多いと施工しやすいが、強度は落ちる

コンクリートはセメントと水をまぜてつくられます。ここで、セメントと水を混ぜる「割合」に着目します。セメントの重さに対する水の重さの割合を「水セメント比」と言い、水セメント比60%とはセメントに対し水が60%の割合で入っていることを示します。

水の量を増やせば練り混ぜやすく、型枠に打ち込みやすく、現場での施工がしやすくなります。また全体の材料費を抑えることができます。しかし、水の割合が多いコンクリートは強度が出ず長持ちしません。水の割合が少なければ少ないほどひび割れも少なく、強くなります。

実際には水の割合が極端に少ないと型枠の隅々までいきわたらないなど弊害が出てしまうので、一般的な建築用コンクリートでは50~65%程度とすることが多いようです。

コンクリートと鉄筋が一体で強い構造体になる

鉄筋コンクリート造では、鉄筋がさびてくると躯体強度が落ちてしまいます。そこで大切な役割を果たすのがコンクリートです。打設当初のコンクリートはアルカリ性のため、鉄筋の酸化を防ぎます。年月がたつとコンクリートの中性化が始まりますが、水セメント比が少ないものほど中性化に時間がかかります。

そのほかの対策としては鉄筋の周りのコンクリートの厚さ(=「かぶり厚さ」といいます)を厚くする方法があります。鉄筋の周りのコンクリートの厚みがあればあるほど鉄筋がさびにくくなります。住宅性能表示制度の劣化対策という項目では、水セメント比とかぶり厚さによって長持ちの基準を定めています。

それでは次のページで長持ちの基準を具体的にみていきましょう!

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