建築家・設計事務所/建築家住宅の実例

“俺様空間”のある家3 犬と住む屋上庭園の家(2ページ目)

建築家の長洲研志さんは、都心にこだわって土地を探し西麻布に自邸を建ててしまった人。犬のいる屋上庭園に地下の多目的スペース---それは「自分たちでできることはやる」ことでローコストを実現した家でした。

執筆者:坂本 徹也

空中にダイニングキッチン(2階)が浮かぶリビング

さて1階に上がると、そこは吹き抜けのある広いリビング。エキスパンドメタルの階段を上がって3階に行く途中にダイニングキッチンが設けられています。つまりダイニングキッチンは、吹き抜けのあるリビングの空中に浮かんでいる2階ということでしょうか。これは都心の狭小地では縦の広がりを利用するしかないという制約をみごとに逆手に取った手法といえそうです。
 

ダンくんはリビングの床の滑るタイルが苦手

「外壁はすべてガラスですから開放感は抜群。奥まった土地なので周囲の視線も気になりません。夏は暑いんじゃないかと言われますが、窓を開ければ風が通ってかなり涼しい。また、リビングと3階の寝室、それに地下のギャラリーは床暖房になってますからエアコンと合わせて使えば、冬場も心配いりませんよ」(長洲さん)

目隠し用に建物全体に張りめぐらされたメッシュシートを通して入ってくる光はとても柔らかく目にやさしい。大都会の真ん中にあってしっかりプライバシーが守られていることも、安心感を感じさせてくれます。愛犬のダルメシアンのダンくんは、もっぱら屋上にある犬舎で過ごしていますが暑い日やとくに寒い日などはここに降りてきて、くつろぐこともあるそうです。
 

 
ダイニングからリビングを望む。3階の寝室兼SOHO

ダイニングキッチンの上部にある3階はご主人のSOHOを兼ねた寝室。さらに上がると芝生を敷き詰めた屋上庭園があります。そしてここには愛犬のダンくんの犬舎もある。西洋芝とクローバーが植えられじつに気持ちいい! 開放的でいつも日光の当たる犬舎と緑豊かな庭園は、犬にとっても快適そのものでしょう。
 

 
西洋芝とクローバーの屋上庭園。ここはダンくんの居場所、
夜には都心の灯りが一望 できる

最近はもっぱら室内飼いの小型犬が多いわけですが、本来ダルメシアンは番犬であり狩猟犬。自然環境の中で自由に暮らすのが向いていることはいうまでもありません。気持ちいい天気の日などは、長洲さん夫婦はここでダンくんとの時間をゆっくりと過ごしてあげるそうです。
「屋上庭園の機能はそれだけではありません。ローコストのためデッキプレートを天井がわりにしたこの家では、屋上に張りめぐらされた芝が断熱材の働きをしてるんです。屋上緑化はこれからの都市住宅にはおすすめ。土は夏は日射しを和らげてくれますし、冬は蓄熱するという特性がありますから。今度ここに露天風呂をつくる計画もあるんですよ」(長洲さん)
 

「ここは僕のお城」と自慢げなダン君
落ち着いた地下のギャラリー、大きな吹き抜けのあるリビング、そして犬のいる屋上庭園---と多様な“俺様空間”を都心に実現した長洲さんですが、なにより気に入っているのがこの屋上なのだとか。
長洲さんは言います。「ここから一望する東京の眺めは格別。夜景を見ながらビールなどを楽しんでいると、ああここは都心なんだなあとあらためて満足感が広がってきます。手づくりのローコスト住宅で不便な点もありますが、家という箱を楽しむのではなくこの地に住んで日々の生活を楽しむことを大切にしたいと思えば何ということもない。まあここからいかに内装をいじくってやろうかという楽しみもありますし、とにかくいまは不便で楽しくて仕方ないという感じです」

設計・監理:長洲研志(ICD建築設計事務所)
敷地面積 :50.01m2
建築面積 :30m2
延床面積 :119m2
構 造  :鉄骨造+RC造 地上3階地下2階建て
建築費  :約2000万円

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