【視覚】
整然ともつれ合っているという、まことに不思議な状態でそばは提供される。箸をつける前に、数秒間でいいからその様子のいい視覚を楽しもうではないか。ここで期待される条件は、そばを手繰るために麺を猪口につけるとき、思いきり手を高く上にのばさなければならないほど「しっかりと長い」こと、麺が適切な時間で茹でられるように「太さが揃っている」こと、包丁で切られた「麺のエッジがすぱっと立って」いること、盛りつけられた麺線が清々しく「つややか」なこと、そして「深い色合い」に馴染んでいることである。
「よいそば・旨いそば」とはどういうものを指すのか、それをひとまず暸かにしてみて、そば打ちの個々のプロセスとそれがどのように関わっているのかという謎に迫ってみようと考えた。