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眠れない夜にさようなら。住まいの断熱対策

今年の夏は記録的な猛暑になりました。適切な住まいの断熱対策、日よけ対策を行えばクーラーの効きを良くし、光熱費を抑えることができます。明日からでも実践できる内容ですので、ぜひ取り入れてみてくださいね(2018年8月改訂版/初出:2008年7月)

井上 恵子

執筆者:井上 恵子

住まいの性能・安全ガイド

 
 

クーラーの効きをよくして省エネ効果UP!

記録的な猛暑が続き、夜も熱帯夜が続いています。読者の皆さんは無事眠りにつけていますか。
 
連日の夏日、熱帯夜は体力を奪います。夏バテ防止にしっかり睡眠をとりましょう。

連日の夏日は体力を奪います。夏バテ防止にしっかり睡眠をとりましょう。


クーラーをつけて寝るのには抵抗がある、電気代が気になるという方も多いと思いますが、今年のような猛暑では熱中症対策のためにクーラーの使用が推奨されています。クーラーを適切に使いつつ、なるべく光熱費を抑えるためには、住まいそのものの日よけ対策・断熱対策が効果的です。ポイントは以下の二つになります。

(1)昼間、太陽の光をなるべく室内に取り込まないようにすること
(2)風をうまく取り入れること 

それでは具体的に見てまいりましょう。 
 

日よけのすだれ、どこにつけると効果的?

 
 
まずは日中の日射対策から。なじみの深い「すだれ」を見直してみませんか。すだれは昔から日本で使われてきた日よけ対策で、素材が木や竹といった自然素材である点も涼しさを演出しますし、和風インテリアにも合いますね。
 
すだれは窓の外側に設けると効果がアップします。

すだれは窓の外側に設けると効果がアップします。


夏の日射対策で大切なのは、屋根・外壁・窓面の断熱です。そこでまず窓に着目すると、夏場は太陽の高度が高くなるため、窓から入る太陽の光は部屋の奥までは届きませんが、窓際やその近くの床が熱を持ったように熱くなることがあります。

窓の上部に庇や軒の出がない場合は特に注意が必要です。直接窓面に太陽の光が当たり、窓は大変な熱を持つことになります。そのような場合は、窓面の外側で日射をカットすると効果的です。

 

すだれの効果的な使い方

例えば窓の室内側にブラインドを設けると、ガラスを通して直射日光が当たったブラインドの表面温度は35℃~40℃くらいまで上がってしまいます。ブラインドはそこから室内に熱を放射するので、室内の気温はどんどん上がってしまいます。そうなると、エアコンをかけても効きが悪く、効率もあがらず、無駄なエネルギーを使うことになります。窓の外側で、日射が当たる前に遮断してしまうほうが、ずっと効率的なのです。

すだれは窓の外側、窓面から少々離した位置につけ、窓との間に空気層があるように取りつけます。夜間に窓を開けたとき、すだれが一枚だと室内が透けて見える恐れがありますが、その時はすだれを二枚重ねて使用すると見えにくくなります。

 

照り返しの防止に効果があるウッドデッキ

 
 
窓の次に床面の断熱対策を考えてみましょう。例えば、掃き出し窓には外の床面(バルコニー・ルーフバルコニーなど)の日射の照り返しも当たります。バルコニーの床面に、ウッドデッキを敷き詰めるだけでも照り返しを防げます。木は熱伝導率が低く、断熱性が高いのです。代表的な物質の熱伝導率の例を挙げてみましょう。単位:W/(m・K)。

・水    1.0
・木    0.5
・金属  105.0
・アルミ  175.0

アルミや金属など熱伝導率の高いものは熱を周りに伝えやすく、すなわち断熱性が悪いということになります。天然木のウッドデッキは床に敷き詰めるだけで、バルコニー床面の温度を下げることができます。
 
ウッドデッキは照り返しを防ぐ効果があります

ウッドデッキは照り返しを防ぐ効果があります


最近では樹脂に木チップを練り込んだ「人工木」「樹脂木」「再生木」のウッドデッキも出回っています。見た目は天然木のウッドデッキと似ており、メンテナンス性が良いなどメリットもありますが、断熱効果という点では天然木のウッドデッキのほうがよいでしょう。

こうしてなるべく昼間、室温が上がらないように工夫をすることも、夜に快適に過ごすことにつながります。

 

扇風機を活用して室温を下げる

 
 
昼間長い時間外出して帰ってきたら、室温がものすごく高くなっていた!ということもありますよね。そんな時は、いきなりクーラーをかけるのではなく、まずは窓を開けて空気の入れ替えをしましょう。

その際、扇風機を活用すると効率的です。暖まった空気は部屋の上にたまっているので、まず扇風機を回して室内の空気をかくはんします。そして次に、扇風機を外に向けて置き、回してください。ある程度室温が下がってきたら、クーラーをかけましょう。

 
室温が高い時は、扇風機を使って効率的に暑い空気を外に出してしまいましょう。

室温が高い時は、扇風機を使って効率的に暑い空気を外に出してしまいましょう。


 

風の通り道をつくる

室内に風を呼び込むためには、風の入口になる窓と出口になる窓が対面についていることが理想的です。マンションでは一室につき窓が一カ所という間取りが多いのですが、部屋のドアを開けて他の部屋の窓を利用して風の道をつくるなど、二カ所の窓を開けることで風が通るようになります。
 
日本家屋で見かける欄間(らんま)は、住居内の風通しを良くする効果があります

日本家屋で見かける欄間(らんま)は、住居内の風通しを良くする効果があります


今はあまり見かけなくなってしまいましたが、昔の日本家屋には、扉の上に欄間(らんま)という透かし彫りや格子状のはめ込み板がついていました。ここで風の通り道をつくっていたという、昔ながらの知恵なのです。

 

窓際の日よけにツル性の植物を活用

 
 
冒頭で窓の外に設けるすだれの効果をご紹介しましたが、すだれの他に、窓際にツル性の植物を植えることも、日よけ効果になります。
 
窓の外側にグリーンカーテンをつくることも日よけ対策になります

窓の外側にグリーンカーテンをつくることも日よけ対策になります


プランターでも地植えでも良いので、窓を覆うように育てると、窓の外側にグリーンのカーテンができます。これが日よけとなって窓面を保護してくれます。植物は見た目のグリーンが涼しさを呼びますが、アサガオ、ヒョウタン、へちま、ゴーヤなど花や実のつく植物を植えると楽しみも倍増ですね。

 

南側に落葉樹を植える

また、これは庭のガーデニングをするときに考慮してほしいのですが、南面の窓の近くに落葉樹を植えておくと、木が育ちある程度の大きさになれば、夏の日射を遮ってくれます。なぜ落葉樹かというと、落葉樹は冬に葉が落ちるため、寒い冬には陽の光を確保できるからです。
 
 
 
 

日よけ対策で省エネしながら快適な眠りを得る

暑い夏に体力を維持するためには十分な睡眠をとることが必要です。熱中症を予防するために夜間でも外気温が下がらない熱帯夜ではクーラーを使用することが推奨されていますが、電気代が気になる人もいるでしょう。

最近のクーラーは省エネ仕様になっており、以前に比べだいぶ電気代も安くなりました。それでも本日ご紹介したような住まいの日よけ対策や断熱対策を取ることで、より効果的に、光熱費を抑えてクーラーを使用することができます。今回ご紹介した方法は明日からでもできることですので、ぜひ取り入れてみてください。

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