縦の広がりと横の広がり
続いて2階に上がると、ここは期待どおりのサプライズ! とにかく開放的な大空間のLDKになっていました。ここからは開かれた「パブリックな空間」ですね。階段のある側のスペースは大きな吹き抜けになっており、見上げるとエキスパンドメタルの床を張った中2階が見えます。これが縦の広がり。そして反対側には駐車場の上に見えた大開口部があり、街の風景を広々と切り取っている。これが横の広がりということです。そして天井には、円形にデザインされた白熱灯の輪がふたつ、UFOの船内のように光を放っています。
キッチンは横一列、壁に面して設えられていますが、これをあえて階段とは反対側に持ってきたのは、やはり吹き抜けの下では調理中になんらかの影響があると考えたからでしょう。好みの問題ですが、キッチンの配置についてはもう一工夫欲しいようにも思います。
塔と空中庭園から自然を愛でる
エキスパンドメタルの中2階は、何かを置けば視線の広がりを妨げることになるし、考えどころですが、やはり生活スペースにはせずこのまま使いたいところです。しかしながら、その繋がりの一部でもあるルーフバルコニーはなかなか使いでがありそう。かなりの面積がありますので、晴れた日にはテーブルを置いてブランチやディナーを楽しむもよし、気の合った仲間を集めてビアパーティを開くのもよし、夏の夜は多摩川の花火を、秋は中秋の名月を愛でる場として存分に機能を発揮しそうです。
若松さんは他の3軒との間にかなり距離を取る設計にしているため、このルーフバルコニーはどこからも干渉を受けない独立した空中庭園になっています。
さらにらせん階段を使ってもうひとつ上がるとそこが3階。目の前にある自然保護林の緑をみごとに切り取ったピクチャーウィンドウの居室があります。ここは子ども部屋にしてもよし、ご主人の書斎や仕事部屋としても使えるということですね。塔と呼んでもいいぐらいの縦の広がりと、街や自然の風景を利用した横の広がり、そんな大仕掛けのあるこの家はやはり“力”を感じさせる一軒でした。
■設計監理:若松均/若松均建築設計事務所
■構造設計:多田脩二構造設計事務所
■施 工 :株式会社佐藤秀
●構 造 :RC造、地下1階、地上3階
●敷地面積:112.60m2(34.10坪)
●建築面積:51.09m2(15.50坪)
●延床面積:111.80m2(33.80坪)
■ 設計集団プラス
■ 東京組
■ 株式会社佐藤秀
■ みかんぐみ
この続きは来週、お届けいたします。