フレンチ/東京のレストラン

対談 ~アロニア・ド・タカザワ~(3ページ目)

「アロニア・ド・タカザワ」の高澤シェフとの対談記事です。シェフが料理をはじめたきっかけや、普段は聞けない裏話などを、こと細かくご紹介します!

執筆者:来栖 けい


特別感、贅沢感、プライベート感。

-来栖さんがはじめてここに来られたのはいつ頃ですか?

来栖:今年の3月にはじめて来ました。1か月くらい前に予約を入れて。あのメンバーで来るのは日曜日しか無理だったんですよ。でも来られて良かったです。

高澤:その時は、この方が来栖さんなんだ、とはわからなかったですね。テレビとかは全く見る時間がないので。雑誌も、時々グルメ雑誌を見るくらいで。でもお話は聞いていて、「どんな方かな」とは思っていました。

来栖:ボクもテレビや雑誌はあまり見る時間がないですね。でもこのあいだはすごく楽しめたし、本当にまた来たい、と思えました。だからもうすでに次回の予約いれてありますもんね、今度は8人で。大勢で来ても楽しめますからね、ここは。

テーブル
キレイにセッティングされたテーブル。特別な感覚を実感できます。
高澤:そうなんです。8人だと貸切りになりますし、自分たちのカラーに染められる、というか。その贅沢感はありますね。プライベート感、特別感は大事にしています。

来栖:自分たちのためだけに作ってくれるわけですしね。

高澤:今、シェフが料理をしない時代になっていると言われています。大きなお店になると、やはりシェフ一人でまかなうのは不可能ですから。

来栖:仮にボクがレストランをやるにしても、すべて自分でやらないと気がすまないですね。だからきっと人数も制限すると思います。

高澤:全部自分でやらないと、結局違う味になってくるんです。人に任せてしまうと。

来栖:ボク今は食べることしかやらないですが、作ることも大好きなんです。たいしたものは作れませんけど。でも、例えばレシピ教えて、といわれて教えても、人が作るとぜんぜん違うものになっちゃいますもんね。

高澤:本当ですね。料理には思いが入っているので、お客様に「思いが通じる」とおっしゃっていただけた時は、とても嬉しかったですね。


目の行き届く範囲で!

来栖:最初からこのくらいの規模で、と考えていらっしゃったんですか?

高澤:やっぱりすべてに目を行き届かせたい、と思うと、この規模になりますね。これ以上席を増やすと、ボク1人ではできなくなってくる。

来栖:今はマックスで10人?

高澤:そうですね。食材もそうなんですが、本当に良い食材というのは、良い魚が10匹取れたといっても、1から10までランクがある。いちばん良いものしか使いたくないんです。本当に良いものだけを使って、お客様にお出ししたい。やっぱり個体差があるわけですから。


山菜はシェフ自らが採りに行きます!

山(女と菜)
ヤマメと山菜を組み合わせ、絵画のように盛りつけた「山(女と菜)」。山菜は左から順にイケマ、イラクサ、ワラビ、山アスパラ、トリアシショウマ。
来栖:シェフがさっきおっしゃってましたが、野菜は結構自分で採りに行かれるんですか?

高澤:そうですね。山菜とかは自分で山に行きますね。育ててもらっているきゅうりやしそは、滋賀県から取り寄せています。12時間以内、最高でも24時間以内にキッチンに届くようにしています。

来栖:魚は釣らないですよね?

高澤:そこまでやったら、一日おきの営業とかにしないと(笑)。魚や肉は、その道のプロにおまかせしています。


栄養バランスを考えた「体想いの料理」!

来栖:素材で、こういったものは使わないようにしている、とかいうのはありますか?

高澤:使わない、というものは特にありませんが、栄養価のある食材をたくさん使いたいと思っています。外食だと栄養バランスが偏りがちというじゃないですか。ボクは逆に、栄養バランスを整えるために来ていただきたい、と思うんです。滋養強壮効果とか。油もそうなんですが、良くないものが多いんで、「体想い」で食材を選んでいます。健康オタク、といわれるくらい、突っ込んで調べるんです。調理に使う水も、すべて日田天領水を使っています。月間何百リッターも使うので、もちろん高いですが。

来栖:え!? 調理に日田天領水を使ってるんですか!? ミネラルウォーターとして出すなら話はわかりますが、調理にまで使っているなんて…。驚きですね。

高澤:まあ何というか、白いご飯がやっと食べられるくらいなので、経営としては、成り立たないに近いですよ。

来栖:ボク共感しちゃいますね!

高澤:見えないところの材料というのは、自分の中では厳選したものを使っていますね。ベースとなる材料は厳選したいんです。目に見えないけれど、味に違いが出るはずですから。

来栖:ボク、日田天領水はずっと家でとってたんですよ。

高澤:今年も世界一の賞をもらったそうですしね。

来栖:料理を食べてそこまではわからなかったけど、普通の水を使って作ったら、おいしさは半減するでしょうね。この日田天領水を使っていることは、深い記憶に残る部分として、非常に大きいものだと思います。

高澤:水と塩は、良いものを使いたいんです。ベースは、南オーストラリアの塩。白いものですね。それでオレンジ色のものがヒマラヤの塩。地中に結晶する時にマグマで焼かれるので、鉄分や硫黄分が溶け込んでいます。温泉のような味がしますね。これは、塩というか「スパイス」の1つとして使っています。他にも、これはマル秘なんですが、鮎から取った魚醤もつ買っています。旨みが入っている塩という感じですね。

来栖:高澤さんの強みってなんですか?

高澤:それは、生産者とか、素材を提供してくださる方々が熱心だということですね。素材に思い入れをもって作ったりとってくれる人がまわりにいるので、自信を持って出せる、というのがあります。冬場、マタギがいちばん良いものをほしい、という熱意を伝えると、ちゃんと応えてくれる。そういう方々が集まっているので、ボクは本当に助かっているし、一番大事にしたいと思います。

次ページは、シェフの幼少時代について。
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