最高の魚料理
・オコゼのファルシー クレピーヌ包み焼き プロヴァンス風
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Roti de "okoze" crepine a la provencale |
メインの魚料理は、「オコゼのファルシー クレピーヌ包み焼き プロヴァンス風」。この料理は、「和歌山」のテロワールを堪能するため、事前にリクエストさせていただいた「オコゼ」を使った一皿。私自身が「おこぜ」好きということもありますが、夏の和歌山で捕れる「オコゼ」の美味しさをどうしてもフレンチ料理として、御紹介したかったこともあり、リクエストした次第です。
実はこの料理、かつて小田原のステラマリス時代に、吉野シェフが作られていた魚料理で、その復刻版でもあるのです。今ではもうパリのステラマリスでも作られていない料理でして、吉野シェフの愛弟子である手島料理長が、現代バージョンとして、再び復活させてくださいました。
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取り分けてもらいます。 |
まず、背開きにして中骨を抜いた「オコゼ」の中に、白身魚のムースと、オマール海老を詰めておき、さらにそれを網脂で包み込み、丸ごと一匹をオーブンでローストしたもの。尚、これに合わせるソースはビスクソース(スプーマ)です。
上品かつ繊細、それでいて凝縮した旨味を内包した「おこぜ」の身質と、滑らかに拡がる甘味の旨味エキスを放つオマール海老の饗宴。多層的な味わいに、豊満な旨みと薫りのビスクソースが絡み合い、違和感なく溶け合うのです。
また、これだけ様々な食材を使って複雑に作り込まれた料理でも、「オコゼ」の真味はしっかりと残しつつ、全体のテイストを引き立てあいながら織り成す味になっており、生まれて初めて「これが探し求めていた魚料理の理想形!」と確信できるスペシャリテに巡り会えましたね。
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まさに心に残る一皿 |
今回いただいた、この料理は私の今までの食人生の中でも間違いなくベスト3に入る逸品で、魚料理部門においては、まちがいなく第一位の至高料理でしたね。これ以上に凄い魚料理とは出逢ったことがないほど、ハイクオリティかつ心に残る味わいで、三つ星……いや、星の数なんていくつあっても足りないぐらいの一皿。和歌山の質と鮮度の高い魚貝を熟知している手島料理長の卓越したセンスと実力があってこその奇跡というか、まさに「テロワール(和歌山)」と「人」の「絆」が生み出したオンリーワン。これぞまさしく吉野シェフのDNAを受け継ぐキング・オブ・魚料理でしょう。この料理は私にとって、一生、忘れない逸品となりました。