住宅購入の費用・税金/住宅ローンのしくみと選び方

住宅ローンの支払いが苦しくなったら-2-(2ページ目)

住宅ローンの支払いが苦しくなる前に、まずローンの借り換えを検討するべきです。すでに苦しくなってしまったときには、条件変更の交渉も必要でしょう。それぞれの注意点をまとめてみました。マイホームを失わずに済む個人民事再生についても説明をします。(初出:2009年7月)

執筆者:平野 雅之


住宅ローンの条件変更交渉は誠意をもって

いざ収入減に直面、あるいは失業などによって住宅ローンの支払いが困難になりそうなときには、できるだけ早い段階で住宅ローンを借りている金融機関(旧住宅金融公庫の直接融資や、住宅金融支援機構のフラット35などの場合も、融資窓口となっている金融機関)へ相談に行き、条件変更(リスケジュール)の交渉をするべきです。

以前であれば、条件変更の交渉を伴う相談には応じてくれなかったり、1度でも滞納をすれば「“そいつ” はもう顧客ではない」と冷淡な対応をされたりすることもあったようですが、最近は逆に多くの金融機関が「支払いに困った客への相談態勢」を整えるなど、かなり柔軟な姿勢に変わってきている状況です。

なお、2009年8月18日、金融庁から「住宅ローン等個人向け融資についても、返済条件の見直し等を含め、顧客の経済状況等を十分に踏まえた対応を促すとともに、新規融資について、顧客の経済状況等実態に応じたきめ細かな融資判断を通じた資金供給の円滑化等を促していく」といった「主要行等向け監督方針」が示されています。さらに、2009年12月4日に「中小企業金融円滑化法」が施行され、個人の住宅ローンについても返済条件の変更等について金融機関が積極的に対応するような制度が整えられました。「中小企業金融円滑化法」の適用は2013年3月までで終了するものの、以前よりは条件変更のしやすい環境が維持されることと思われます。

自分が住宅ローンを借りている金融機関で、具体的にどのような交渉に応じてもらえるのかは、「実際に相談に行ってみなければ分からない」といった面も否めません。また、現在の窮状がばれることで優遇金利などの適用対象から外されるケースも考えられます。しかし、それらを懸念して相談を躊躇していても何も解決できないばかりか、さらに悪い状況に追い込まれかねません。どのような結果になるにせよ、まずは金融機関の担当者に連絡をしてみることが必要です。

条件変更の内容としては、ボーナス返済の見直し、毎月の返済額の一定期間減額、返済期間の延長の3つが代表的なものです。

このうちボーナス返済の見直しには応じる金融機関が多いものの、ボーナス時期の増額分を減額またはゼロにして、それを毎月の返済額に振り分けるだけなら、年間を通して考えればあまりメリットはありません。しかし、ボーナス時期の支払いがきついというときには検討をしてみるべきでしょう。

毎月の返済額の一定期間減額は、急場をしのぐには有効ですが、減額期間が終わった後に返済額が上乗せされて、再び支払いに窮することとなりかねません。将来の家計の収支計画をしっかりと見直したうえで、減額期間の交渉などをすることが大切です。

返済期間の延長は、収入が回復するまで何とか乗り切ろうとするときには有効な手段でしょう。ただし、返済期間が長くなることによって総返済額はそれ相応に大きくなります。収入が回復したら繰り上げ返済をするなど、将来にわたって住宅ローンの見直しをしていくことも欠かせません。なお、中小企業金融円滑化法の施行前においてこの返済期間の延長に応じてくれる金融機関は比較的少なかったため、法の適用期限終了後はまた以前の状態に戻ることも考えられます。

いずれにしても、条件変更(リスケジュール)によって住宅ローンの債務が減るわけではありません。しかし、支払いが困難なままで放置をすれば、やがてマイホームを失うことになります。支払いが苦しくなったらまずは金融機関に相談。そして条件変更に応じてもらえそうだったら、自分の支払い計画を明確にし、完済への意欲や誠意を相手にみせることも必要です。

なお、住宅金融支援機構からは “延滞が始まった客に対して” 支払い条件変更の提案をしてきます。このようなときも相手からの提案を無視することなく、すみやかに話し合いに応じるようにしてください。


他の借金があれば個人民事再生の活用も

個人民事再生は、住宅ローン以外の借金(消費者金融、カードローン、信販ローンなど)があるときに検討すべき制度です。住宅ローンはそのまま残りますが、他の借金による債務は減額されるほか、消費者金融などでいわゆる「グレーゾーン金利」を支払っていれば、その分が「過払い金」として返還されます。

住宅ローン以外の借金は5分の4程度(債務額により異なる)を免除したうえで、残りの5分の1程度については3年ぐらいで返済することを求められますが、「そうすれば住宅ローンの支払いはこれまでどおり続けられる」という場合には、個人民事再生を活用することで、マイホームを失わずに済みます。住宅ローンの債務額は軽減されませんが、「住宅ローン特則」が適用されれば月々の支払い額を減らすことも可能です。

ただし、個人民事再生の手続きを依頼する弁護士などへの報酬がそれなりに高額です。報酬の分割払いに応じてくれたとしても、手持ち資金が乏しいときにはなかなか頼みづらい面もあるでしょう。

また、消費者金融などからの借り入れ歴が長く、まとまった過払い金返還が見込まれる場合でも、それを目先の住宅ローン返済に充てることは期待できません。手続き開始から実際に過払い金の返還を受けるまで、早くても半年程度(都市銀行系消費者金融会社の場合)、長ければ1年以上(独立系消費者金融会社の場合)の期間がかかることもあるようです。


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住宅ローンの支払いが苦しくなったら-1-
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