日本酒/おすすめの日本酒

「うまいっ」と声に出して飲みたい日本酒 その3 山形、米鶴『盗み吟醸』

新シリーズ第3弾は、まほろばの地酒、山形、米鶴酒造の吟醸酒。すっきりあっさりの銘酒で知られるが、お土産につく小冊子『盗み吟醸』の民話がなんともシャレと温かみがきいておすすめなのだ。

友田 晶子

執筆者:友田 晶子

日本酒・焼酎ガイド

『盗み吟醸』とは、蔵元に古くから伝わる門外不出の吟醸酒があり、あまりの美味しさに、それをこっそり盗み飲みしたことに由来したネーミングらしい。
おすすめ小冊子『盗み吟醸』。心あたたまる民話がいっぱい。≪日本酒≫
 おすすめ小冊子『盗み吟醸』。 心あたたまる民話がいっぱい。
シャレがきいているが、この『盗み吟醸』を買うともれなくついてくる小冊子『盗み吟醸』も、小話風の昔話が載っていてなかなかおもしろい。
たとえば「盗み吟醸 秘伝」編は、タイトルが「精を放つ」
あらすじはこうだ・・・ 孝吉は酒造りがうまかった。十本仕込めば、一、二本は失敗という時代、決して失敗しなかった。孝吉秘伝の方法は、生米から手間暇かけて造る“菩提もと”を竹筒に詰め、もとすりで造った“生もと”に差し込み、水鉄砲よろしく打ち込む方法。そう、まるで“菩提”は男、“生もと”は女のように。男の精を女に打ち込めばきっといい「もと」が生まれると信じていた。そのとおり、“生もと”はまもなく膨れ始め、やがてはじける。百発百中だった。精を打ち込むとき、孝吉自身も精を放ったような快感に浸る。そこだけは誰にも教えなかった。 のだとさ。

この孝吉の秘法は、南蔵王の山すそにある小さい酒蔵でおこなわれている「差しもと」という酒母技法のことで、これは酵母が発見される前にあった、いわゆる微生物工学のお話なのだ。
もちろん、小さい酒蔵とは『盗み吟醸』の生みの親、山形、高畠の米鶴酒造のこと。本当の話なのだろうか、こんな風に描かれるとグッと興味をそそられる。
米鶴『盗み吟醸』≪日本酒≫
     【 米鶴『盗み吟醸』 】
おまけに、こうしてはじけて(!)生まれた『盗み吟醸』を口に含んでみると、きめが細かくつるりとなめらかな舌触りで、白くやわらかい果実からわきでる蜜のような甘美さとみずみずしさにおどろく。これはまさしく
雪国育ちの色白美人
ではないか。
こんな美人を生み出した、孝吉さん、あんたはえらいっ!
元禄創業の伝統を基盤に造られたお酒はもちろん、風光明媚な『まほろば』(山や丘に囲まれた真に美しい優れた場所をさす万葉の言葉)で生まれた、かずかずのお話も実に心に残る逸品だ。飲めば飲むほど、おもわず民話の世界に入り込んでしまう。

この清らかな味を生かすには、繊細な旨みの絹ごし豆腐をつかった湯豆腐を合わせたい。燗にした「雪国美人」は、もちろん、人肌できまり。
孝吉さん、いっしょにやりませんか? もっとお話聞かせてくださいよ。


『盗み吟醸』     1.8L  3,620円
          720mL  1,715円
          300mL   670円

米鶴酒造株式会社 山形県東置賜郡高畠町ニ井宿1076              電話 0238-52-1130


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