不動産売買の法律・制度/宅地建物取引業法詳説

宅地建物取引業免許に関する規定

宅地建物取引業を営むためには免許を受けなければなりませんが、この免許について業法ではどのように規定されているのか、基本的な内容を知っておきましょう。(2015年改訂版、初出:2009年4月)

執筆者:平野 雅之

-宅地建物取引業法詳説〔売買編〕 No.3-

不動産の取引を「業として」営むためには規定に基づく免許を受けなければならず、それがなければ無免許営業となります。この免許について、宅地建物取引業法ではどのように定められているのか、主なポイントを確認しておくことにしましょう。

宅地建物取引業法第3条(免許)
宅地建物取引業法第3条の2(免許の条件)

国土交通大臣免許と都道府県知事免許の違いは?

宅地建物取引業の免許について、一般の消費者があまり詳しく知る必要はないでしょうが、ここで覚えておきたいのは「国土交通大臣免許と都道府県知事免許の違い」と「免許の有効期間が5年であること」の2つです。

第3条の条文からも分かるとおり、複数の都道府県にまたがって事務所(本店、支店など)を持つ宅地建物取引業者が大臣免許で、1つの都道府県の区域内にだけ事務所を持つ宅地建物取引業者が知事免許です。

ただそれだけの違いであって、会社の規模や実績などは関係がありません。法人ではなく個人事業者であっても、大臣免許を取得することは可能です。

極端な例を挙げれば、社長と社員の2人だけ(いずれも宅地建物取引士)の会社であっても、本店と異なる都道府県に支店(または営業所)を設けたときは大臣免許になります。一方で、支店が50か所あるいは100か所あるような大きな会社でも、本店・支店がすべて同一の都道府県内だけなら、それは知事免許です。

また、宅地建物取引業免許と営業エリア(物件の取り扱いエリア)との間に直接の関係はありません。たとえば、北海道知事免許の宅地建物取引業者が、沖縄県の物件を販売したり媒介したりすることも可能です。ただし、契約を締結する場所によっては別の問題を生じるケースがあるでしょう。

免許の対象となる事務所には本店や支店のほか、「継続的に業務を行なうことができる施設を有する場所で、宅地建物取引業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置くもの」が該当することになっています。

宅地建物取引業を営まない支店はこれに該当しませんが、本店は実際に宅地建物取引業を営んでいるかどうかに関わらず、常に宅地建物取引業の事務所として扱われます。


免許の有効期間は5年

宅地建物取引業の免許の有効期間は、大臣免許も知事免許も同じく5年です。有効期間満了後も引き続き宅地建物取引業を営もうとするときは、免許の更新手続きをしなければなりません。

免許の更新にはある程度の日数がかかるため、その間に売買契約業務を行なう宅地建物取引業者の重要事項説明書や売買契約書などに「免許更新中」と記載されていることがあるでしょう。しかし、その間に免許が失効しているわけではなく、更新が完了するまでは引き続き従前の免許が有効となっています。

免許が更新された回数は、免許番号の前の括弧内に付される数字で分かります。たとえば、「東京都知事(1)第12345号」であれば最初の免許を受けてからまだ1度も更新時期を迎えていない宅地建物取引業者、「東京都知事(2)第12345号」であれば更新が1回、「東京都知事(3)第12345号」であれば更新が2回ということです。

この括弧内の数字をみることにより、宅地建物取引業を始めてからの、おおよその年数が分かります。(3)なら10年超15年以内といった具合です。

ただし、平成8年3月31日まではこの有効期間が、新規、更新とも3年でした。したがって、現時点で(5)以上の宅地建物取引業者の営業年数は単純に5年を掛けてもダメで、少し細かな計算をしなければなりません。

また、この免許の有効期間延長措置に伴い指導監督の観点から加えられたのが、第3条の2「免許の条件」です。

具体的にどのような条件が付されるのかは難しい面も多いでしょうが、国土交通省から例示されているのは、暴力団の実質的支配下に入った事実がある者に対して「暴力団の構成員を役員等としないこと」「暴力団の実質的な支配下に入らないこと」とする条件、あるいは免許更新にあたり過去の取引実績が乏しい業者に対して「一定の報告書を一定期日に提出すること」とする条件などです。

なお、第3条の2に基づいて付された条件に違反をすれば、宅地建物取引業の免許を取り消されることになります。


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