自然からの贈り物には体によい栄養が詰まっている
馬乳を容器に入れ、木棒で何千回とかき混ぜるのがおいしくなるコツ。その後数日間置いておくとさらに美味しくなる。 |
モンゴルでは馬の乳搾りがはじまる6月頃から9月にかけて、草原ではアイラグと呼ばれる「馬乳酒」が造られる。酒という名がついているが、アルコール度は3%前後と低いため、お酒として飲まれているというよりは、むしろ栄養補給のための大切な飲み物として、乳幼児からお年寄りまで老若男女問わず愛されている。
その栄養価はどれほどのものかというと、なんでもビタミン、ミネラル、カルシウムなどがかなり豊富で、夏の間はこれだけを飲んで過ごす人もいるくらいなのだとか。
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乳を搾るのは馬とともに生活している男性。馬乳酒を肌に塗るときれいに日焼けができるとか。男性の肌はピッカピカ。まず仔馬を母馬のところへ連れて行き、少し乳を飲ませたところで仔馬を母馬から離し、乳を搾る。
馬は1度にあまり乳がでないため、搾るのは1~2時間おき。そして搾った乳を容器に入れてひたすら攪拌すると発酵し、馬乳酒ができあがる。
容器は牛の皮袋をつかうとより美味しく、しかも栄養面においても素晴らしいものができあがるのだという。馬乳酒は日本人が各家庭のぬか床を大切に受け継ぐように、かき混ぜ方や残した種によって味が微妙に違う。私が飲んだのはほんのり甘みがあって少し発砲していた。アルコールはほとんど感じなく、これなら1日飲んでもよさそうだと思ったのだが、たくさん飲むとオナカをこわすといわれ、1杯でやめておいた。が、あまりに美味しかったので、あとからもう少し飲んでおけばよかったなぁと思ったりして。
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草原でラクダを見かけたのは少しだけ。馬乳酒は素晴らしい飲み物だが、さらにすごいといわれているのが、ラクダの乳から造られたお酒だという。私は残念ながらラクダの乳酒を飲む機会には恵まれなかったのだが、ラクダのお酒は馬乳酒よりも栄養価が高く、腹持ちもかなりいいらしい。量があまりとれないので希少価値もあり人気があるそうだ。(これが飲めなかったのはいまでも悔やまれる。今度訪れるときは必ず飲むぞ!)
草原の夏の風物詩である馬乳酒。都会ではあまり飲めないのだろうな、と思っていたら、ウランバートルの市内でも草原から売りに来ている人が集まり、あちこちで販売しているのだとか。代々言い伝えられてきた体によいものは、やはりみんな好きなのですね。
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