実勢価格とは大きく乖離することもある
地価公示法には「公示区域内において、土地の取引を行う者は、公示された価格を指標として取引を行うよう努めなければならない」(第1条の2)といった旨の規定(土地取引者の責務)が定められています。しかし、少なくとも大都市圏では公示地価を基に売買価格を定めることがほとんどなく、とくに土地取引が活発な時期などには、公示地価の数倍に相当するような価格での取引も少なくありません。逆に地方圏、あるいは地価下落期などでは公示地価を下回る取引もあることでしょう。
また、バブル崩壊後の急激な地価下落期には、実勢価格よりも高い路線価の事例が頻発し、その頃に相続があった土地では大きな問題も生じました。
地価上昇期であれ下落期であれ、公的価格は実勢価格の動きに遅れる傾向があることは以前から指摘されていますが、ある程度は仕方のない一面です。もちろん、実際の取引では個々の事情に左右される部分が非常に大きいことも無視できません。
公示地価や路線価などの公的価格は、土地価格そのものの目安というよりも、上昇あるいは下落の全体的な傾向をつかむための指標として考えたほうが分かりやすいでしょう。ただし、土地の相続税や贈与税がからむときは、路線価の変動がストレートに影響してくることがあります。
本当の地価最高額地点は?
路線価や公示地価などが発表されるとき、同時に地価の最高額地点も話題になります。ところが、全国の最高路線価として東京都中央区銀座五丁目の銀座中央通り(鳩居堂前)が挙げられるものの、公示地価の最高額地点は銀座四丁目(山野楽器銀座本店)、基準地価の最高額地点は銀座二丁目(明治屋銀座ビル)などが常連となっています。
32年連続で最高路線価となっている銀座中央通り鳩居堂前地点
もっとも価格の性質上、公示地価や基準地価のほうが大きな数字で発表されますし、実際に取引されるときの価格はまた別の話です。
ちなみに最高路線価の銀座中央通りが「鳩居堂前」といわれるのは、道路をはさんだ向かい側には別の価格が付けられているためです。鳩居堂側の並びでも、少し位置がずれたところは異なる路線価が付けられています。
路線価の変動率算出方法が2011年に変更されている
路線価における平均変動率の算出方法が2011年に変更されました。以前は標準宅地の価格を合計してから平均を出す「加重平均」の方法が採用されていましたが、変更後は各地点の変動率を単純平均するようになっています。これによって従来よりも変動率が小さめの数値となるため、2010年以前の変動率と比較するときには注意が必要です。なお、変更後の算出方法は公示地価や基準地価と同じものです。
意外と役に立つ路線価
路線価(相続税路線価)は相続税や贈与税を算出するためのもので、一般の土地取引には関係がないように考えられがちです。しかし、都市部ではほとんどの公道に対して路線価が付けられているため、これが意外と役に立つケースもあるでしょう。前述したように公示地価と実勢価格は大きく乖離しているケースが多く、当然ながら「公示地価の8割が目安」とされている路線価と実勢価格も同様に乖離しています。そのため、路線価をみて「売買価格がだいたいいくら」と見当をつけることもできません。
しかし、近隣の売買事例と組み合わせれば、その割合(路線価の比率)でおおよその傾向をつかむことができます。
たとえば、近くで条件の似通った土地の売買事例が1平方メートルあたり100万円だとします。その土地の路線価が60万円、調べたい土地の路線価が2割低い48万円だったとすれば、売買価格は80万円(かもしれない)と予測ができるわけです。
もちろん、土地の細かな条件に応じて補正なども必要で、売買価格がそれほど単純に決まるわけではありませんが……。
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