都市部の建売住宅や小規模な宅地分譲では、もともとの敷地を細かく分割したうえで販売することも多いでしょう。
なかには「どうしてこんなふうに分けたの?」と一般消費者が疑問に感じるようなケースもありそうです。ときには不動産業界内部の者からみても、「ここまでやるのかぁ!」というような分割例も……。
しかし、ただデタラメに分割しているわけではなく、分割後のそれぞれの敷地で建築確認を受けられるように、一定の基準によって区画割りが行なわれているのです。
敷地の細分化にはいろいろな弊害もあるわけですが、その問題はひとまず横においておき、小規模開発のときに「区画割りがどのようにされるのか」について、その基本的なやり方を知っておきましょう。
キーワードは、接道義務、敷地延長、位置指定道路
実際の敷地は一つひとつ形状や大きさが異なり、とくに不整形の敷地では、その形状に応じて区画割りのさまざまなバリエーションが生じることになります。しかし、それらはすべて基本形の応用ともいえるものですから、ここでは下図のような、ある程度整った形状の敷地を分割するケースで考えていくことにしましょう。
〔もともとの敷地〕
〔2区画に分割する例-1〕
最も簡単な区画割りは、縦に2等分するものです。もともとの敷地がかなり縦長の場合や、道路に面する間口が狭すぎる場合にはこれが難しいときもあるのですが、縦割りですっきりと分割できれば、分割後の区画A・Bにあまり価格差が生じず、販売もしやすいのです。
同様の縦割り(羊羹切り?)は、もともとの敷地が道路に面して横長であれば、どんどん区画数が増えることになります。
〔2区画に分割する例-2〕
もともとの敷地の奥行が長い場合などには、路地状の「敷地延長」部分を設けて分割するケースもあります。このとき、路地状部分の幅は最低でも2mを確保しなければなりません。
これは建築基準法に定められた「接道義務」を満たすためです。なお、路地状部分の長さについて自治体が定めた制限の適用を受ける場合もあります。
また、道路が敷地の西側(あるいは東側)になるときは、この分割方法によってC・D両区画に南向きの空間を作ることができるというメリットもあるため、もともとの敷地の奥行にかかわらず、あえてこのような分割をするケースもあるでしょう。
この路地状部分は敷地面積に含まれるため、区画の面積は上図Dのほうが広くなるケースが多いほか、土地価格の1平方メートルあたり(または1坪あたり)の単価は一般的にDのほうが安くなります。
さらに、路地状部分をカースペースとして利用することを想定し、自動車の出入りをしやすくするため、下図のように「隅切り」(すみきり)が設けられることも少なくありません。
なお、これ以降に説明する分割方法でも同様に隅切りが設けられることもありますが、図の中では省略しています。
また、路地状部分がある敷地について、一般には「旗ざお状敷地」などと呼ばれることも多いようですが、不動産業者間ではたいてい「敷延」(しきえん=敷地延長の略)または「専通」(せんつう=専用通路の略)といわれます(首都圏の場合)。
どちらが正当というような話ではありませんが、それぞれの業者の出自(?)により「敷延」派と「専通」派に分かれるようです。ちなみに私は「敷延」派ですが……。
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