本当は内緒にしておきたい、そば屋がある


海外からのお客様を蕎麦屋さんにお連れしてもてなす。そんなときに、一体どこにお連れしたらいいだろう、などと悩んだことはないでしょうか?

おもてなしですから、いつも行列ができているような超人気店では落ち着いてお話ができないでしょうし、かといって、いつも空いているだけが取り柄というお店でも、困ります(苦笑)。

そば好きの方なら、TPOにあわせて、いくつもの「隠し玉」が欲しいところです。たとえば、気のおけない仲である誰かをおもてなししたい…そんなニーズに、もうぴったりなのが、文京区と台東区が接する谷根千(谷中、根津、千駄木)の名店「よし房・凛」なのです。

不忍通りに面してはいますが、ちょっと控えめで端正な佇まい。いかにも地元の人に愛されている蕎麦やさんという感じが好ましい。ちなみに、不忍通りは、「しのばずどおり」と読みます。手持ちの日本語入力システムでは変換できない位、難しい地名でして、つまりこれだけでも、ポイントが高い隠れ家としての資質は充分(笑)なわけです。本当は内緒にしておきたかったけれど、皆さんに、そっとお教えしましょう。

最寄りの根津駅から訪れるのは、もったいない


根津へのアプローチは、魅力的なルートが豊富な点もうれしい。気分よく散歩を愉しんで、そしてその目的地が「蕎麦屋」とくれば、東京の散歩好きには、堪えられないでしょう。

だから、よし房・凛へは、最寄りの地下鉄根津駅を利用するのではなく、時間をすこし贅沢に使って、谷根千の雰囲気に浸ってから訪れてみたい。日暮里駅北口から谷中銀座~よみせ通り経由というのもよし、鶯谷駅から言問通りを伝ってきてもよし、上野駅から上野公園の緑の中を歩んできてもよい、地下鉄東大前駅からは、根津神社の脇を通る小径もあります。

いずれも、それぞれに独特の雰囲気をもっているので、根津を訪れるたびにルートを変えるというのも一興。そして、これらすべてのルートはすべて、根津に向かって「下っていく」という点に注目してください。さらに愕くべきことに、これらのルートはすべて同じような距離なのであります。
つまり、その日の気分にあわせて足取り軽やかに散歩して、気がついたら蕎麦屋の店先という、理想的なコースとなっているのであります。東京の蕎麦屋も数多くあれど、ここまで理想的な散歩条件を調えた蕎麦屋も珍しい。

料理も、そばも、秀逸。特筆すべき居心地が素晴らしい


店内では奥様がフロアを担当、蕎麦屋の跡継ぎである若い店主と息をあわせて気持ちのよい接客をなさっていたのが印象的でした。訪れるお客様も、地元の奥様たちであったり、いかにも散歩の目的地としてこの店を訪れた人たちだったり、幅広い年齢層のさまざまなお客様が暖簾を潜ってきます。

すみずみまで清掃の行き届いた店内、凛と活けられた花、客席に面した大きなガラス張りの打ち場…。いやがうえにも、期待が高まるシツライなのです。

まず蕎麦前は青森の純米酒「豊盃」を所望、その日は会話に専念したかったので、あとはすべてを店主にお任せにしました。
突き出しに出てきた春野菜と新若布のぬたを皮切りに、鴨笹身の霜降り、上品に漬かったお新香、焼味噌の春巻き揚げ、絶妙に仕上がった出汁巻き玉子、天ぷら盛り合わせ、鴨の陶板焼、自家製厚揚げと丁寧に拵えられた料理が次々に供されます。

はずむ会話に、ついつい蕎麦前のピッチもあがったのはもちろんです。

しめのお蕎麦も素晴らしかった。綺麗に整った麺線の田舎そば。少し華やかな汁にちょこんとつけていただくと、至福が口中に広がりました。

さて、ひたすら下って辿りついた「よし房・凛」ですが、お帰りは坂を登り返さず地下鉄根津駅を利用すれば、ダイエットには不向きだけれども、蕎麦前(日本酒のこと)で少しふらつく足下にはとても優しい、というところも人気の秘密なのではないかなぁと思っております。

【よし房凛】
TEL 03-3823-8454
〒113-0031 東京都文京区根津2-36-1
不忍通り・根津神社入口際
営業時間11:00~15:00 / 17:30~20:30
火曜日定休

せいろ 700円
田舎 700円
鴨せいろ 1,500円
つけとろ 900円
かき揚げ 1,300円
越前おろし 900円
鴨南蛮 1,500円
蕎麦味噌の春巻き 400円


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