役所への提案
逃げた「担当者代理の人」に怒る気力も失せ、これ以上ねばっても役所側の姿勢は変わらないであろうことも分かったので、仕方なく出直すことに。幸い「窓口の人」は、ベテランらしく聞く耳を持っていた方なので、最後は提案に転じてしまいました。本当は、この人に話すより、実際の「外国人手続き担当者」と「担当者代理の人」に言いたかったのですが……。
私からの提案は、次のようなものでした。
最初に外国人登録をする時に、今後必要になるかもしれない印鑑登録や通称名登録のことを教えてほしい。理由は、国際結婚の配偶者として外国人登録する人は、これから日本に長期滞在するか永住することが考えられ、いずれ印鑑を作ったり車を買ったりすることが予想されるため。その時のために「外国人が登録できる印鑑の規定」「通称名登録について」「通称名を証明できるとして認められている物」などをA4の紙1枚にまとめたものがあれば、みんな助かるし、市役所の人だっていちいち説明する手間が省けるはず(現状では“説明もされていなかった”けど)。
国際結婚した外国人が日本で生活するためのマニュアル本は何冊も読んでいる私ですが、この「外国人の印鑑登録」「通称名登録」については、手にしたどの本にも書かれていませんでした(執筆当時)。
確かに、私が最初に印鑑登録についてインターネットなどで調べなかったのは悪かったと思います。その点はいたく反省しました。
でも、どの国でも言えると思うのですが、ほとんどの場合、こういった手続きは、本人たちにとっては初体験。何か事が起こってからその背景や法律事情を知るということが、けっこう多いのではないかと思います。
だからこそ、手続きのエキスパートである役所の人が、事態の先取りをして、外国人居住者に必要となる情報を簡単にまとめたものを作ってくれれば、と思ったんですよね。それほど難しい作業ではないと思うのですが。
翌日、怒り再び
帰宅して探してみると、「シャウエッカー」と印字された税務署からの封筒がすぐ見つかりました。翌日、それを持って、再び市役所へ。昨日の「窓口の人」はもちろん覚えていてくださって、「ああ、良かったですね」と言ってくれました。この日は「外国人手続き担当者」本人も来ていて、窓口まで出てきました。前日のことをさらっと話すと、彼女の口から思わぬ言葉が……「銀行の通帳でもいいんですよ」
う、うっそ~~~! じゃあ昨日の30分は何だったの!?
あんなにはっきり「ダメ」と言われたのに!
※自治体によっては、個人が出した郵便物、キャッシュカード、預金通帳、手書きの書類などは確認書類に該当しないケースもあります。
ぶちキレそうになるのを必死でこらえ、昨日のことを細かく伝えました。担当者代理の人が、途中で退座して戻ってこなかったことも。さすがに彼女も、これにはちょっと動揺していたようです。
しかし、私の提案(A41枚に必要手続きをまとめたものを作ってほしい)には、ほとんど無反応でした。これで、うちの役所では、こういった書類は今後も作られないであろうことを悟らざるを得ませんでした。
でも、そのような紙があれば、担当者本人が不在であっても、誰だって同じ基準の回答ができるのに、と思いましたけどね。お役所の人は、そうは考えないのでしょうか?
自治体によって違う基準
気になって、帰宅してからインターネットで調べてみると、外国人のための印鑑登録や通称名登録について、きちんと書かれているホームページをもった自治体もあることが分かりました。もちろん、通称名の証明として認められる物のリスト付きです。■瀬戸市の例
通称(名)を登録(変更)するには、その通称(名)を日常の社会生活において使用していることが必要です。このことを確認する書類を複数持参して頂くことになります。
ただし、婚姻を理由として相手方の姓を登録する場合などの時は書類は不要です。
また、個人が出した郵便物、キャッシュカード、預金通帳、手書きの書類などは確認書類に該当しません。
*確認書類と認められる具体的な例
在学証明書、学生手帳、社員証、勤務証明書、
給与明細書(手書きでないもの)など
*社員証、勤務証明書、給与明細書で、フルネームすべてをカタカナ名にしたものの場合、
事業所に通称として使用しているか確認させていただきます。
出典:愛知県瀬戸市/(外国人住民の方)通称(名)・印鑑登録 2015年7月25日更新
中には、とりわけ外国人が多く住んでいるというわけでもない市が少なからずあるのです。たとえ少数でも税金を納めて生活している立派な市民ですから、こうしてきちんと対応してくれていると、やっぱりうれしいですよね。それにひきかえ、うちの市ときたら……。
ただ、通称名の証明として認められる物は、自治体によって多少の違いはありました。何を可とし何を不可とするかの基準は、各自治体に委ねられているようです。
みなさんも、通称名登録をする必要が生じた際には、事前に役所に問い合わせておくことをおすすめします。