不動産売買の法律・制度/不動産売買の法制度

抵当権と不動産の売買

住宅ローンを借りるとほとんど例外なく登記される「抵当権」、および事業資金貸付などで登記される「根抵当権」について、その概要と住宅を売買するときにおける取り扱いを説明します。(初出:2003年10月)

執筆者:平野 雅之

【ガイドの不動産売買基礎講座 No.70】

土地や建物を対象とする権利には所有権を基本として、占有権、地上権、永小作権、地役権、入会権、留置権、先取特権、質権、抵当権があります。これら民法上で定められた10種類の権利を総称して「物権」といいますが、このうちの留置権、先取特権、質権、抵当権の4つは債権を担保することを目的とした物権であって、とくに「担保物権」とも呼ばれます。耳で聞いたときには「物件」と紛らわしいでしょう。

今回はその中から「抵当権」の基本とその売買時における取り扱い、および「根抵当権」について説明することにします。


抵当権とは?

抵当権は担保物権の中で最もポピュラーなもので、住宅ローンを借りると金融機関によって登記されます。対象となる土地・建物に抵当権を設定するためにはまず「抵当権設定契約」が必要となりますが、これは住宅ローンを借りる際に締結する契約(金銭消費貸借契約)に合わせて行なわれます。

この場合、
  抵当権設定者=債務者=ローンを借りる人(所有者など)
  抵当権取得者=債権者(抵当権者)=金融機関など
という関係になります。また、この抵当権を第三者に対抗(主張)するためには登記が要件であり、住宅ローンを借りればほとんど例外なく抵当権が登記されるわけです。

複数の金融機関等から融資を受ければ、その分の抵当権が登記されることになりますが、複数の抵当権の間では先順位のものが優先されます。また、昭和40年代頃までは建物のみに抵当権が設定されているケースも散見されますが、現在は特殊な事情がない限り、土地と建物の両方に抵当権が設定されます。ただし、敷地権の登記がされたマンションでは、建物のみに抵当権の登記をすることでその効力が土地の持分にも及びます。

そして、住宅ローンの返済が滞ると抵当権者からの申し立てにより不動産競売が行なわれることになります。このとき債権額(残高)の合計以上で競落(競売で売れること)されることは珍しく、たいていの場合は債権額を下回るため、その順位が大きな問題となります。つまり第1順位の抵当権者では債権回収額も大きくなりますが、第2順位以下の抵当権者は全く回収できないケースも少なくありません。


売買時における抵当権の取り扱い&根抵当権…次ページへ


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