不動産売買の法律・制度/不動産売買の法制度

消費者契約法と不動産売買 3(2ページ目)

不動産売買に関連する消費者契約法解説の3回目です。今回は、消費者契約法によって無効とされる契約条項について、いくつかの例をもとに説明することにしましょう。(2015年改訂版、初出:2004年2月)

執筆者:平野 雅之


無効となる契約条項の例

前のページでは消費者契約法による規定の要点を書き出しましたが、法律に慣れていなければ分かりづらいところが多いでしょう。

そこで「無効となる契約条項の一例」を不動産の売買契約に当てはめて考えてみると次のようになります。なお、これらはいずれも売主が事業者、買主が消費者に該当する場合ですから、それ以外の契約では必ずしも無効だとはいえません。

【無効となる契約条項の例】

本物件の売買にあたり買主が不測の損害を受けた場合でも、売主は一切の責任を負いません
 
売主の責めに帰すべき事由で問題が生じた場合でも、売主はその損害賠償責任を負いません
 
いかなる事由が生じた場合でも、買主は本契約の解除ができません
 
買主が本契約に違反した場合、売主は何ら催告を要せず本契約を解除することができます
 
買主が表記期日までに残代金を支払うことができない場合、買主は表記の期日から支払い日までの期間に対し年利20%相当額の遅延損害金を付加して売主に支払うものとします
 
本物件に隠れた瑕疵があった場合、売主はその責任を負わないものとします
 
  売主が宅地建物取引業者の場合には、宅地建物取引業法によりもともとこのような条項は無効とされ、仮に中古住宅の場合でも最低2年間は瑕疵担保責任を負わなければなりません。そのため消費者契約法で問題になるのは、売主が宅建業者以外の法人もしくは事業者に該当する個人で、買主が事業者でない個人の場合です。
 
買主の債務不履行により本契約が解除された場合、買主は売買代金の30%相当額を違約金として売主に支払うものとします
 
  売主が宅地建物取引業者の場合には、宅地建物取引業法により20%を超える違約金の予定額は無効とされています。消費者契約法では「平均的な損害額を超えるもの」が無効とされていますが、宅地建物取引業法の優先適用により20%までの違約金は有効となるため、売主が宅地建物取引業者でない事業者の場合にも20%までは認めるのが合理的との考え方が示されています。

いくつかの「無効となる契約条項」の例を挙げましたが、消費者にとって不利益となる契約条項が無効とされるのですから、事業者側が一方的に不利となる契約条項であれば有効です。現実にはほとんど考えられないでしょうが……。



3回にわたって消費者契約法を説明してきましたが、当初説明したとおり不動産取引を念頭に作られた法律ではないため、これによって不動産の契約をめぐるトラブルがなくなるわけではありません。トラブル解決の手段が一つ増えたことに過ぎないともいえるでしょう。

逆に消費者保護の柱が明確になったことにより、消費者契約法の対象とならない場面ではいままでよりも一層、消費者自身の自覚や責任、判断力が求められていく可能性も考えられます。

いずれにしてもトラブルになりそうなときには、その種が大きくならないうちに早め早めの対応をしていくことが欠かせません。


【消費者契約法と不動産売買】
1 消費者契約法の概要
2 契約を取り消せる場合と行使期間
3 無効とされる契約条項


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