実測により得られた面積をもとに土地の売買代金を確定させる「実測売買」ですが、その条件を明確に決めておかないと面倒なことになりかねません。
- 不動産業者を通さないことで何かデメリットはありますか?
- 実測をしたうえで売買代金を確定させる契約のときの注意点は?
(千葉県松戸市 匿名 30代 男性)
もし、すでに専属専任媒介契約で売却の依頼を出しているとすれば、必ずその不動産業者を通して売買契約をしなければならず、あえてその業者を外して契約をしても、売主は媒介手数料に相当する額の違約金を支払わなければなりません。
個人同士で的確な契約条件を定めることは意外と難しいが……
もちろん、まだどこにも売却の依頼をしていないのであれば何ら問題はありません。
また、住宅ローンを金融機関に申し込むのであれば、どちらかの不動産業者を通して重要事項説明書と売買契約書を揃えなければならないケースもありますが、今回はそれも必要ないようですね。
ただし、不動産業者を通さずに個人同士で売買契約をするときでも、その物件自体や取引に何らかの問題点がないかどうかを調査して確認することが重要です。さらに、適切な売買契約書を作成することも欠かせません。
そのあたりをどうするのかよく検討してください。
なお、不動産業者を通さない個人同士の売買では民法が適用され、売買契約書を交わす前でも契約成立を主張する余地があります。
お互いの認識の相違でトラブルになることもありますから、あらかじめ「売買契約書を交わした時点で契約成立とみなす」という意思確認をしておくことも大事です。
さて、次に「実測売買をするときの注意点」ですが、これにはいろいろと複雑な部分が多く、土地取引に慣れていないと結構やっかいかもしれません。
実測売買をする際に大切なポイントとして、次のようなものが挙げられます。
- 実測による精算の単価や精算方法を明確にすること
- 実測の対象となる部分を明確にすること
- 実測の種類を明確にすること
- 実測費用の負担を明確にすること
- 実測面積と登記簿面積が異なったときの処置を明確にすること
これらのポイントについて具体的にみていくことにしますが、いざ個人同士で土地の実測売買をやろうとしても、なかなか難しい部分があるでしょう。
実測による精算の単価や精算方法を明確にする
実測売買による契約をするためには、まずその単価を明確に決めなければなりませんが、最近では1平方メートルあたりの単価を定めることが多くなっています。坪単価で定めても構わないのですが、そのときには1坪を3.3平方メートルとするのか、より細かく3.30578平方メートルとするのか(それ以上は細かくしてもほとんど差異は生じません)を売買契約書に明記することが求められます。
また、精算方法としては〔実測面積×単価〕とすることが一般的です。
登記簿面積との相違が小さいと推定される場合には、登記簿面積をもとにいったん仮の売買価格を定めておき、〔登記簿面積との相違面積×単価〕で売買価格の増額または減額をすることもできます。
単純に考えるとどちらも同じように感じるでしょうが、後者の場合には仮の売買価格から導かれる単価と、精算に用いる単価を意図的に変えることができます。売買価格を決めるのにあたり、土地面積以外の要素が影響するときなどにこの方法を使います。
また、実測売買の変形として、登記簿面積との間に一定面積以上の相違が生じたときに精算をするという方法もあります。
たとえば「実測面積と登記簿面積との差が5平方メートルを超えるときに精算をする」というものですが、この場合には精算の対象が相違面積のすべてなのか、あるいは相違面積のうち5平方メートルを超える部分だけなのかを明確にしておかなければなりません。
実測の対象となる部分を明確にする
売買をする土地に私道部分やセットバック部分が含まれるとき、たいていはこれらを除いた「有効宅地部分」を実測による精算対象とするのですが、これも売買契約書のなかで明確にしておかないと、売主と買主の見解の違いでトラブルを生じることがあります。前面の道路の幅員が4メートル未満であるなど敷地のセットバックが必要なとき、役所などとの協議を待たないとその面積を確定できないことも多いでしょう。そのため、売買契約の日程(決済時期)に間に合わないときにはどうするのか、といった検討も必要になります。
もちろん、売主と買主が合意をすれば、私道部分やセットバック部分を精算対象に含めるという取り決めでも構いません。
実測の種類を明確にする
実測売買のときには、それぞれの敷地境界において隣地所有者の立ち会いを得たうえで、土地家屋調査士などの有資格者が測量をし、測量図(隣地所有者などの承諾印付き)を作成することが原則です。このとき公道や水路、公園など公有地との境界については管轄する役所の担当者の立ち会いを求めます(官民査定)。
このような手続きで行なわれる測量を「境界確定測量」といい、確定測量をもとに作成された測量図は「確定実測図」と呼ばれます。そして確定した境界点にはそれぞれ「境界標識」が埋め込まれます。
ところが、役所の立ち会いには相当な日数を要するために、官民査定を省略することも少なくありません。また、隣地の所有者が立ち会ってくれなかったり、あるいは立ち会いはしても承諾印を得られなかったりするケースもあります。
確定測量の要件を満たさない測量を「現況測量」といいますが、実測売買にあたってはどの程度の測量を求めるのか、あるいは「確定測量」を条件としながらそれが満たされなかった場合にはどうするのかなど、売主と買主の間で行き違いが生じないように、しっかりと話し合っておくことも重要です。
また、それと同時に売主側では、あらかじめ隣地所有者などに境界確認の立ち会いと承諾印の押印について打診をしておくことも欠かせません。
実測費用の負担を明確にする
もちろん、これらの実測が無料でできるわけではなく、通常の売買契約ではこれを売主の負担とするケースが多いでしょう。当事者同士の取り決めで「売主が負担する」でも「買主が負担する」でも、あるいは「各々折半して負担する」でも構わないのですが、あらかじめ明確に決めておかないとトラブルの種になるだけです。
事前に実測費用の見積りを取っておくことも大切です。
実測面積と登記簿面積が異なったときの処置を明確にする
登記簿に記載された面積(地積)を実測によって得られた面積に直す登記を「地積更正登記」といいますが、売買取引のなかでこれを行なうかどうかは任意であり、売主にはその負担を求めないケースが多いでしょう。とはいえ、売主が地積更正登記の義務を負うのか負わないのかを明確にしておかないと、やはりこれもトラブルの種になりかねません。
地積更正登記を行なうと決めたときでも、手続き上の問題などで決済に間に合わないことも多いため、段取りをよく検討しておくことが大切です。
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