階段を上がるとそこは大きなウッドテラスに面したLDK。キッチンの左手奥はバスルームになっていて、ここからもテラスに出ることができます。2階は階段を上りきった場所にあるホールから、放射状に3つの寝室がつくられています。しかし、どこを向いても使ってあるのは木、木、木……。とってもやわらかくあたたかい、素材感を生かしたままの木が使われています。無垢材にハチミツからつくった自然の塗料を塗っただけの仕上げ。合板のフローリングとは明らかに違います。そして壁は珪藻土、どこか懐かしいにおいがします。
「長い間暮らしていると、人工物と人というのは敵対関係になるんだと思います。逆に木とか自然のものは感覚的に人にやさしい。山に行くとほっとするのと同じで、ゆったりした気持ちになれるんです。建て主さんがよく言ってくださるのは、家ができたらいままで休みごとに出かけていたのが出かけなくなって、家にいるのがレジャーになったってことですね。それは私たちにとって一番のほめ言葉ですよね」(栗原さん)
栗原さんは、誰でもどこでもつくれる大量生産方式の家づくりの建材として使われてきたビニールクロスや、接着剤を使って耐久性を高めた合板のフローリングなどの工業製品をやめ、一つひとつ現場で手をかけてつくっていく家づくりをここでも実践したそうです。
大切なのは素材だけではありません。自然素材はけっして扱いやすいものではない。木は生き物ですから、湿度によって伸びたり縮んだりします。それを不具合の出ないように使うには、素材の特性を知りつくした大工さんなりのノウハウが必要になると栗原さんは言います。
「たとえば隙間が開いちゃったとか、床暖房を使ったら床がバリバリになったとか、自然素材にはそうした使いにくさもある。それをうまくカバーするのが施工のノウハウなんです。小窓や欄間など風の通り道をつくったり、湿気を断熱材を通して外に逃がすような工夫をしたり……そうしたいろんなものを組み合わせて、はじめて健康住宅になるわけです」
素材だけそろえても駄目で、それをうまく生かしきる努力が必要ということ。それは建て主にもいえることで、最初から完ぺきなメンテナンスフリーを求めすぎる人には健康住宅は無理だとか。だけどそうした自然素材のデメリットも理解したうえで使えば、こんなに快適で住みやすい家はありません。建て主の斉藤さんは言います。
「梅雨どきは快適でしたね。木の床は裸足で歩くとベタベタするのが普通だと思っていたんですけど、全然しないんですよ。床はいつもサラサラですし、家全体がサラサラしている。エアコンをつけなくてもそうなんです。木のにおいにつつまれて、いつも森にいるみたいです」
ザ・ハウスの関さんは、東京圏に50人、関西に30人という登録建築家をかかえていますが、それをむやみに増やす考えはないそうです。
「メンバーを広げるつもりはありません。当社はあくまでも紹介サービスですから、実績のない人が何百人いてもしかたがない。無責任に紹介するわけにはいきませんしね。ほんとうに力もあって間違いのない建築家だけを厳選して紹介していくという姿勢です。家づくり全体をプロデュースするつもりもありません。プロデュースをやれば当然こちらの動きに合わせたフィーが発生します。それはお客様の負担になりますから。コンペのシステムは一部導入しましたが、大型の案件で要望があったときにのみ指名コンペで実施しています」
斉藤さんのように建て主が明確なテーマを持っていれば、ザ・ハウスのシステムはじつに便利に働いてくれるといえそうです。自分でいろいろ探してみても、なかなかこれはという建築家に行き当たらない人には渡りに船かもしれません。
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