香川フレンチ

「香川」と言うと、「讃岐うどん」というイメージを持たれる方が大半でしょう。実際、それほどに讃岐といえば饂飩が有名ですが、今回御紹介するお店は、「讃岐うどん」ではなく、香川のブランド食材を堪能できる、2007年末開店の新星フレンチレストラン「TOMOSHIRO INOUE」(トモシロ イノウエ )。

井上知城。 TOMOSHIRO INOUE。
まるで料亭のような石造りの階段 その先には洋風の外観を持つ扉が現れます。
高松駅からタクシーに乗って西に向かうこと約10分、瀬戸内海に注ぐ郷東川の東側の山腹に到着です。タクシーを止められた道から見上げると、51段の石造りの階段が続き、その先に構えられた表門は、どう見ても古いお屋敷か料亭、といった趣の威風堂堂たる純和風の瓦葺の門。

階段を登り、門のところで「笑門」と書かれた締め飾りに迎えられて、さらに階段を上がっていくと、ようやくレストランの玄関に到着します。振り向くと、鷺の佇む真下の郷東川から遙か右方には、瀬戸の海がパノラマのように見渡せ、しばし旅情が掻き立てられ、思わず見とれてしまうほど。

トモシロイノウエ
店内は自然光が入り込む心地良い雰囲気。
中に入り、愛想のよい美人マダムに案内されたのは、左手にあるLe Rossignol(うぐいす)と名づけられた個室風ダイニングルーム。実際、窓から見える柿の木には入れ替わり立ち替わり野鳥が飛んできて、見飽きることがありません。

その他に、玄関から右手にはSaint-Sylvestre(森の精)と名づけられた広いメイン・ダイニング、そしてまっすぐ進んだ奥にはLa Chouette(ふくろう)というこじんまりしたバー・スペースがあります。

内装。 骨董。
木彫りの欄間彫刻が目を惹きます。 和と洋のコントラストが印象的な店内
それぞれの部屋の壁面にはかつて、この地にあった旧家(シェフの奥様のお祖母様が住んでおられた家とのこと)から外されてきた、見事な木彫りの欄間彫刻がシンボリックに鎮座していて、この家の歴史に思いを馳せながら、極上フレンチを戴くという予想外の展開に、料理への期待が一層膨らみます。

トモシロ イノウエ。 イノウエ トモシロ。
外からは高松の風景を一望できます。 眺め抜群の個室風ダイニングルーム。
シェフの井上知城氏は、2度の渡仏で腕を磨き、東京の代官山で独立しておられた実力派。東京で確かな手応えを感じておられたにも関わらず、奥様の故郷である高松で、夫婦二人三脚で一軒家レストランを始められたというわけです。ちなみに、東京を離れて香川でお店を開かれた理由をシェフにお聞きしたところ、「奥さんを追いかけて香川まで来ました!」と幸せそうな笑顔で即答! 何とも男らしい理由に、シェフの真摯なお人柄を感じましたね。

そんな井上シェフが描き出すのは、香川テロワール満載の料理世界! 今や時代は「地産地消」の時代に突入し、地方レストランが注目され始めています。京都だと京野菜レストランが有名ですが、各地方だからこその厳選食材を使った、テロワール溢れる料理世界こそ、料理文化の極みなのだと私は思うのです。

次ページでは、コース料理の全貌を御紹介します