奈良の至宝「akordu(アコルドゥ)」が復活!
2016年12月10日、移転オープンした「akordu」
「食べ歩き」好きを自負される方なら「akordu(アコルドゥ)」と聞くと、入居していた歴史的建造物の老朽化のため2014年3月末に惜しまれながら閉店を余儀なくされた、奈良・富雄の名店のことが「記憶」として蘇ってくることでしょう。
場所は東大寺旧境内の南西角の地という素晴らしいロケーション
一旦は閉店したこのモードスパニッシュの名店が、2016年12月10日、見事な変身を遂げて「奈良の中の奈良」ともいえる東大寺旧境内の南西角の地で再起を果たされました。
メインダイニングからは厨房の中を見ることができます
ガラス張りの広いオープンキッチンで腕を揮われるのはバスクの2ツ星「ムガリッツ」で修業された川島宙シェフと旧アコルドゥ開店時からの右腕でダイビル本館のドノスティアから戻ってこられた日野さんを始め5名、サービスは川島シェフの奥様を中心に6名が当たられます。
「akordu」の待合室
今回の店舗の敷地はなんと350坪! 建物の北東側に東大寺の森と空が拡がり、朝夕には鹿も出没するという、季節を肌で感じる自然の中の立地です。
広い芝の前庭を臨むメインダイニング。静謐なモンテヴェルディの流れる中、落ち着いて食事ができます。
料理と共にその「自然」を最大限に味わえるよう、待合もメインダイニングも北側が天井から床まで全面ガラス張りのすっきりとモダンなインテリア。フローリングの床に加えて天井も総桐板張りと、奈良の自然に溶け込んでいます。
建物2階にある「チャペル」。来年から稼動予定の宿泊施設も一室あります。
また、2階には若草山を真正面に望む50席のウェディング兼レセプション会場の他、オーベルジュとして宿泊可能な部屋も1室設けられています。
アコルドゥのランチコースより
テーブルにつくと、まずは「奈良茶と当帰」と名付けられた温かい奈良吉野産の御茶が供されます。
コースは、ランチコースが6,500円(税+8%)、ディナーコースが13,000円(税+サ10%別)からとなっており、今回はランチコースからの御紹介です。
・枯れ木と落ち葉
枯れ木と落ち葉
定番の「イタリア産オリーブ」の後は、「枯れ木と落ち葉」と名付けられた料理が登場です。葉は「タラ」や「牛蒡」「パプリカ」「ターメリック」「黒胡椒」で作られています。
ダイニングの窓から見える落ち葉の風景とイメージが重なり、葉を模したチュイールを食べることでより一層、季節感が体感できるようになる趣向の一皿。
日本料理だと八寸の盛り付けに落ち葉を散らして季節感を演出することはありますが、川島シェフの場合はその葉を食べられる料理にするところがユニーク。アソビ心が利いていて面白いですね。
・牡蠣とビーツ、旨味と土、穏やかな酸味
牡蠣とビーツ、旨味と土、穏やかな酸味
今が旬の牡蠣と、土のニュアンスが感じられるビーツの組み合わせ、さらにジャガイモやオリーブ等の地の物と、シェーブルチーズの酸味を加味し、旨味、土っぽさ、そして酸味が口の中で渾然一体となる一品。
スペイン(主にカタルーニャ地方)では「モンテ イ マール」という「山と海」の食材を組み合わせる伝統的な手法がありますが、その「モンテ イ マール」の手法を川島シェフ流に季節感と温度差を取り入れた方法で表現された料理となっています。
・菊芋のソパ、帆立のプランチャとエア
菊芋のソパ、帆立のプランチャとエア
続いては完全無農薬の菊芋を使ったスープ料理(ソパ)。上画像だと泡で隠れて見えませんが、泡の下にある菊芋のスープの中には、プランチャした帆立が入っています。菊芋の持ち味を活かしきった優しい味わいと帆立の旨味、そしてそれらを引き立てるコーヒーの香りが程好いアクセントに。
・魚のピカタ、濃いえびのソース
魚のピカタ、濃いえびのソース
魚料理は「ウスバハギ」のピカタ。ソースは所謂「アメリケーヌソース」のような濃い海老のソースです。魚の下には奈良の伝統野菜の一つ「筒井れんこん」、魚の上には揚げたジャガイモが乗っています。
・鴨と柿、ローズマリーの森
鴨と柿、ローズマリーの森
肉料理は葛城産の「鴨」。低温で熱入れした鴨肉は柔らかく、表面のシズル感も良好。この鴨肉に合わせるのは、地元奈良産の柿を奈良漬にしたものと、人参のシロップ漬け、ナスタチウムの葉とセルバチコのグリーンソースです。
奈良産食材の品質の高さが存分に発揮された、まさにテロワール料理と呼ぶに相応しい一皿! 季節感、生産者、そして作り手がリンクすることで、スペイン料理や日本料理という枠を超えた、川島ワールドと称したくなる唯一無二の料理世界が生み出されているかのようです。
「ローズマリー」の香りが別皿で登場します。
また、料理と同時に別皿で「ローズマリー」の燻製が香り付けの名脇役として登場してきます。
・水面の月、すみれの海
水面の月、すみれの海
スミレとハイビスカスを使った「夜の海」、砂浜は「メレンゲ」のパウダー、そこに浮かぶ「水面の月」は柑橘類のジェラート、寄り添う「雲」は「泡」で表現。見た目にも美しい色合いの「夜の海」に月(ジェラート)や雲(泡)、「砂浜」(メレンゲ)が口の中で儚く解け消えていく芸術的なデザートです。
ちなみにこのデザート、通常は奈良産の「八朔」を使用されていますが、今の時期は特別に「蜜柑」を使われています。
今、再び「記憶」という名の世界に
枯れ木と綿雪
リニアの乗り入れも見込まれ、徐々に盛り上がりつつある奈良。観光客があまりにも集中する京都から少し足を延ばして近鉄奈良駅から10分足らず歩けば、2年8ヶ月振りに甦った「akordu」で時間を忘れて「口福」と「自然」を同時に味わえる、取って置きの体験を手に入れることができることでしょう。
<DATA>
・店名: akordu(アコルドゥ)
・所在地:奈良県奈良市水門町70-1-3-1
・アクセス:近鉄奈良線「奈良駅」徒歩約9分
・地図:Yahoo!地図
・TEL:0742-77-2525
・営業時間:12:00~13:00(LO)、18:00~19:00(LO)
・定休日:月曜日 及び 不定休
奈良「月ヶ瀬」産の有機緑茶「月香」。