パートナーの家族のなかで暮らす
よほどの事情がない限り、帰省したらふつうはパートナーの実家に滞在します。そこでは、ただの旅行では味わえない、その国の本当の暮らしの姿があるはず。たとえば食べ物。観光旅行だったら、その国の名物料理を求めて、レストランを食べ歩きなんてこともしますが、家庭に滞在するとなると、家族が食べているいわゆる普通の家庭料理を一緒にいただくことになります。ごちそうが出てくるのは、せいぜい2~3回でしょうか。この“普通の家庭料理”が、パートナーにとっては最も食べたかった懐かしい味なんですよね。
そのおかげで、ある種の誤解が解けることもあります。たとえばスイスだったら、きっと多くの人が「家ではよくチーズ・フォンデュを食べているんだろうなあ」と思っているでしょうが、実際は1~2カ月に1度あるかないか程度だそう。家庭によっても違いますが、夫の実家の場合、家でつくるのは年に2~3回とのことでした。ただしチーズはよく食べますけどね。必ず数種類のチーズが冷蔵庫にありますから。
同じようなことが、日本に来たパートナーにも言えるかもしれません。「日本人は毎日、寿司を食べている」と思っている外国人は意外に多いからです。パンやパスタやハンバーグをはじめとするカタカナ料理が、こんなに日本の家庭料理の一部になっているとは思わなかった、というパートナーも多いのでは?
住まいもある種の異文化体験。どの土地に行っても基本的にはあまり変わらないホテル生活ではなく、その国のふつうの住居に暮らすことになるわけですから、ときには家屋そのものが、パートナーにとっては未知の世界であることも少なくありません。
つまり、帰省についていくときは、そのパートナーにとって、生活すべてが異文化空間になるのです。
家族にとっても異文化体験
これは相手の家族にとっても同じこと。あなたという異文化が生活のなかに入ってくるわけで、国や地域によっては、それまで日本とはあまり接点がなかったところもあるでしょうから、それこそ“未知との遭遇”のようであったりする家族もいるのです。またまた食べ物の話で恐縮ですが、友人のお姉さんは国際結婚してイギリスに住んでおり、時々ご主人と一緒に日本に帰ってきます。ところが、ご主人には和食で食べられないものが多いのです。まずご飯がダメ。魚は焼いても煮ても生もダメ。麺類もダメ。煮物も食べないそうで、お母さんは毎日、何をつくったらいいか、とても悩んでしまうとか……。これなども、家族が異文化体験している一例と言えるでしょう。
だったら食べられるものだけ出せばいいと合理的に考えることもできますが、もてなす側として「毎回、同じような献立にはできないし……」というお母さんの気持ちが、また実に日本的であったりもするわけです。
異文化体験はなにもネガティブなものだけではありません。日本から持っていくお土産、あるいは外国の珍しいお土産は家族を喜ばせることになりますし、食べ物に好き嫌いがなければこれほど楽しい文化交流はないでしょう。ただ、ここにまたまたひとつ、「言語」という大きな問題が介在するのです。