異文化の地での孤独感・疎外感
国際結婚には直接関係ありませんが、私がこの映画をおすすめする理由は……●理由その1:言葉の分からない国にポツンと置かれた孤独感・疎外感を追体験できる
『ロスト・イン・トランスレーション』は、日本では英語のセリフに日本語の字幕がついていましたが、アメリカでの公開時には日本語の部分に英語の字幕がなかったそうです。ということは、英語圏の人が観ると、日本人が話していることは意味が分からず(もちろん、日本語が理解できる人は別!)、主人公のボブとまったく同じ孤独感や不安感を味わえることになります。
もしもあなたが外国に住んでいて、こういう孤独感・疎外感を多少なりとも感じたことがあるとしたら、きっと2人の気持ちはよく分かると思います。
そして、もしもパートナーが、あなたの孤独感・疎外感をいまいち分かってくれないと感じているなら、一緒にこの映画をご覧になってみてはいかがでしょう。言葉で話すよりも、伝わりやすいかもしれません。
あなたのパートナーが母国を離れて日本に住んでいるのでしたら、ボブやシャーロットの心情をパートナーに置き換えて想像してみると、より相手の気持ちを理解してあげられるのではないでしょうか。
●理由その2:現在の東京が映像で見事に伝えられている
現在の東京の街をこれほど見事にとらえた映画は、近年観たことがありません。
「あれは日本じゃない」という一般の映画評もインターネットでいくつか見ましたが、私は今の日本を実によく映し出していると思いました。
少なくとも、フジヤマ・ゲイシャだけではない日本(いまだにこのイメージを根強くもっている国もありますから)、古都やお寺といったトラディショナルな部分だけではない日本が、ありのままに描けていたと思います。
監督のソフィア・コッポラは、東京が大好きだそうで、この街に刺激され脚本を書き始めたと言われています。
たしかに東京、不思議な街ですよね。あのビル群や雑踏のなかにいると、言い知れない疎外感や孤独を感じますが、一方で何人をも包み込んでしまう懐の大きさも持っています。映画に出てくる東京は、多分に彼女の個人的好みが入っていると思われますが、それは外国の人から見た東京の魅力とも言え、海外から友人が来て東京案内をするときには、大いに参考にさせてもらっています。
主人公ボブの仕事関係の日本人の様子もよく描けていたと思います。みんなセンスのいいビジネススーツを着て(女性も)、そこそこ英語が話せ、あいさつをきちんとする……。おそらくソフィアから見た日本人像なのではないでしょうか(あくまでも、ビジネスの世界の、ですが)。
1つ気になったのはコマーシャル撮影シーンの通訳。メディア関係の通訳をする人なら優秀な人がたくさんいるはず。もっときちんと行間まで訳すでしょうに……。
でも、きっとこれもソフィアの個人的体験からきているんだろうなあと思いますが……。
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