結婚するということは、新しい家族が増えるということ。パートナーの家族との交流も、結婚生活の大事な要素なのですが……
Y子さんを悩ませたのは、そんな家族付き合いのことでした。
「結婚した当初、両親がよく遊びにきていたんですよ。そういう時、日本人の普通の感覚だと、自分は無理してでも、その場・その人たちに合わせるようにすると思うんですね。でも、彼にはそれがない。自分が“この時間に寝る”と決めたら、両親が来てようが誰が来てようが、その時間にさっさと寝室に行って寝てしまうんです。それがいちばん困りましたね」
ご両親にしてみたら「えっ?」という感じだったでしょう。「せっかく来たのに、寝るの?」という……
そういうご両親の戸惑いを、Y子さんはその場でひしひしと感じているのに、ご主人は「じゃあボクは寝ます」とスパッと寝てしまうのだそうです。
これは弟さんご夫婦が来ていても同じ。いまだにそういうところがあるとか。
「まあ、それはうちの主人だけかもしれない。ほかのアメリカの人は分からないけれど、あまりこう、自分を、多少無理してでも、私の付き合いのペースに合わせるということはしないですね。
日本人だとそこらへんは、まあしょうがないかーと、家族の横のつながりも大事だから、寝たくてもガマンしたりとかあると思うんですけど、彼にはあまりそういうのがないんですよね。自分が付き合っている人たちのときは、もちろん合わせるけど、私の家族や親戚に無理して合わせようとはしないですね」
最初はその彼の態度にY子さん自身もどう対処していいか分からず、すごく大変な思いをされたそうです。慣れるのに10年くらいかかった、とか……。それだけの時間がたって、やっと「あ、もうこの人はしょうがないんだ」と思えるようになったそうです。
自分自身の“常識感覚”と、彼にとっての“当たり前の行動”の折り合いは、なんとかつけられても、家族はそうはいきません。
「私の母方の家は女系家族で、比較的、女性の主張が強い家系だったんですね。昔から家の中のことは妻がある程度決めて、夫がそれについてくるという家風でした。そんな中で育った母は、自分のやりたいようにやる人だったので、思いついたらパッと電話してきて『今近くに来ているから、遊びに行くね』とやって来ることが多くて……。
それを主人はすっごくイヤがって、母を嫌っていました。『あの人はズケズケと僕たちの生活に入ってくる、前もって連絡もなしに』と……」