黒トリュフコレクション!
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苺がゴロっと入った食前酒。 |
続いては、ある日のおまかせコースをご紹介します。どの日を紹介しようか迷いましたが、半年前(1月)にいただいた「黒トリュフコレクション」があまりに素晴しかったので、ここで綴りたいと思います。
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2007年1月27日の「黒トリュフコレクション」メニュー。 |
1月は黒トリュフが最もおいしい時期なので、ナリサワでは、毎年ベキャスなどのジビエと合わせたこの「黒トリュフコレクション」が開催されます。通常夜のコースは15,750円、26,250円ですが、この豪華なコースに限っては52,500円。かなり高価ですが、他では決して味わえない魅力満載のラインナップとなっています。
この日の内容は次の通りです。
・「20種類の温かい信州&鎌倉の農家野菜、黒トリュフの香り」
・「ジビエ(ベカス・ペルドロー・フザンヌ・パロンブ・コルベール)のテリーヌ、ロワイヤル風 “レ・クレアシヨン・ド・ナリサワ”~ペリゴール種・フレッシュ黒トリュフのサラダ~」
・「活〆オニカサゴと活ラングスティーヌのポワレ、菜の花とペリゴール種・フレッシュ黒トリュフ」
・「ベカスとペリゴール種・フレッシュ黒トリュフ・フォアグラのパイ包み焼き」
・「ブリ・ド・モと黒トリュフ、ほろ苦いサラダとともに」
・「イチゴ・アーモンド」
・「黒トリュフの熱いスフレ&黒トリュフの冷たいアイスクリーム」
・「エスプレッソなど」
・「ミニャルディーズ ~レ・クレアシヨン・ド・ナリサワ~」
ここまでやるか!
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これでもか! とばかりに野菜を盛り込んだ「20種類の温かい信州&鎌倉の農家野菜、黒トリュフの香り」。 |
「20種類の温かい信州&鎌倉の農家野菜、黒トリュフの香り」は、百合根、ヤーコン、ほうれんそう、アロエ、芽キャベツ、金時にんじんなど、20種類の新鮮野菜と山形牛の薄切りもも肉、手でつぶした黒トリュフを合わせた一品で、「弾ける香り」に思わずうっとり。
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肉をめくると…。 |
野菜は、それぞれの香りや食感が最大限に引き出されるよう、的確に火入れされており、数種を豪快に口へ運ぶことで、ヴァリエーション豊かな香り、旨み、食感が、口の中で激しく踊ります。野菜の生命力というものを心底実感させられる感じです。黒トリュフも、薄切りではなく手でつぶしてあるので、その野性的な香りがワイルドに広がっていきます。そして、これらのいい意味で暴れた香りをやさしく包容してくれているのが、薄切りもも肉の豊かな旨み。このもも肉は、言ってみれば「指揮者」的存在であり、重なり合う様々な音(香り)を1つにまとめ上げる役目を果たしているのです。このもも肉使いには、言葉も出ないほど感激してしまいましたね。
野趣溢れるテリーヌ!
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ジビエの持ち味をフルに活かしきった「ジビエ(ベカス・ペルドロー・フザンヌ・パロンブ・コルベール)のテリーヌ、ロワイヤル風 “レ・クレアシヨン・ド・ナリサワ”~ペリゴール種・フレッシュ黒トリュフのサラダ~」。 |
「ジビエ(ベカス・ペルドロー・フザンヌ・パロンブ・コルベール)のテリーヌ、ロワイヤル風 “レ・クレアシヨン・ド・ナリサワ”~ペリゴール種・フレッシュ黒トリュフのサラダ~」は、名前の通り、様々なジビエを使ったテリーヌです。この冬はフランス産の野うさぎが一切日本に入ってこなかったため、1ページ目でご紹介した「フランス・ソローニュ地方のリエーブルのテリーヌ、ロワイヤル風」が作れない…ということで新しく生み出された一品なのです。その味は、リエーブルのテリーヌ以上に複雑かつ野趣溢れるテイストで、ガツーン!と頭を殴られた時のような感覚さえ憶えます。力強くて奥行きがあり、実に酔わされる風味も醸し出されているからたまりません! ぐんぐんとおされる、完全なる攻めの料理ですね。たっぷりの葉物野菜も非常によく合います。
見事な緩急!
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迫力満点の「活〆オニカサゴと活ラングスティーヌのポワレ、菜の花とペリゴール種・フレッシュ黒トリュフ」。 |
続く「活〆オニカサゴと活ラングスティーヌのポワレ、菜の花とペリゴール種・フレッシュ黒トリュフ」は、しっとりと火入れされたオニカサゴ&ラングスティーヌが、キレイな味わいのブイヨンと相まって、とても大らかな旨みを実感させてくれます。ブイヨンには、菜の花の苦みも溶け込んでいて、奥深い中にも適度なキレが。1品目、2品目とは違って、予想外のチェンジアップで見事に空振りさせられてしまった感じの料理ですね。素晴しい緩急の使い方。
撃沈です!
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香りにくらっとくる「ベカスとペリゴール種・フレッシュ黒トリュフ・フォアグラのパイ包み焼き」。 |
ここで再び剛速球料理が。ジビエの女王ベキャスと、黒トリュフ、フォワグラを合わせた「ベカスとペリゴール種・フレッシュ黒トリュフ・フォアグラのパイ包み焼き」の登場です! パイにナイフを入れると、それと同時にフォワグラの脂がじゅわ~! 何ともテンションが上がる瞬間ですね。
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ナイフを入れた時の断面。 |
パイの断面を見ると、下から順にキャベツ、ベキャス(胸肉)、黒トリュフ、フォワグラ。フォワグラが一番上なので、溶け出る脂も全体に行きわたる。ん~、実によく考えられていますね。すべてを一緒に口へ運ぶと、もう思考能力完全崩壊です! ベキャス独特の力強い野性味と、黒トリュフのこれまた力強い野性味(パイの中で程よく温められることで、より香りが立っています)が激しく交錯し、それを濃厚なフォワグラの風味&芳醇なパイ生地のバター香でねじ伏せる感じ。ようするに、強いもの同士が複雑に混ざり合って、脳髄に響かせるほどの圧倒的な旨みを構築させているのです。仮にここに主張のそれほど強くない素材を入れてしまったとしたら、その素材の持ち味は完全に消されてしまうことでしょう。弱いものは弾き出されてしまう、つわもの揃いの一品と言えます。
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ベキャスの羽根です。 |
パイ包みにはベキャスの胸肉が使われていますが、もも肉と頭はロティに。もも肉は胸肉以上に味が濃く、バリバリっと噛み砕く頭からは、魚のような香りが感じられます。ベキャスを余すところなく味わい尽くせる、まさに「冬の傑皿」です!
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食後のお楽しみについて。