住宅購入の費用・税金/住宅ローンのしくみと選び方

住宅ローンを抱えたままで離婚した女性へ

離婚した後で住宅ローンを支払い続けていくとき、それまで受けていた「住宅ローン控除」はどうなるのでしょうか。財産分与などがあったときの取り扱いが変わりましたので、心当たりのある人は確認しておきましょう。(2015年改訂版、初出:2009年3月)

執筆者:平野 雅之


夫とふたりで将来の夢を描きながら購入したマイホーム。ふたりが別れることなんてあり得ないと思って、共有持分も決めたのに……。

一人の女性

夫とずっと一緒のつもりで共有にしたことがかえって面倒な結果に?

それでも、ふたりの関係が続かなくなってしまうことがあるのは、仕方がないのかもしれませんね。

「離婚」がテーマのサイトではありませんから、ふたりの心理についての考察は一切しませんが、「離婚に伴う財産分与で夫の共有持分をすべてもらったものの、残った住宅ローンは自分の名義で返済し続けている」というような女性もいらっしゃることでしょう。

このようなケースにおける住宅ローン控除の取り扱いが変わりましたので、心当たりのある人はぜひ確認してみてください。過去5年分の所得税が戻ってくるかもしれません。


従来の取り扱いは「2つの住宅」?

たとえば、マイホームの当初の共有持分は夫が3分の2、妻が3分の1で、離婚に伴う財産分与によって前夫の持分が前妻に与えられ、前妻がその住宅に住み続けているとしましょう。

現在はすべて前妻の所有権(3分の1+3分の2)となっているわけですが、「当初の3分の1の持分の住宅」と「追加取得した3分の2の持分の住宅」とが “別々の住宅” とみなされ、そのどちらか一方にしか住宅ローン控除を適用できない、というのがこれまでの取り扱いでした。

もちろん当初の持分が2分の1、財産分与で追加取得した持分が2分の1の場合でも、その他の共有持分割合の場合でも同じことです。まったく同一の住宅でありながら、それぞれの持分の取得時期が違うことにより「2つの住宅を持っている」とみなされたのです。

その結果として、残った住宅ローンを前妻が払い続けていたとしても「どちらか一方の住宅(持分)」に対応する割合でしか住宅ローン控除の適用を受けることができませんでした。


平成21年から「当たり前」の取り扱いに

しかし、国税不服審判所の裁決により上記のようなケースでも「住宅を2つ(以上)持っていることにはならない」と、考えてみればごく当たり前の判断がなされました。

そのため、国税庁も平成21年2月に「当初から保有していた共有持分と追加取得した共有持分のいずれについても住宅借入金等特別控除が適用されるよう取り扱いを改めることとした」と発表しています。

要するに、追加取得分を含めたすべての持分に対して住宅ローン控除が適用されるようになったということです。

なお、国税不服審判所の裁決は「共有持分を追加取得した場合であっても、家屋を2以上有する場合にあたらない」とするもので、離婚による財産分与にかぎったものではありません。

しかし、離婚せずに共有持分を贈与された場合など、引き続き生計を一にしている親族などからの取得分は、もともと住宅ローン控除の対象となっていませんから、新たな取り扱いに該当するのは主に離婚によるケースでしょう。


過去5年分の所得税が戻る?

国税庁の取り扱いが改められたことにより、離婚後の住宅ローン控除額が増えるケースがあるだけでなく、過去5年分(事業所得の申告をしているのか、還付申告をしているのか、年末調整で住宅ローン控除を受けているのかなどによって、若干異なる場合があります)の所得税について減額を受けられる可能性があります。

□ 離婚後、過去5年以内に住宅ローン控除の適用を受けていた
    (または現在も住宅ローン控除の適用を受けている)
□ 離婚後、過去5年以内に支払った所得税がある
    (すでに全額の控除を受けていれば、減額対象がありません)
□ 離婚による財産分与で前夫の共有持分をもらった
□ 自分の名義で残った住宅ローンを払い続けている

これらに該当する人は、最寄りの税務署でご相談ください。ちなみに、逆のパターンで前妻から財産分与を受けた前夫のケースでも同じことになります。

ただし、住宅ローンを返済中のマイホームにおいて、離婚による財産分与を金融機関が認めるかどうかは別の問題ですからご注意ください。


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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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