軍のシンボルが“大鍋”だった食いしん坊集団
トルコには、かつてオスマン帝国という13世紀後半から(本格的な国づくりはひとまず措くとして)20世紀に繁栄した、600年余の歴史を持つ集権国家が存在した。最盛期である16世紀には、アジアやヨーロッパ、北アフリカにまでその領土を広げ、各地のあらゆる文化を融合しながら、勢力を拡大していったのである。そんなオスマン帝国のアジアとヨーロッパ、そしてアラブの融合ぶりは、まさにミステリアス。さらにルネッサンス期のヨーロッパ人をも驚嘆させたほど、この帝国は先進的な国家でもあったといわれ、全盛期の軍のシンボルが軍旗ではなく、なんと“大鍋”であったともいう。
しかも、この大鍋を奪われることが、最大の恥辱であったというのだから、思わずクスッと笑ってしまうのだが、オスマン帝国はそれだけ食に執着していた“食いしん坊もの集団”だったということは間違いないようである。
そんな大帝国の料理が、食文化が磨かれないわけがない。現に皇帝は毎日夕食には40皿もの料理を並べさせ、好きなものだけを口にしたのだという。