和室や音楽室の仕切を光を通すポリカーボネイトやガラスにしたことで、全部がひとつの空間に見えるわけですね。そして視線の先には大開口のベランダがあり、さらにその先には生駒の山並みが……これも部屋の広がりに一役買っています。また厳選されたインテリアや素材、シックで落ち着いた照明と、細部へのこだわりようもなかなかのもの。福田さん夫婦とヘキサの設計担当者とのコラボレーションがうまくいったことを物語っているようです。このあたりはやはりコーポラティブハウスならではのよさですね。
都住創では、ヘキサがスケルトン(建物)の設計をやり、インフィル(各戸の室内)はヘキサと外部の建築家をふくめた混成チームで手分けして担当する仕組み。あるいは入居する人が自分で選んで連れてきた建築家とのジョイントでやるケースもあるそうです。もちろん「都住創大手前」のような大型のものはヘキサ単独では無理なので、ヘキサのOBや外部にも協力を要請して建築家1人に5世帯ぐらいの割り当てでインテリアをこなしていくそうです。
「こうした自由設計は消費者側に大きなニーズがあるということで、デベロッパーもどんどん影響されて自由設計の分譲マンションも出てきました。それはそれで質が上がっていけば悪いことではない。ただ質を上げるためにそういう手法をとっているのか、売るためにそういう手法をとっているのか、そのへんの志の問題はありますが……。でもまあ結果的にモノがよくなったらそれでいいわけですけどね」(安原さん)
いまは自由設計の分譲マンションも出てきた、デザイナーズマンションという分野も伸びてきてはいる。ただコーポラティブハウスには、コーポラティブハウスでなければ実現できない魅力や利点があると安原さんは言います。
「自由設計の集合住宅というのはたしかに一歩前進ではあるけれども、コーポラティブハウスはそれでかではない。そこにはいっしょに住もうという人たちが関係を持てるというメリットがあるます。これがなかったら本当のコーポラティブハウスじゃない。その関係の深さは、濃い方がいいか浅い方がいいかというのは個々人で違うと思いますが、たとえば高齢者なら時間はたっぷりあるから関係性が密な方がいいと思うかもしれないし、時間はあってもあまり深い関係はやだという人もいる。それはさまざまです。ですがいずれにしても関係があるということ。たんにインテリア雑誌を見てこの家欲しいなと思うだけで来たんではその関係はできないでしょ? そこの違いだと思う」
都住創の建てたコーポラティブハウスでは、規模の大小こそあれそうしたコミュニティは全部に機能しているそうです。見学した「都住創大手前」でも住民組合の主催で花火大会などの催しは定期的に開かれているとか。そこにはかつてはどの町にもあった緩やかな町内会が存在しているわけですね。安原さんは、そうしたお互いに顔が見えている緩やかな組織があることがコーポラティブハウスのよさでもあり、それは都心に住むリスクをセキュリティの面から軽減もしていると言います。
「最初は都住創事務局のコーディネーターがリードしながら住民組織を運営していきますね。最初のうちは、まだみんなそんな親しい関係ではないですから。しかし建物ができていっしょに住むようになれば、それはその人たちの問題ということになって、その比率はだんだん変わってくる。住民主導になって、リーダー的な人も登場してくる。そうやってひとつの町のような組織がコーポラティブハウスの中にできてくるんです。それがコーポラティブハウスのおもしろさだと思います」
■都住創:http://www.tojuso.com/