壁と壁のすき間に設けられた細長い玄関を入ると、ぷんと真新しい木の香りが…。これ
が木造建築のよさですね。木がふんだんに使われていますが、白い壁との調和を考え
て一度白いペンキを塗って拭き取るという仕上げになっています。
だからとにかく全体的に開放的で明るい。光の入ってこない母家で同居してきた若夫婦一家がひたすら「明るい家」にこだわったということがわかります。
「田頭さんにはとにかく家族5人が集まりたくなる家をとお願いしました。あとはわたしはピアノを教えているのでそのレッスン場が必要なこと、子どもたちとのくつろげる団らんの場として大きな空間が欲しいこと、そして主人がミステリーマニアなのでその3000冊の蔵書の置き場所を確保することですね。結果的にここは大きなリビングを取り巻く形でつくられた一室空間なんですが、それらのすべてをうまく満たすものができました。
家族で一緒の時間が持てるようになって一番喜んでいるのは子どもたちかもしれませ
ん」(坂本さん)
玄関を入ると大きな吹き抜けになった階段室。入って右手が段差のないバスルームとそれに続くキッチン、あとはすべてが大きなリビングになっています。昼間は奥さんのピアノ教室、夜は家族の団らんの場所になるわけですね(子どもたちの個室は母屋にある)。
気持ちのいいハイサイドライトを持つ階段から2階に上がると、すぐテラスに出られるミニ書斎があり、そこから左手にリビングの上の吹き抜けを見下ろしながら進む廊下が走っ
ています。ここがご主人の書棚となっていて、希少価値の高そうなミステリーの蔵書の数々がズラリと…。きっとご主人は秋の夜長などは、ここでお気に入りの1冊を選び出し
一人で読みふけるのでしょう。廊下の先はベッドルームになっています。ここには小窓が付いていて、下のリビングを見渡すことができるのもちょっとした気遣いですね。
設計した田頭さんは言います。
「意識してるわけじゃないですけど、ここのところモダン建築に和風を採り入れた
住宅を続けてやりました。いまはそういうニーズが多いということでしょうか。JCDデザイン賞をいただいた喫茶店併設住宅もやはり和のテイストを大事にしたものです。これもアーキッシュさんと組んでやらせていただいた仕事ですね。
坂本さんのお宅は純和風の母屋の隣ですから、当然それは意識しました。庭に面した側に開口部を取らなかったぶん、リビングに大きな開口部を持ってきたわけですが、ここはガラスと障子の二重窓にして、夜などは気分を変えて和の雰囲気を楽しめるようにもしました。住宅建築ではこうした周囲の環境との調和が大きな要素になってきますね」
建築家との家づくりにはいろいろな支援システムが出てきましたが、アーキッシュギャ
ラリーは施工までやるだけに「最後まで」という面倒見のよさがメリットと言えそう
です。ただ、建築家がどこまで自主性を持って施工側を監理できるかというところがポイントになりそうな気がします。
■アーキッシュギャラリー
:http://www.archish-g.com/